メンタル管理・感情・認知バイアス
メンタル管理はトレードのみならず、あらゆる分野で結果を出すために必要不可欠な要素です。仕事にせよスポーツにせよ恋愛にせよ、最後の最後の重要な局面で失敗してしまったら満足いく結果にたどり着けません。
トレードもそうです。完璧に分析して、エントリーが完璧でも、最後の最後で欲張ってルール通りに利確しないことで、そのトレードが勝ちトレードから負けトレードになってしまうなんて話は良くあります。(実際これが一番落ち込む・・・)
メンタル管理・規律・自制心は「トレード」という枠組みというより、人生そのもののテーマだと考えるべきです。
なので、1ヶ月や2ヶ月ちょっと頑張った程度で身につけられるスキルでもありませんし、生きてる間ずっと努力し続けなければいけないことだと思います。成功者の多くが、結局麻薬や不倫やお金の問題で、逮捕されたり騙されたりで全てを失うという話も良く聞きますよね。つまり自制心やメンタルの管理とはそれだけ難しいことなのです。できるようになったら終わり!成功したら終わり!という訳には言いません。
今回は、自分がメンタルを管理したり強化してきて、気づいたことなどを紹介したいと思います。また、今後もメンタル面での新しい気づきがあるかもしれないので、その際はまた新たに記事を書こうと思います。
①感情vs理性という考えを辞める。
これは世の中の悪い癖です。何でもかんでも〇〇vs××と対立軸で考えるのは良くありません。感情的な部分も理性的な部分も、結局は自分であり、世界で唯一最後まで自分の仲間になる存在です。そう簡単に喧嘩させてはダメです。
少し都市伝説的な話になってしまいますが、世の中の権力者はこのようにして、なんでも対立させる癖を人類に植え付けることで、個々人の力を弱めているのではないかと、感じざるを得ません。
感情も理性も直感も、使えるものはなんでも使えば良いのに、使い方を教えず、感情や直感はダメ!と最初から否定する教育方針に、疑問を持つべきでしょう。実際人間にとって感情は、行動の原動力(モチベーション)ですし、直感は理性の知り得ない膨大な情報を教えてくれたりします。対立させるのではなく、コントロール(管理)する方向に、考えをシフトしましょう。自分の感情にもう少し耳を傾けるのです。
とはいえ、感情に耳を傾けるのは難しいと思います。私もスピリチャルのプロではないので体系的な手法は知りませんが、自分の経験で言うと、めちゃくちゃ辛い経験をすることで、感情の声を少し聞けるようになりました(急に胡散臭いですが・・・)
辛い経験とは、具体的には、不安・恐怖・哀れみ・惨めさ・怒り・当惑・焦燥感・悔しさなどの負の感情を感じられる経験です。こういった感情に長期間浸されることで、自分自身の中で、「あ、これが不安か」とか「あ、今感じてるのが哀れみね」みたいな感じで感情を理解し、受け入れるようになります。今まで未知だった自分の感情を、1つ1つ定義し、意識的に認識できるようになって初めて、対話が可能になると思います。扁桃体にある感情データを、大脳新皮質にある理性にまず統合し、そこからデータ管理・データ活用をするイメージですね。
良くトレード界隈だと、ロボットのようにトレードすることが正しいという風に考えている人も多いと思いますが、私は反対です。というか無理です。人間をロボットに置き換えて考えるのは、現実を正しく認識できておらず、その方が危険です。理想としてロボットを目指すのは勝手ですが、まずは現状である自分(人間)の理解を突き詰める方が先です。
トレードで大負けしたり、連敗したら叫んで良いのです。正常に悔しがればいいと思います。スポーツでも仕事でも、人は失敗したら悔しがるし、時に泣きます。しかし、なぜかトレードにおいてはそれらは良くないと言われています。多分それは、感情的なトレードは良くないという教えがあるからでしょう。確かに感情任せのトレードは全くもって無意味ですが、だからと言ってロボットになるのは流石に飛躍がありすぎます。まずは自分自身との対話を根気強く続けていくしかないでしょう。(手法は手法でひたすら練習するしかありません)
②人間の認知バイアスを理解する
認知バイアスとは、ざっくり言うと脳の自動操縦機能です。この機能は誰にでも平等に備わっています。
例えば今日の夕飯を選ぶときも、無意識のうちに昨日食べたものや最近見聞きしたことなどの、膨大な情報と比較して意思決定をしています。これは多くの場合無意識的に比較されるので、感じることはできません。
このような、無意識化での自動で感覚的な比較をヒューリスティックと言います。厳密な計算や定義による比較ではなく、経験則に基づいた意思決定を人間は基本的にしています。生きていく上ではこのような瞬時である程度の精度の意思決定は便利でした。しかし、自然界には存在しない概念(例えばマイナスの数)に関してはうまく機能しません。
人間の認識は比較で成り立っています。目も、変化の違いを認識し、変化前と変化後を比較して世界を見ています。※全く変化しない模様を長時間見てると、その一部が透明になる現象があります。(これを体験したい方はトロクスラー効果で検索を)
例えば3という数字だけ見ても、それ自体には意味はありません。6という数字とい比較して初めて、3の方が小さいということが分かります。意識的に比較していなくても、必ず比較しています。比較する際の基準は主に、最近直近で見聞きした数字(昨日の感染者数や昨日の飲み会の金額など)や良く使う数字(100%、0、1万円)などになります。前者を最新性バイアス(recency bias)、後者を利用可能性バイアスと呼びます。
少し時事的になりますが、日々の感染者数で一喜一憂するのも、明確な比較対象となる数字と比較せずに、単に前日の感染者数と比較しているからです。昨日より少なければホッとし、多ければ焦る。しかし、本来であればその比較対象の数字はもっと根拠のしっかりした数字であるべきです。例えば病院の収容可能人数や外国の感染状況との比較など。
話を戻しましょう。例えば1万円の損失があるとき、損切り出来ないのは無意識的に0という数字と比べているからです(あるいは前回の利益など)。しかし、0と比較することは本来意味がありません。0と比べる理由は、単に良く使ったり、なんとなくキリが良いからです。これを利用可能性バイアスと言います。0や100といった、日常生活で良く使う数字と無意識に比較しているのです。このような無意識で自動的な意思決定が認知バイアスです。
1万円の損失が出ている時、0ではなく例えばマイナス2万円と比較したらどうでしょう?そうすると、マイナス1万円の損失も相対的にマシに見えてきます。私はこのように、意識的に比較対象を操作することで、直感的にストレスのない選択をできるようにしています。ヒューリスティックによる比較(無意識的・自動的。良く使う数字や最近見聞きした数字)ではなく、ロジックによる比較(目的や意味のある数字。例えば、このまま損失を放置した場合の最大損失額など)をするのかで、その後の行動は変えられます。そして、どちらの方法を選ぶかは完全に自分の意思で決められます。だったら、意識的に意味のある数字と比較した方が、自分の求める結果に繋がる可能性が高いと思います。
世間はなぜか、上を見なさい向上しなさい、という風な教育を好みます。自分より上の、優秀な人と比較することで、自分もそうなりたいという願望をもたせ、行動させます。これは一般的な仕事や勉強の領域においては良い教育です。
しかし、トレードのようなゼロサムの環境ではあまり良い戦略ではないと私は思います。上を見る、つまり利益やプラスを見てしまうがゆえに、人は損切りが出来ないのだと思います。トレードやギャンブルにおいては、いかに下を見てそれを回避するかが勝利につながります。今より悪い状況を回避することが勝利になるのです。これはゼロサムゲームの原則を考えれば当然のことです。ゼロサムゲームにおいて自分が勝つということは、即ち相手が負けるということになります。逆に自分が負けなければ相手は勝つことができません。つまり、負け(損失)を最小化する戦略が最適な戦略なのです。これは数学的にも証明されており、ミニマックス戦略と言われています。実際機関投資家がしていることは、相場のカモを狩ってるだけです。自分より弱い相手をひたすら狩り続けることが相場において重要な考え方なのです。
このように、世間で一般的に言われる「正しい戦略」はトレードにおいて機能しません。それは前提が違うからです。社会や実体経済は労働により付加価値を生むことが目的なので、プラスサムゲームです。一方相場はゼロサムです。付加価値は生みません。多くの人が負けることが反対側の利益になります。
まとめ
メンタル管理ができないという悩みは良く聞きますし、自分も悩んでいる分野です。しかし、メンタル管理という悩みがそもそも漠然としすぎているため、なかなか解決に繋がらず、挙げ句気合だの根性といった感情論で終わらせがちです。このような時は、まずは知ることが大事だと思います。自分の感情についてや、そもそもメンタルとは何かなど、本質的な理解をすることが重要になります。人間はバカでははいので、きちんとした理由や根拠があれば行動を改善することができます。自制心がない・メンタルが弱いと悩んでいるのであれば、まずそんな自分を理解し、問題の本質を探ることをお勧めします。
また、しょうもないトレードをする時は、大概疲れている時が多いということも忘れずに。自分の集中力がどれくらい残っているのか、精神の調子は良いか悪いかなどが意識的に分かるようになることで、適切に休むことができるようになります。
アスリートが体の調子を毎日チェックするように、トレーダーは精神の状態を毎日確認しなければいけません。そのためにはまずは、バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠が結局一番良いです。メンタル管理に悩んでいる人は、まずは基本的な生活の見直しから始めると、意外と新しい発見もあり良いと思います。
年末ということもありダラダラと読みにくい文章だったかもしれませんが、何かトレードのヒントになれば幸いです。☃️
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