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そのこだわり教えてください!トップ工業「コンパクトソケット」開発秘話

こんにちはトップ工業㈱ 企画担当のSです。
前回の記事、トップのステッカーについての話はいかがでしょうか?

まだの方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。


さて今回は「そのこだわり教えてください!」シリーズの第3弾です。
当社の代表工具のひとつに先端工具があります。その中でも一番ラインナップの多い先端工具の中でも人気の高い" コンパクトソケット" にスポットを当てて、製品へのこだわりについて書いていこうと思います。

単品は全20サイズのラインナップ
2003年の発売から徐々にサイズが追加され、セット品を加えると22種のラインナップに。

業界初のソケット奥行45mmの実現や、大径サイズ(ボルト・ナット26mm・27mm・30mm・32mm)対応品の開発など、色々と気になることの多い製品です。


左がスタンダード・右が大径サイズ対応の仮締め専用タイプ


開発当時は先端工具を先んじて開発していた当社ですがどのようなお話が聞けるでしょうか…?

今回お話を聞くのはEさん。
当社の製品開発に長年携わっていられる大大大先輩で当社のソケットの歴史を一番知っている方だと思います。

現在は部署の垣根を越え、社員全体の“相談役”のような存在で、いつも的確なアドバイスをくださいます。

インタビューさせていただいてわかったのですが、ソケット類の開発・制作だけではなくほぼ全ての製品の開発や制作に関わっておられました。(もうこのシリーズ全部Eさんに聞いてみたい気もします)



開発当時のこと、色々聞いていきたいと思います!それでは本文をどうぞ。




Q.1 「コンパクトソケット」の製品特長を改めて教えてください。

   ーまずは製品のことをお聞きしていこうと思います。

Eさん
私の考えた【「奥行き45ミリ」この長さが新基準!】というキャッチコピーがあるんですが、これからはこの長さが基準になっていってほしいという意味を込めて2003年当時、私の知る限りでは当社が初めて電動ドリル用ソケットの奥行き45mmシリーズを発売しました。



この当時のソケットの奥行は60mm~がスタンダード


ソケット自体がスタンダードなソケットより短いので手元からボルト・ナットまでの距離も短くでき、作業しやすくなることで取り廻しやすく作業の効率もアップできます。

それと当社比ですけどソケット重量を20%軽くしたので、当時の大きくて重いインパクトと合わせて総重量が減るので疲れにくくなる効果も期待できます。手元から離れれば離れるだけ疲れてしまうのでね。それに加えて軽くしたことによって結果的に電池も長持ちするでしょう、というところが特長ですね。

それとこのシリーズから初めて省スペースハンガー(現在の形状)を採用しました。今みたいに脱プラとか環境に配慮したという理由ではなく販売戦略上の理由で採用した、という感じですね。


パッと目に飛び込む黄色いハンガー。最近は黒いタイプも。


発売当時はソケット類をまとめた小冊子カタログの中に掲載されていたようです。
製品写真の右下にプリスターパック形状のイメージもあります。


   ーコンパクトソケットシリーズからハンガー形状の資材を
    始めたというのは初耳でした。

Eさん
今みたいに環境に配慮して脱プラを進めよう、みたいな話ではなく、あくまで製品そのものの単価を下げるためや、販売状況に合わせて陳列スペースを確保するためにハンガー形状を採用しました。それまではソケットもブリスターパック資材だったんですけど営業部からも陳列スペースをより確保したいという意見があった、ということもあり、選べるパッケージというカタチでブリスターパック形状と現在のハンガー形状の両方ができた、という感じです。

   ーパッケージに関しては何か周囲からの反応はありましたか?

Eさん
金物屋さんはやっぱり最初は製品そのままで陳列することに不安な声はあったみたいですが、ホームセンターさんは省スペースで何本も陳列できていいですね、っていう声もあったり、販売店さんによって違いましたけど、今はもうハンガー1本になりましたね。

   ーコンパクトソケットの単価を通常ソケットより下げ
    たい、というのは…?

Eさん
このころだと他社メーカーも先端工具類に力を入れ始めたころで、製品特長の差別化もですけど、価格的な面でもこれより前のシリーズ(既存品)よりは高くできない、という状況でした。海外の製品も参入を始めていたころでもあったので、ラインナップや価格を意識した製品を開発する必要があった、ということからです。

   ーもう気になるところがありすぎて色々聞いてしまいました。
    (最初の質問なのに…)
    当時の当社は先端工具の開発については他より先んじてい
    た、という話も聞いていますし、その辺のお話も機会があ
    ればお聞きしたいです。
    では次は開発に至るまでを聞いていきますね。


Q.2 「コンパクトソケット」の開発のきっかけや背景は?

Eさん
従来の手動ソケットから電動化に移り始めてはいましたが当時のインパクトドライバーは今と違って大きく、重く、電池寿命も短く、再充電に時間がかかるものでした。ですから、

     「先端に取り付けるソケットが軽ければ手も疲れにくく、
      電池も長持ちするはず」

と考え製品仕様の検討を始めました。
当時の製品はソケットの奥行60~65mmがスタンダードタイプでしたが、
サイズ別の用途を含め実際の作業を確認したところ「奥行45mmあれば大概の作業は出来る!」ということがわかったので開発に着手しました。

   ーご自身もひとりのユーザーだからこその着眼点ですね。
    「当社が初めて」「新基準」など強いワードが出ている
     と思うのですが、「奥行45mm」にはどうやって辿り
     ついたのですか…?

Eさん
辿りつくって程の事でもないですけど笑 実際に現場に行って今使われているボルトのネジの突き出ている長さがどのくらいなのか、を会社の周りのガードレール・社内の現場の細かいネジなどを色々眺めたりして調べました。その結果奥行き45mmあれば大概の作業はできる、ということがわかってきたんです。
もちろん100%ではないですが、まあその当時の既存製品でロングタイプなどもありましたからね。とにかく色々想像だけじゃなく、実際に現場を調べて通常サイズのソケット(60~65mm)でできる大概の作業はこの奥行45mmで大丈夫だなという確証を持ったうえで決めました。

   ーその確証があっての「新基準」なんですね。

Eさん
現場に行けば大体どれくらいボルトが突き出ているか、ということは大体確認できるのでそこまで大変だったということは無かったと思います。既存品もあることですから。
発売の際にカタログにも使用箇所のイメージを載せたりして、お客様が購入される時に「この規格なら奥行45mmあれば問題なくボルトを締められますよ」ということがわかりやすいようにするなど、工夫をしていました。


Q.3開発までに一番苦労したこと、またはうまくいかなかったことはありましたか?


Eさん
設計に関してはそれまでの通常のソケットやショートソケットの実績があったのであまり問題はありませんでしたね。
しかしそれまでに発売していた他の種類のソケットがあったからこそ、会社の方針的にそれより販売価格を抑える、ということが課題にあり、それが少し大変でした。

   ー価格については冒頭でもお話されていましたよね。
    資材形状を変えてコストを抑えたりっていう…。

Eさん
資材の形状もコストダウンの一つですけど、材料費が主ですかね。厳密にいえばスタンダードのソケットと材料の使用量はほぼ変わらないのですが、全長のサイズが小さいのでそこを少しでも削れる部分を見つけたり、冷間鍛造の工程や切削加工、メッキ加工、熱処理などのコスト…各工程でかかる細かいコスト削減を重ねて販売価格の設定を抑えることができました。協力工場にもいろいろと工夫をお願いしたり…私は苦労したとは思っていないのですけどそういったところですかね。

   ー長年製造に携わり、製品ができるまでの各工程を把握し
    ていたからこそ、そこから様々な案を捻出して販売価
    格設定を抑える、という課題をクリアできたのですね。
    (普段のEさんの人柄がにじみ出ています) 

    …ところで開発に関してもうひとつ気になっていたことを
    お聞きしても良いでしょうか。

Q.社内での反応は?


   ー「コンパクトソケット」を社内で提案された時、
     例えば当時の社長、営業などの反応はどんな
     ものでしたか?


Eさん
当時の先端工具に関しては当社が先陣を切って世に出していく、という感じでしたので、とにかくやってみようという反応だったと記憶しています。奥行45mmの検証結果もあり、既存品もありましたから。
一応コンパクトソケットシリーズ開発時の資料も探してみたんですけど企画書は残してませんでした。その後のサイズ追加などの案は営業の週報か何かから情報収集をしていたようです。

    (当時の商品企画書を見せていただきました!)

発売してからは先端工具の先発メーカーとして常に市場に新しい「モノ・コト」を提案していってほしい、これからも他社に無い製品を先行発売していってほしい、という言葉をいただきました。


   ーコンパクトソケットシリーズとしての商品企画書が
    残ってないのは残念でしたが、対辺22mmと24mm
    タイプの企画書と大径サイズの企画書も見せてもら
    いました。貴重な資料ありがとうございます。
    では次の質問です!




第1回はここまでにします!

今回メインのコンパクトソケットの他にも色々な製品の話やEさんが仕事をする上で大事にしていること、開発部署に至った経緯など興味深い内容を色々聞くことができ、1回では書ききれないボリュームになってしまいまして、全3回を予定してお送りします。

コンパクトソケット以外のお話は番外編としていつかまた記事にできたらと思います。

次回はコンパクトソケットシリーズの大径サイズ発売までのお話からお届けいたします。


🔽製品のスペックなど詳しい情報は公式HPをご覧ください。


ここまで読んでくださってありがとうございました。
また次回も読んでいただけると嬉しいです。

新潟県三条市の工具メーカー トップ工業でした!


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