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[小説]深夜の妄想局 ep2

特別な夜が明け、何もない日常に戻る。
戻れない、何かが変わってしまった。

ただ懐かしかっただけ。
ただの気まぐれ。
交わされた言葉に深い意味はない。
そう思っているのに、脳内で何度も会うシミュレーションをしている。

何度も読み返すメッセージ。
過去を遡って読むメッセージ。
あの時、ああしていれば、何かが変わったのだろうか。

2人には何もなかった。
会ったのは2回だけ。
気が合う居心地の良い仲だと思った。友達があの人と付き合うと良いと言ってきた。でも何もなかった。

「この前の会、来なかったね、寂しかったですよ」
「笑、ロスですか?いつでも会えますよ。私も会いたかったです。」

いつの日かメッセージのやり取りがパタリと止んだ。
2人の人生は違う方向に動き出した。
嫌いになったわけじゃない。ただ疎遠になった。何もなく、自然に。

気にならなかったわけじゃない。
彼の転職も結婚も子供が生まれた時も、遠くから祝福してきた。彼の活躍を心から祝福してきた。
嫉妬も妬みも何もない。
まあるい気持ちを届けてきた。

あの夜は何が違った?
あの頃と同じだった。
それが今になって心を踊らせたんだ。

またいつでも繋がれる。
メッセージを送れば返事が返ってくる。
そんな簡単な関係にまた戻れる。

次は何を?
何を送れば心地よい会話が続くのだろう。
どのタイミングで送ればあの日みたいに繋がれるのだろう。
いつ何をどうすれば、その繰り返し。

週末は家族と一緒に過ごしているはず。
邪魔しないように。
これは気遣い?
何のための?
何も始まったりしないのに。
まるでもう何かが始まってるみたいな行動。

どういうつもり?




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