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願い

僕が実家に帰ると何かが僕を待っていたかのように命を失っていく。そんな僕のための世界。
小学校の頃はおばあちゃん。中学生の頃は隣の家のおじいちゃん。高校の時はひいおじいちゃん。大学の時は大好きだったおじいちゃん。
実家に帰るのは怖い。何かを失ってしまうから。それが服とかならまだ心は救われる。でも、それが生き物の命であったら。愛犬であったら。さすがに怖い。
でも、僕は実家に帰ってしまう。もう居なくなった鯉が見える池が好きだったから。実家で無理言って自分の部屋にしてもらった場所から池が見えるから。それだけのために帰る。命を見送りたくない。

葬式が嫌い。弔辞を読むのも嫌い。普段嫌いって滅多にならないけど嫌い。人目を阻んで泣くことができないから。絶対に1文読んだら泣いてしまうから。あと何人見送ることになるんだろう。あと何を見送ればいいんだろう。
そう考えてしまうくらいには周りから命が失われていく。疫病神と後ろ指立てられるかもしれない。でも私は池が好き。ただそれだけで揺られてしまう。
今回は何も無いことを祈っている。

好きを追い求めるほど誰かが身代わりのように亡くなっていくのはもうこりごりだな。
だから、今回だけは何も無く生活を送れますように。

そんな私は殺人鬼。

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