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Story: One Team! ~ グローバル経営は幻想じゃない ~ ③

「あのさ、今までこの20年かな、海外の事業がぐんぐん成長し、それがクロッカス電機の成長を支えててきたのは認めるよ。でもさ、実際は市場が伸びていたという理由が大きい。日本の企業は大体どこもそうだけど、80年代、90年代半ばまではそういう時代だった。どのライバル企業も海外の代理店を買収し、現地のメーカーを買収し、どんどん海外事業を伸ばしていった。その海外事業比率が高まり、どこの企業も海外拠点においては、日本人主体の経営から現地人の幹部社員や現地のトップを据えて日本人幹部社員とのハイブリッド体制に転じてきたのは自然な流れだった。でもな、そこから大事なことを学んだ会社とそうではない会社と大きな差が出てくることになった。俺たちクロッカス電機は・・・学んでない。いや、こう言い換えるよ、学んだことを活かせる経営陣ではなくなった、ということだ。」
「それはどういうことですか?」
「トニコバよ。俺たちガタイだけは大きくなって、中身はともかく、外見はグローバル企業として認められている大企業だよね。就活の新卒学生からも国際的な企業として人気も高いんだ。しかし、実際の中身は町工場に毛が生えた程度の国際感覚なんだ。同業のWISE社やブレイカエー社と比べたらがっかりする程度なんだよ。」
「クリシマさん、それはどうでしょうか?今じゃ、うちはどこの海外拠点も幹部社員は現地人社員で同業他社に比べても相当グローバル化が進んでいるって思いますが・・・」
「お前はちょっと分かっていないよ。クロッカス電機は形だけこだわっていて、本当のグローバル経営というのを実践してきてないよ。例えば同業のWISE社は、本社から日本人を現地に送り込んでマネジメントしているだろう?なぁんだ、グローバル化がすすんでない二流会社だ!なんて思うなよ。実はクロッカス電機よりはるかにグローバル化がすすんでいる。」
「え!?どういうことですか?」
「海外のオペレーションのおいては、単に現地人に任せているからグローバル化が成功しているというわけじゃないっていうのは分かるよね。本社のビジョン、戦略がちゃんと世界各地の現地に落とし込めているかどうか?がグローバル化が進んでいるかどうかを測る物差しなんだよね。俺たちがお手本にしているHAL社みたいにニューヨーク本社のメッセージが世界津々浦々まで浸透している体制ができあがっているかどうかがグルーバルかできているかどうかだ。」
「うちは・・・できていませんか?」
「できていない! 」
「・・・・」
「残念だけど、うちの経営陣はアンポンタンばかりや。」
「そうなんですか?」
「トニコバよ、見た目に騙されたらいかん。海外の現地人は良いやつもいるけどダメ人間もたくさんいる。俺たちは百戦錬磨の米国人が仕切っとるHAL社とは違う。島国育ちの日本人だ。日本人には海外での人脈、海外のマネジメント経験値、情報量、コミュニケーション能力に少々、いやだいぶん欠けている。だから現地人に対して思うようなコントロールは本質的に無理じゃないかと思っている。今まで何度も現地人とのコミュニケーションで苦い思いをしたか知っているだろう?
WISE社はそれがよく分かっているから、今でも日本人を現地の頭にすえて、本社の意向を現地の状況が良くわかっている人間が咀嚼して咀嚼して基本的に時間かけて現地人の管理、育成をしようという腹積もりだ。
一方でクロッカス電機のトップは外人崇拝主義と言っても良いレベルだ。外人に任せたらそれでグローバルだて思っている。欧米式マネジメントの基本である信賞必罰ができない。だからいつも目標未達でも言い訳が通じる。現状維持しておけば常に安泰なんだよ。本当にクロッカス電機は外国人天国だと思うことが有った。思うがまま、すき放題、と言うのは言い過ぎかも知れんけど、実は陰では鼻でせせら笑われている、そんな状況かもしれないな。」
「それは、アメリカで苦労した僕にはちょっと納得いかない話ですね・・・、クリシマさん。」
僕はクリシマ先輩への反論を開始した。

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