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【八人のアダム】序章 スターズ

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<別れの日>に発生した<白い穴>により荒廃した世界。 ギャランシティのスターエンジニアであるピップは初めての実戦を経験する。
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【八人のアダム】 0-7 <別れの日>と<白い穴>

【八人のアダム】 0-7 <別れの日>と<白い穴>

採掘品を回収し終えたギャランたち三人は、ロバート市長の拘束を解放し、撤退の準備を始めた。
ロバート市長は、ギャランに倒され固められているという仲間たちのところまで、よろめきながら歩いて行った。
「ギャランさん、ほんとうによかったんですか。ロバート市長を捕縛してギャランシテイに連れて行かないで」
ギャラン軍のパイロットが、去ってゆく市長を見ながらギャランに確認した。
「いらないわ、あんな小者。それに

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【八人のアダム】 0-6 ロバート市長

【八人のアダム】 0-6 ロバート市長

「あ〜ら、ピップ、やるじゃない。やられてたら大変と思ってきたけれど、その必要はなかったようね。そちらがウィークシテイの市長かしら?」
メタルギャランを着陸させると、ギャランは内部通信ではなく、スターズの外部スピーカーを使って話しかけてきた。
「はい。ギャランさんの方は」
「モチ、楽勝よ。三機とも沈めて一箇所に固めておいたわ」
ウィークシティの市長はそれを聞いてうなだれた。
ギャランはこのことを聞か

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【八人のアダム】 0-5 作戦

【八人のアダム】 0-5 作戦

ピップはロケットランチャーをおろして地面に座り込んだ。
二発目のロケット弾は、市長のスターズの機関部に着弾し、その動きを沈黙させたようだった。
(やった)
手の震えが止まらない。両手のひらと両脇が、汗でべっとりと濡れている。
勝利の安堵と、自分の死が目前にあったことの戦慄と恐怖が、ピップに同時に押し寄せていた。

それはいちかばちかの作戦だった。
当初、ピップはこの乱立する巨岩の裏に隠れ、時間を稼

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【八人のアダム】 0-4 一対一

【八人のアダム】 0-4 一対一

ピップは敵スターズのうち一機が、猛スピードで追いかけてくることに気がついた。
(俺なら一機でやれると思われたか)
ピップのモルゴンは岩壁の間を右へ、左へと不規則に通り抜けてゆくが、相手は離されずに、むしろ少しずつ距離をつめてくる。
相手のスターズがビームガンを発射した。
「うわっ!」
ピップは思わず声を上げた。
ビームはモルゴンにはわずかに当たらず、近くの岩壁を砕いただけだったが、狙撃された恐怖と

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【八人のアダム】 0-3 戦闘開始

【八人のアダム】 0-3 戦闘開始

ウィークシティの市長は、汗をかきながら、メガネをしきりに何度も触った。
動揺した時のクセなのだろう。
(こいつが、ギャラン=ドゥか。噂には聞いていたが、とんでもないヤツだ)
ウィークシティの市長の後ろに控えている部下が、市長に小声でささやいた。
「レーダーを確認しました。周辺、数キロ以内に、スターエネルギー反応はありません」
市長は小さく無言でうなずく。
(挑発に乗るか、退くか)
こちらの戦力は、

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【八人のアダム】 0-2 ギャラン=ドゥ

【八人のアダム】 0-2 ギャラン=ドゥ

「そんなの聞いていないッッ!」
メガネをかけた気の弱そうな男の声が、岩場に響いた。
先ほどまで降っていた雨はすでに上がっている。
「ここは中立地帯だろう? いつからあんたらの領地になったんだ!」
メガネをかけた男は叫びながら、岩場の上に立つ相手をにらみつけた。
男の後ろには六機のスターズが控えており、岩場の上の相手の動作を注視している。

その視線の先、岩場の上では、コートを着た体格の良い人物が、

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【八人のアダム】 0-1 ピップ

【八人のアダム】 0-1 ピップ

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【あらすじ】
「別れの日」に発生した「白い穴」によって、ほとんどの国家と都市が消滅した世界。
生き残った人々は「シティ」を形成し、スターズというロボットで勢力争いをしていた。十七歳の少年ピップはラムダという不思議な子どもと出会い、数奇な運命に巻き込まれてゆく。

【構成】
マガジンごとに章立てしています。序章、一章、二章と続くので、マガジン内でその章内の各話を読むことができます。各話に

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