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道内周遊最終日、寂莫と石狩平野を眺める

稚内から網走、根室と東進し、鋭角ターンで帯広、函館と征西した大型連休の最終日。5泊6日の強行軍も、もう終わり。函館の片隅で目を覚ます。
ひとっ風呂あびて宿を後にした。7時前なのに、朝市には観光客がたむろしている。傍目には、僕もその観光客の一人に違いないと思いながら、朝から豪勢な海鮮丼を食す。
観光客があまり並んでいないから入ったのだが、しっかり美味い。味噌汁がいける店は信用できる。人が集まる所だけが名店ではない。

9時の特急で、札幌に帰還しようと思っていたが、駅をのぞいてみると10分後に発車する列車が待機していた。急な前倒しも何の気兼ねもない。一人旅は気楽でいい。結局函館では、宿に泊まって朝市に行ってしかしていないことになる。まあ、いいんじゃないかな。なんの目的もない旅なんだから。

渡島半島を北上する間に目につくのは、何といっても内浦湾と杉林。じつは北海道でも杉が生えている。このあたり一帯が主産地だ。丸っこい樹形に、トド松やエゾ松にはない異国情緒を感じるのは僕が北国の人間だからなのか。窓を見れば晴天の下で水面が白く輝いている。
青々と茂る杉の枝ぶりと、白く照り返す内浦の海。心象風景としては最高のロケーションだ。

やがて汽車はどんどん歩を進め、窓の外が開けだしたと思ったら、千歳、北広島と抜けて、石狩平野の真ん中だった。
こうして見返すと、この土地の異質さが際立っている。旭川から北上した眺めとも、釧路から東進した遠景とも違っていた。

どこまでも、どこまでも広がるトタン葺きやコンクリートの屋根。
空に突き刺さる鉄塔。
ギラギラと輝く街並み。
公園や街路樹のわずかな緑は、人に馴致していて野生はない。

ここには、花咲線で驚異した自然はなかった。人間を圧倒する大自然は、すでになかった。

北海道を一周して、改めて思う。
どの町も、誰かのふるさとで、誰かの住まいなのだ。どこにでも、人の暮らしがある。それを否定するつもりはない。けれどもやっぱり、札幌は、僕の住む地ではない。
ぜんたい、僕は何を求めているんだろうか。それを探して旅に出たのに、余計に訳が分からなくなった。

4月30日~5月5日 北海道一周の最後の日に

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