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年中休業うつらうつら日記(2024年2月3日~2月8日)

24年2月3日

今日は非常に忙しい。
私は朝イチで整形外科だし、せいうちくんも10時から床屋。
そのあと私のメガネ(つるが折れた)が修理できるかどうか、街に出てメガネ屋さんに持っていこうと思うので、別々に家を出てそれぞれの用事を済ませてから街で集合、ってことにする。

整形外科は20分前から並びに行ったら他の患者さんは1人しかおらず、しかもその人はまずレントゲンだったので診察は一番に受けられた。
いつものドクターと別人が当番らしいのに、傷を見て「だいぶ乾いてきましたね」と言うのでもうちょっとで「『きましたね』つったって、あなたはこの傷は初見でしょうに」とツッコみそうになった。
まあ整形外科がみんな共有してる「乾き方」のレベルが前回カルテに書いてある状態より「乾いていた」のかもしれないので、特に聞かなかった。
今日からシャワーはOK。お風呂は汗かくからダメだって。
消毒して絆創膏と傷口保護シールを貼り替えておしまい。
次は月曜にいつもの先生だ。

あまりに早く終わってしまったのでせいうちくんまだ家にいるかなーって寄ってみたんだが、もう出かけたあとだった。
一服して、少し休んで、私もまた出かける。
道半ばで「終わった。街に向かう」とLINEが入る頃には、私は盛大に道に迷っていた。
目的地よりずいぶん北に行ってしまってるのをGoogleマップで確認し、大きく戻る羽目に。
そのせいでせいうちくんをメガネスーパーの前で20分近く待たせてしまったが、開店が10時半からだったので、一緒に少し待って入店。

10日ぐらい前にフレームが緩んで広がってしまったのを調整してもらって、そのあとまたすぐ広がってきてしまったので少し曲げようとしたら付け根から折れてしまった。
この状態で見せたら、店員さんが言うには、フレームはもう5年前のもので製造中止になっていること、破損部分をロウ付けしても結局強度的にもたないことから今のレンズが入る少し小さめのフレームを選んで入れ替えるのがおススメらしい。

昔はメガネスーパーは安いメガネ屋だったが、今はZOFFとかの方が安い。
せいうちくんも先日ZOFFでひとつ作り、とても満足しているそうなので、この際新しいレンズにして作ることにし、メガネスーパーさんには「考えます」と言って、その足でZOFFに向かってしまうのだった。

ZOFFでは検眼するのに30分待ちということで、受付を済ませてフレームを選んで渡しておいてから、街をぶらぶらする。
2人でこっちの方に来るのは久しぶりだね。
2月3日だから買っておいたセブンイレブンの恵方巻をどこかで食べよう、とデパートの子供用品フロアを別館とつなぐ通路にベンチのあるコーナーがあるのを思い出し、そっちへ向かう。

ずいぶん変わってしまったが、昔息子を連れてきた時と同じような雰囲気だ。
双子を乗せたバギーを押す夫婦者と一緒にエレベーターに乗って、「今は大変だろうな。毎日、1日1日をこなすので精一杯だろうな。時には『押すと12時間ことんと寝てくれるけど、子供の寿命が1年縮むスイッチ』があったとしたら、毎日押したい誘惑と戦ってるんだろうな」と昔日をなつかしむ。
我々も「スイッチ押しちゃうかも」派であった。

渡り廊下部分のベンチで恵方巻を食べ、「今年も無事に食べたね」と言い交しながら「そろそろZOFFの時間になるね」とデパートを出てメガネ屋に向かう。
5分ほど待って、検眼に呼ばれた。
いつもいろいろ疑問に思うことが出てくる。

メガネを作ったことのある人ならみんな聞かれていると思うが、「赤と緑の背景で、どちらの黒い二重丸がはっきりと見えますか?」というテストがある。
どうしても赤い方が目立ってしまって、なかなか「緑です」とはならない。
本当に緑の中の黒丸の方がくっきり見えるなんてことがあるんだろうか、と思いながら適当なところで「緑です」と言ってきたことが多い気がする。

乱視を調べる「黒丸の集合が、2枚の絵でどちらがくっきり見えるか答えてください」。
これもよほど大きく丸がぶれて見えればいいのだが、どちたとも言えない場合が多くて何度も2枚を交換してもらってやっと答えが出せる場合が多い。
人の「ものの見え方」を測るのは大変なのだろうなぁ、と素直に思い、驚く。

遠近両用メガネ用の「近」を測るのも難しい。
右に向かってだんだん文字が小さくなる縦書き1行の文章の見えやすさを答えるのだが、さっと読んで読み取れる大きさと、よくよく注意深く読んで読み取れる大きさは必ずしも同じではない。
「まあ、このへんまで見えていれば日常生活では困りません」と言われる行がわりと努力なく読めるようなので、それで満足することにした。

遠近両用なら出来上がるのに2週間ぐらいかかる、と言われ、次の車中泊には今かけている「先代のメガネ」で行かねばならんのか、免許視力は出ていると思うが、見えづらい時間帯はやめておいた方がよさそうだ、と考えた。
幸い、せいうちくんはこないだZOFFで作ったメガネがとても合っているらしく、段違いに見えやすくなったそうなので、鳥目のGくんともども薄暮以降夜明け前の運転はせいうちくんに頼ることにしよう。

「久しぶりにスタバでお茶でも飲んでいこうか」とデパートの下にあるスタバに行ってみたが、かなり満員で、特に窓際のカウンターはぎっちり詰まっていた。
「20年前はよくここから外の景色の移ろいを眺めたものだけど、カフェってどうしてこんなに混んじゃったんだろうね」とあきらめ、デパートの中を移動して他の喫茶店に行こうとしている時、1階でアクセサリコーナーが目に入った。

ずいぶん前から「イヤーカフ」という、耳の上から中ほどの軟骨に穴をあけてピアッシングしなくてもそのあたりの耳のへりを挟むようにしてつける耳飾りが欲しかったのだ。
「また今度でいいよ」
「いや、欲しかったんなら今、買いなよ。せっかくの機会じゃない」とせいうちくんに言われ、シンプルなものから石をたくさんちりばめたものなどいくつもある中で、金線がらせんを描くようにカーブした中に小さな真珠の粒がついている、エレガントなものを選んだ。
お店の人によると(その人も両耳にたくさんのイヤーカフやピアスをつけていた)、「両耳に違うものをつけるのもおしゃれですよ」とのことなので、今後また増やしていくにせよ、今日はひとつで十分だ。
まずは耳たぶが見える髪型にするところから始めないと意味がないしね。

「いいもの買ってくれて、ありがとう!」とお礼を言うと、せいうちくんは、
「僕は普通の女の人がどのくらいアクセサリを買うのかわからないんだけど、キミは決してたくさん持っているわけではないと思うから、もっと買えばいいよ」と言ってくれた。

行きつけの喫茶店に行ってみたが、地下へ続く階段も列ですでに埋まっているような状態だった。
駐輪場でそれぞれに自転車を回収し、春は花見でにぎわう公園におりていく道に面したスタバのテラスが空いてるのを見つけたので、自転車をその横において、それぞれブレンドとカフェラテを買って、しばらく人の波をぼーっと見ていた。
「この季節から、もうこんなにこの道が混むようになっちゃったんだね」
「昔の原宿みたいだね。人が多くて疲れると思うようになり、足が遠のいちゃったね」と語り合う。

そろそろ市民ホールに行く時間だ、と自転車を走らせて向かう。
約束の時間より少し早く着いたので友人2人はまだ来ていない。
ロビーのベンチに座っていたら、Nさんが来た。
「なんとなく、ラーメンが食べたくなって、すごく並んでるんだけどやめるのもくやしくて、並んで食べてきた。昔と違ってラーメン1杯でものすごい炭水化物ウェーブが来てる。歩いてだいぶ消費したつもりだけど、まだまだウェーブがやまない」と、座るようずれて開けた席を固辞していた。

「K子ちゃん、遅いね」
「あの人の場合、すっかり忘れてたなんてこともあり得るからなぁ」って話になって、せいうちくんがメッセージ打ってみた。
「今、どのへんですか?」
すぐに返事が来た。
「もう、あとは横断歩道を渡ってちょっと」
忘れてはいなかったよ
全員集合して、チケットを配って、それぞれ席に着く。
我々が4列目のD席、友人2人はその2列うしろだったから、激しいチケット争奪戦ではあったがわりといい席が取れていてびっくりした。

前座の「柳家やなぎさん」は前にも2回ほど聴いたことがある。
押し出しもよく、声が気持ちよく響いて愛嬌のある、期待の新人だ。
今回も非常に面白かった。
ただ、枕の雑談があまりに長いので今回はこれで押し通すスタイルかと思ってしまったよ。
20年後もまだ我々が落語を聴いていたら、「この人は『やなぎ』って名前でやってた前座の頃から見てきた」と人に言って回りたい大物になっているかもしれない。

続く喬太郎さんはあいかわらず膝の調子が良くないようで、関西風の演台を前においてその後ろで胡坐をかいての一席。
「諜報員メアリー」は前にYouTubeで見たことある、「午後の保健室」や「コロッケそば」にも似たオリジナルだ。
実は半分ぐらい寝てしまったのだが、面白かった。

仲入り後の「柳家喬志郎さん」は、たぶん歳よりも老けて見えるタイプの、カサっとした史学科かなんかの資料室にほとんど住み込んでいる万年助教授みたいなタイプだった。
噺も全然聞いたことがない素朴な感じのするもので、疱瘡と火傷で化け物のような顔をしたお母さんと生き別れていた超絶美人の娘が再会し、彼女が勧める薬を塗るとお母さんの顔がゆで卵のむき身のようにつるりんと奇麗になる、っていう、わけのわからないところがてんこ盛りのオチだった。

トリに出てきた喬太郎さんが説明してくれた。
「彼はね、芸風通り、とても柔らかな優しい男でね、人が演らないような古い噺や変わった噺、埋もれた噺を掘り出して演るのが大好きなんです。まあ、埋もれるものには埋もれるだけの理由があるなぁ、と納得がいきますね」で大爆笑。
終了後の飲み会でも話題になったが、山奥の僻村で採取してきたような話を、現代風にアレンジしたり付け加えたり合理的説明をつけたり一切しない、なんなら失われてる部分があっても敢えて何も足さずにそのまま高座にかける、という純度百パーセントの骨董なんだと思う。
そう言われてみると素朴な味わいも増してありがたく思えてくる。

その喬太郎さんは珍しく2作新作をかけてきて、トリは「やとわれ幽霊」。
「スナックランドぞめき」みたいな大暴れを始めて、足袋の足を演台の上に突き出しての大熱演。
「明日、膝が痛くなるよ…」と注意してあげたくなるほどの暴れっぷりだった。

こうして今回の落語鑑賞会も無事に終わり、17時半に開く蕎麦屋をNさんが予約しておいてくれてるので、そこまでは三々五々、適当に過ごして現地集合。
我々は自転車なので、とりあえず駅前通り沿いで喫茶店でも行こうか、って2人で走り出す。
「よさそうじゃない?」と入ってみた喫茶店は、椅子が名がテーブルやカウンタに距離をとって1脚ずつ置いてある。
お店の人の説明では、「おひとり様用の店で、お2人で入店する場合は他のお客様の邪魔にならないように、会話するとしても図書館で話す程度の音量でお願いします」なのだった。

これは、2人で入ろうと思ったのが間違いだった、と思い、お詫びを言って、次の店を探す。
時々4人で入る喫茶店まで来たのでそこに入り、コーヒーを頼んで、他の2人に「さっき見た、やや変わったコンセプトの喫茶店」についてせいうちくんが報告したら、今、まさにその店に2人で入ってそれぞれの沈黙を楽しんでいるのだそうだ。
驚いた。
やはり世の中にはいろんな人がいる。

30年以上前にははこの2人をくっつけたいと温泉旅行などを企画していた我々なので、
「やっぱり合うねぇ、あの2人は」
「しかし、久しぶりに会った友人同士、おしゃべりしたいものなんじゃない?」
「いずれにせよ、私は人と一緒にいて、話さないって無理」
「キミは特にそういう傾向が強いけどね…でも僕でもNさんと沈黙の時間を過ごせるかどうかはわからないや」
といないのをいいことに散々論評してしまった。

やがて店のガラス戸の外を2人が縦1列に歩いて通り過ぎるのが見えたので、こちらも蕎麦屋に向かおうか、となった。
自転車で裏道を行ったが、やはり彼らの方が先に着いていた。

いつものように、満員ではないがほどほどにお客さんがいて、心地よい店内の印象。
おまけに料理がものすごく美味しい。
この季節だから「牡蠣」があったらいいのにね、と言いながらお品書きをのぞき込むと、みんな大好きな「馬刺し」があった。
小900円、大1700円なんだが、「これはもう、『大』で行こうよね!」とNさんが元気よく言い、K子ちゃんと私は「うどかぶりだけど」と笑いながら「うどのきんぴら」と「うどの酢味噌」を頼む。
たいていいつも頼む「野菜の天ぷら盛り合わせ」も頼んで、「魚も欲しいね」と「しめさば」と「まぐろのたたき」を。
私は膝にケガもしていることだし、ウーロン茶ですませるが、他の人たちは「ぬる燗」2合徳利で始めるようだ。


寡婦となったお母さんと一緒に暮らし始めたNさんの暮らしぶりにみんな目を見張る。
何しろ、学生時代あんなに生活能力皆無だったNさんが主に料理をしているのだそうだ。
「九州の人だから、旨い魚を食べさせてやりたいと思ってて、東京では苦労すると案じていたんだが、幸い近所にすごくいい魚屋が見つかった」と言って、魚をさばいているらしい。
おまけに「水分不足だと足がこむら返りを起こすから、おふくろにはお茶をペットボトルに入れて寝るときに枕元に置いている」と。
なんて孝行&デキる息子なんだ!

デキる息子は経済にも詳しくなったらしく、およそ投資というものをしたことがない我々が教えを乞うと、「とにかく今は新NISA」なのだそうで。
そのへんは全部せいうちくんにお任せなので申し訳ないが、思わぬところでいい先生に巡り合った。
というか、金曜ZOOM飲み会でもほとんどの人は何らかの投資をしている。
親から遺産として引きついた場合が多いようだが、私は相続放棄をしているし、せいうちくんとこはまだご両親が健在なので、会社に入った時からずっとちょびっとずつ続けている「持ち株会」しか株に縁がない。
これは「会社に会費を払っているようなものだと思ってくれ」とずっと言われており、儲かるとかいう性質のものではないそうだ。
今後は何か考えないとなぁ。

FB読んでくれてるK子ちゃんから、
「クルーズ船にハマっていると思ったら車中泊とは、大いなる転身だねぇ」と言われた。
いや、両者はけっこう似てるのよ。
密室でおしゃべりを楽しみながら移動し、家でもホテルでもないところで寝るっていうとこがね。
だから寝台特急カシオペアなんかも好きだったよ、と説明すると、
「なるほど、そこが本質的に同じなのか」と納得してもらえた。
まあ、車は船や列車と違って寝ている間には移動してくれないけどね。

ついでにGくんがNさんとK子ちゃんをとっても車中泊に誘いたがってる、と伝える。
しかしもちろん、「K子ちゃんは狭い空間に長時間他人と閉じ込められるのには耐えられないと思う」と言っておいたよ、と付け加えたら、
「ご理解、ありがとう」とほっとした様子だった。
彼女はそういう理由から列車の旅の方が好きなんだそうだ。
「Nさんのことは特にものすごく誘ってたよ。かなりヒマなんだし、一緒に行きたいんだって」
「えー、なんで俺なの?Gは俺のこと嫌いだと思ってたよ」
「いや、リスペクトしてるみたいよ。必ず誘え、って言われてきてる」
「うーん、やぶさかでないけど、寒いのはイヤだなぁ。3月頃だったら、って言っといて」
「わかった。じゃあ、GくんにNさんにメッセージするよう伝えておく」
今のところ3人が限度の車中泊なので、せいうちくんと2人でついていくわけにもいかない。
それになぜか、Gくんは免許を持ってないNさんにもかかわらず、2人で行きたいらしいのだ。
車内でどういう会話が交わされるのか、猛烈に興味があるが、知る方法はない。
あとからGくんにドラレコ聞かせてくれ、ってのも無理な相談だろうし。


追加に2合ぬる燗をもう1本頼み、つまみも「うどとイカの天ぷら」(なんてうどの好きな私たち!)とか「タラの干物炙り」などを頼む。
いつもなら〆にそれぞれ蕎麦を食べるんだが、今回はおなかがいっぱいになりすぎて蕎麦まで行けなかった。
お会計をしてみたら全部で1万400円。
一人あたま2600円で、全員息をのむ。
「なんかの間違いだといけないから、早く帰ろう」と素早く落語代3千円を合わせてそれぞれの会費を払い、店を出る。
安くて美味い店なのは知ってるが、今回は最低記録を更新してるなぁ。
8月にはまた喬太郎さんがあるから、チケット頑張って取って、また集まろう。

駅に向かう2人を見送り、自転車を出そうとして気づいたら、白梅が咲き始めていた。
来週は雪になるかもというこの厳寒の季節にも、もう春はそこまで来ている。
忙しかったがいい日だった。

24年2月4日

読み始めてから何カ月も放っておいた羅川真里茂の「ましろのおと」全31巻をやっと読み終わった。
太棹(三味線)のマンガなので予備知識がないと難しいかと思っていたが、実にわかりやすかった。
「ザンッ」「チリン」「チリチリ」という音を文字でしっかりと描き、「はっ」という掛け声も臨場感があり、あたかも生演奏を聴いているかのようだった。
音を絵と文字で表すのはとても難しく、成功してるのは木尾士目の「はしっこアンサンブル」という合唱のマンガぐらいかと思っていたが、世の中にはいろんなマンガがあるものだ。

本来ソロであろう津軽三味線を4人のグループで演奏し、互いに引き立て合って豊かな音色を聴かせるところが珍しかった。
それぞれソロ活動や2人でのユニットも組んでみたり、小さなライブハウスで酒とつまみを出して演奏を聴いてもらうスタイルに、息子が下北沢でやっているアーティスト活動を重ねてみてしまう。

たぶん三味線という音楽ジャンルは固定ファンがいるにしてもニッチな世界で、流派や演奏家の活動は多岐に渡っても一般の人にはなかなか届かないように思うのだが、海外アニメのOPに使われることから火がついたり、難解な映画を作る監督のイメージ曲として使われて注目されたり、現代の芸能発信の多様さも描かれ、興味深かった。

羅川真里茂はゲイの世界を描いた「ニューヨーク・ニューヨーク」から入ってみたが、現在連載中の「吸血鬼と愉快な仲間たち」も面白い。
人はなぜこう「吸血鬼」が好きなんだろうか。
古くは萩尾望都の「ポーの一族」から、水城せとなの「黒薔薇アリス」シリーズ(これは「吸血鬼」じゃなくて「吸血樹」の話なんだが)や音中さわきの「明治浪漫奇譚」、今読んでる花田稜の「デビルズライン」など、枚挙にいとまがない。
(ああ、「デビルズライン」は「2」の「逆襲」も出ているのに気づいてしまった。またオトナ買いするのかぁ…)

24年2月5日

午前中に整形外科に行って膝のケガを診てもらう。
「うん、もうちょっとですね。まだシャワーだけにしておいて。次は木曜に来て」で消毒して絆創膏とシールを貼り替えておしまい。

午後からは予報通り雪が降ってきて、テレワークのせいうちくんは困らないが、会社に来ている人たちは帰りの足が心配な様子。
東京は雪に弱いからなぁ。

「相棒」のシリーズをもうひと月ぐらい観続けているだろうか。
シーズン11から13の成宮くんがダークナイトになって逮捕されるところまで行って、今はその前のミッチー相棒を観始めた。
どこまで行けば終われるんだろう。
反町も気になるし、もちろん薫ちゃんも気になる。
気がついたら全部観ていた、ってなるまで終わらないんじゃないだろうか。

どの話もよくできたミステリで、引き出しの多さに驚く。
特に、二重底、三重底で「と思ったら実は」が毎回しっかりあって、たいそう引き込まれる。
さすが国民的人気シリーズ。

今日はもう外には出られないだろうし、とても寒いので、寝室でぬくぬくとマンガを読もう。
昼過ぎに降り始めた雪は夜を迎えて激しくなってきた。
かなりの勢いで粉雪が舞っており、これは明日積もるかも。

24年2月6日

雪がやんであちこちにみぞれ状に残っているが、地域住民の皆さんの雪かきのおかげで自転車が通る分には問題ない。
昼前に心臓の検診に行っちゃおう。
明日は心療内科で、3日続けての病院デーとなりそう。

まだぱらぱらと雨とも雪ともつかない小さな水滴が落ちてくるせいか、クリニックはすいていた。
すぐに呼ばれて、まずは気になるワーファリン値を測る。
「1.8」
適正値が「1.8~2.2」なので、低めぎりぎりでセーフ。
江口のり子似の女医さんは「しばらくこれで行ってみましょう」と決断してくれた。

「春菊って、あんまり食べない方がいいんでしょうか」と聞いてみる。
いや、春菊大好きでさ、昨日2人で食べた鶏鍋には2把ぶちこんであったものを、2人で全部食べちゃったから。
ワーファリンには「納豆、青汁、クロレラ」が禁忌なのは知ってるし、泣きながら納豆をあきらめた(あとの2つはふつう食べないものなので、どうでもいい)わけだが、青い野菜全般はわずかながらやはり影響があるらしい。
「ほうれん草とか春菊はあんまり食べない方がいいわねぇ。ちょっと、気をつけてみて」と言われた。
今日のワーファリン値が低いことと関係あるかもしれない。
家に帰ってせいうちくんに「春菊、2把も入れちゃダメだってさ」と告げると、なんと実は3把入っていたらしい。
ますますマズい。
これからは1把と半分ぐらいにしておくか。好きなんだけどなぁ。

で、その鍋の残り汁にごはんと卵を入れた雑炊を作って今晩のごはんとし、ミッチーの相棒を3話ぐらい観てから寝た。
せいうちくんはめずらしく23時ごろにもう眠くなってしまったと言って、いったんは布団をかぶって寝る態勢になっていたのを、
「キミの腰と足にシップを貼らなくちゃ」と言って無理に起きてくれた。
そんなの、自分でもやれるからいいのに。
「いや、やるべきことはやって寝ないと」と言い、最後、寝る前のお話まできちんとすませてからことんと眠ってしまった。

友人の娘さんが来年高校受験の年らしいので、思い立って自分の古いブログから息子が中3の時の1年分を読み返してみた。
びっくりした。
自分ではしてなかったつもりの「勉強しなさい!」を毎日のように言っていたうえ、時によってはゲーム機やテレビのリモコンを隠して抗戦していたらしい。
せいうちくんも覚えてなかった。
「私たち、もっと民主的な両親だと思い込んでたよ」
「まあ、受験生を抱えていればそうなるよ。特に息子は、自分で始めるのが遅かったから」

志望校だけは早くから決まっていて動かなかったのは幸いだが、3年生になったばかりの時は到底届かないと思ったその志望校に合格するまではけっこうなドラマの連続であった。
前に息子に聞いた時も、
「ゲーム機取り上げられたこととか、あった気がするなぁ」と言われて、
「それはあなたが『受験が終わるまで隠しておいて』と渡してきたのを、いざ終わった時にどこに隠したか全然思い出せなくて結局謝り倒して新しいのを買った件じゃなかったかしらん」
「そうだったかな」
などという会話を交わしたが、うーん、実際に取り上げていたのか。
まったく、受験生の親は狂気に取りつかれるものだ。

この日記1年分は友人の参考になるのではないか、と現在ネット上では読めなくなっているのを、塊にして送りつけようかとも思うのだが、ただでさえ忙しい彼女にそんな負担をかけるのもなんだし…しかしかなり参考になりそうな気もするし…大いに迷う。

24年2月7日

昨日の雪が道端に残ってはいないかと心配で、自転車はやめて電車で心療内科へ。
ここ数か月、3週間分の薬をもらって2週に1度通院している。
ドクターは毎回、
「次回、2週間後、必ずここに来てくださいよ」と言う。
なんとなく自分を当てにしてくれている人がいるような錯覚に陥って気持ちが良くなる。
そういう効果を狙った手法ではあろうが。

今日は、15年前の日記を読み返してみた件を主に話した。
「けっこうゲーム機の取り上げやテレビのリモコン隠しなどをやっているうえ、毎日のように『勉強しなさい!』と叱っていました。自分たちはもっと民主的な親だと思っていたので、夫ともどもびっくりしました」
「中学生じゃ、しょうがないよ。自分から勉強する子なんかいないもん」
「それと、15年前の夫はずいぶん活動的で、「昼間行ったレストランの料理が美味しかった、今、目の前にあったらまた食べたい」とつぶやく私に『じゃあ、今から行こう!』とけっこう車で時間がかかるところなのに行こうとするような明るい無茶さがありました。今は、仕事の性質上なのか、やるかやらないかと言われればやらないで様子をみよう、という風に変わったと思います。本人も『年なのか、仕事に吸い取られてしまったのかわからない』と言っています」と話すと、
「まだ60でしょう?年ってことはないよ。ヒマができれば変わるよ」と言ってくれた。

処方箋をアプリで家の近くの薬局に送り、ブックオフに寄る。
今読んでいる灰原薬の「天応の門」がすごく面白いので、彼のほかの作品を読みたくなり、比較的長そうな「戦国BASARA」という作品をAmazonで探したのだが、全巻セットは「お取り扱いできません」となっていた。
どうやら「戦国BASARA 2」から 人気キャラを中心にしたアンソロジーに変わり、さらに3、4はゲームになって火がついたようで、設定資料集やフィギュアやグッズ、攻略本の山になっていた。
灰原薬自身が描いた「1」はあまり人気がなかったらしい。


まあ長編はうなるほど持っているのだから、とりあえず手元のものを読んでから考えよう。
今日は花沢健吾の「アンダーニンジャ」と朝基まさしの「マイホームヒーロー」、高瀬志帆の「二月の勝者」の新巻が来た。
楽しみにしている息子のために「アンダーニンジャ」はさっそくデータ化し、他の2冊は明日、人に貸し出しだ。
こないだ読んで気に入った花田陵「デビルズライン」の第二部である「逆襲」全4巻と同じ作者の「ブラックガルド」全5巻も集まってきた。

私はマンガが好きだから生活費が許す限り買うが、感心したのは名古屋のCちゃんだ。
こないだ買ったイヤーカフをほめてくれたので、「今、『花よりも花の如く』という『能』についてのマンガを連載している成田美名子というマンガ家さんが昔描いてた作品に出てきた、耳の軟骨にいっぱい穴開けて10個ぐらいリングつけてる男の子のあだ名が『ルーズリーフ』だった」というまったく役に立たない情報を送ったのに、返事で、「成田美名子、読んだことないけどお試しでちょっと読んだら面白そうだし、知らないジャンルだから、Kindleで読んでみるわ」と言ってきた。
22巻出ていて、まだ終わらないんだよ!
それを今から読むのか!普段マンガを読まない人だと思っていたのに、すごいじゃないか。
思えば萩尾望都が「ポーの一族」をまた連載し始めた時に買って読んでくれた同じ年頃の女性は彼女だけだったなぁ。
進取の気質に富んだ、柔軟な人だ。
ああ、もっともっとおススメしたくなっちゃう!

24年2月8日

膝の傷を診てもらいに、整形外科に行く。
「うーん、あと3mmだな」と言いながら消毒するドクターは、
「もうちょっとね。土曜日にまた来て」と言う。
車中泊に行っちゃうじゃないか。
「土曜日は無理です」
「じゃあ、金曜に」
「金曜も無理です」
「でもね、これ、化膿しちゃうかもしれないよ。消毒続けないと。診せに来てね」
しょうがないから行先のどこかで整形外科探して消毒だけしてもらうか。

深夜、1人換気扇の下でタバコを吸っていると、しんとした家の中でせいうちくんの眠っている寝室を中心にあたたかいものがあふれてくるような気がする。
子供たちのこともついつい考える。
娘はよく眠れているだろうか。
息子はまだ起きて本を読んだり書きものをしたりしているだろうか。
それとも妻と他愛ない話やカナダ行きの計画を交わしているだろうか。

自分以外の他人のことを考えるのが苦手だ。
田村正和が総理大臣をやった「総理と呼ばないで」というドラマの中で、夫人である鈴木保奈美と愛人である西村雅彦が車の中で会話しているシーンがある。
西村「奥さん…僕はあなたのことを考えていました」
鈴木「あら、偶然ね。私も、私のことを考えていたの!」

だいたいの時、私はそんな風だ。
自分が他人からどう見えるか、カッコよく生きてるように見せたい、誠実な人間だと思われたい、と熱望する。
下村湖人の「次郎物語」に、思春期の次郎の自意識からほとばしる短歌がとてもよくわかる。

われをわが 忘るる間なし 町行けば 硝子戸ごとにわが姿 見ゆ

若い頃から、自分の姿をそれこそガラス戸ごとに鏡ごとに気にしていた。
姿勢はいいか、しゃんとしてるか、意志的な顔つきをしているか。
そのせいで、まんがくらぶでは「うさちゃんは髪型が変わったりするとすぐに自画像に反映される」と言われていた。
そんなの、あたりまえじゃん、と思っていたが、皆が皆、自分の見かけを正確にアップデートしているわけでもないらしい。

ある時期から、自分の外見と思っている姿の間に大きな乖離が起こるようになった。
いわゆる「太っただらしない体形のおばさんがこっちを見ていると思ったら、ガラスに映った自分だった」現象である。
特に息子が大学生の頃なんか、ライブやイベントを見に行くたびに見渡す限りの若者に影響されて脳内の自分が20代になっており、トイレの鏡を見て驚愕したものだ。

今も、顔のシミとか顎のたるみとかはなるべく見ないようにしている気がする。
自己像はあまり正確に見るとつらくなるものらしい。外見的にも内面的にも。

雑誌「ハルタ」に連載されていて好きだった白樺鹿夜の「北欧貴族と猛禽妻の北欧狩り暮らし」がコミックス10巻で完結してしまった。
時々、こうやって完結を迎えるマンガがある。(なきゃ困る)
その分、何を新しく買い始めて楽しみにするかを考えるのもまた楽しみだ。
「ゴールデンカムイ」を描き終わった野田サトルが始めた新連載「ドッグスレッド」は面白いのか。
さすがに1巻では判断がつかないと思い、2巻が出てから読もうと思ってる。
アイスホッケーの話らしい。
「ゴールデンカムイ」で話題になるまで彼の作品を読んだことがなかったので、評価が難しそうだ。

そういえば、先日の落語の後の蕎麦屋呑みで最近はあまりマンガを読まないと言っていたNさんが、「ぼくやば」だけは読んでいる、と言うもんで、そもそも略さないと何なのかを聞いてAmazonを見たら、桜井のりおというマンガ家の作品「僕の心のヤバイやつ」既刊9巻であった。
Amazonさんは親切なので、私が2019年に第1巻と第2巻だけ買ってほったらかしてあるのを教えてくれた。

おそらく、その年の「このマンガがすごい!」で男子マンガ上位に入っていたのだろう。
それで、試してみようと思ったんだと思う。
しかし、女の子のロリ顔と巨乳に違和感を感じ、あとは続かなかった、という構造が想像される。
こういう「ランキング買い」は軽蔑されるのかもしれないが、世の中には圧倒的にたくさんのマンガがあり、どれが面白いのか知るのは大変難しいのだ。
好きな作家さんなら新作でもためらいなく買えるが、知らない作家さんとなると、ある程度の下馬評は必要。


最近、冒険をして北郷海の「グッドモーニング・レオン」を全く予備知識なしに買ってみた。
これは、ひとえに表紙の絵がメガネのイケオジだったからに他ならない。
つまりはジャケ買いである。
絵柄は想像通り良く、当たりではあったんだけど、惜しむらくは「愛猫物語」であった。
私は特に猫好きではないので、かなりヒットした桜井海の「おじさまと猫」(似たようなコンセプトだなぁ)も3巻ぐらいで撤退している。
ああ、昔、黒田硫黄の「茄子」をつかんだ時の強運よ、再び我に宿れかし!

今、人に自信をもっておススメできるのは一智和智の「便利屋斎藤さん、異世界へ行く。」シリーズであろうか。
溢れかえる異世界ものに辟易しながらも、これだけは本当に面白いし絵も好きだ。
元々Twitterで発見したという私にとっては異色の作家さんである。
友人の夫は同じ作者の「剥かせて!竜ケ崎さん」という半人半トカゲ女子に恋する男の子のマンガにハマっているらしい。
不思議な性癖の人だ。

あと、Nさんと話した収穫は、息子に「面白いよ!」と勧められて必死で読んだ迫稔雄の「嘘喰い」全49巻がほとんど理解できなかったところを、
「要するに、すごく頭がよくてすごく強くてすごくギャンブルが好きな人たちの話、ってことでOK?」と聞いたら、
「まあだいたいそれで合ってる」という答えをもらえたこと。
「カイジ、みたいな?」
「どっちかと言えば、アカギ」
「ライアー・ゲームにも似た?」
「あれは、基本が善良だからなぁ」
なんとか話は通じているみたいだ。

惜しむらくは、Nさんは芥見下々の「呪術廻戦」をめんどくさくなって途中で読むの止めてしまったらしい。
今のところ、呪術廻戦の話ができる人に会っていない。
虎杖が宿儺の器だと思っていたら、宿儺の奸計によって伏黒が受肉してしまうという最新巻の驚くべきネタバレを語り合いたくてしょうがないのに!

さてさて、明日から友人宅1泊、車中1泊の旅だ。1日早い日記の更新。
Gくんは新しい試みとして「カセットボンベのガスコンロ」と「やかん」と「魔法瓶」を持って来いと言う。
車中でお湯を沸かしてカップラーメンを食べたりコーヒーを入れたり、その熱いコーヒーをそのまま保存してドライブ中に飲む、という計画のようだ。
あいにく、やかんだけは家にない。
この際、途中でよく寄るどこかのホームセンターで買うか。

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