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日記。
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2023年11月の記事一覧

灯油

灯油売りの車の音楽。
二千円握りしめ母走る。
私が追いかけると走って引き返す母とすれ違った。その先では灯油売りが、赤いポリタンクに灯油を注いでいる。メータが18.00と表示し、ポリタンクのキャップが固くとざされ、私はポリタンクを受けとった。財布を持った母が走って現れ、不足したぶんの代金を財布から渡した。灯油は二千円で足りなくなった。

さっき友人からもらった、フィンランドみやげをティッシュのうえに

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渡天の僧、穴に入るのこと

いつか模擬試験の古典の問題だったか、どこかの学校の実際の試験だったか、あるいは問題集のなかだったか忘れましたが、宇治拾遺のなかから一節が抜粋されていた出題が怖すぎて、よく覚えています。じぶんのなかにある言いようのない気持ちのひとつに名前をつけてもらったような気もしました。

そういうことはたまにありました。我思う故に我在り、胡蝶の夢、少年の日の思い出、そういった先人の言葉に触れると、この気持ちを抱

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そういえば

もうひとつのばしょで
さいしょに きめた こころみとして
はじさらし というか
自然主義 というか
そういうことで
ばらんすを とろうとしていた
というか
ひごろ そとにはだせない きもちを
よむものにして だそう、
そういうきもちが
こころみとしてね
あったのでした。

が(鼻濁音)
ほんとうに はじにおもうこと
ほんとうに くるしいことは
散文というか
じゅんすいな ぶんしょうでは
かけないこ

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ひとりのとき

ながく寝た。
時間がある。
ぼくが思いたい人のことを思う。
窓の外が明るい。

この窓が好きだ。
もう
思おうとしても思えない人たちが
窓のこちらがわにまだいる。
ときどき一緒に眠る。
むこうの青を想像する。
普遍。不変。
すくなくとも
ぼくたちが感じられる範囲では
永遠。

あの子とはじめて会ったあと、
おなじようにひとりだった。
あの子はぼくの気持ちを
言いあてた。
どんなふうにひとりなのか、

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