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日替わり

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日記。
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2023年6月の記事一覧

じょうずな淘汰

コンビニのよこにくっついて
赤ちゃんの笑顔を想像していたら
がしゃん
目の前で事故がおこった。
横断歩道のまんなかで倒れた自転車。
「あ……」
口から煙がぽわんとのぼった。
右折の車がすれ違いざまに巻き込んだんだよ。
幸いまわりでたくさんの人が見ていたのと、
慌てて車から降りてきた運転手と
自転車のひとが
大丈夫ですか、大丈夫ですで
済んでしまったので、
ことなきを得た。

最初からだめだったのに

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かえりうち

なにのことも、だれのことも、そんなに好きじゃない。この星のことも、私のことも、体のことも、心のこともそんなに好きじゃない。なにかのことを、だれかのことを、たいせつにできる人はすてき。すてきなひとをたくさん見ている。雨で溶けおわった景色が窓のむこうでとつぜんはっきりと輝きだす。うらやましい。死後ださい幽霊になって祟りそう。

はじめてのことはなにも残っていないのだと、荒川になって流れた遠い町の光が教

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hole

すっきりしたかった。
風の通る場所をふやした。
もっと痛くなくちゃ
せっかく生きている意味がないと思った。

はじめて挿れたらそれからしばらく
それだけで過ごさなければならない。
そして必ず捨てなければならない。
最初のものに愛着があっても、
ずっとこのままがいいと思っても、
必ず捨てることになっている。
そしてあいた穴を
気に入ったもので埋めておけば
空いたままになるし、
しばらくからっぽにして

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だめ

ランドセルの、ふでばこの、お道具箱の、なかみ全部だめだったのをふと思いだす。折れたえんぴつの芯がこなごなになってもちもののすべてをえんぴつのにおいにしていた。わたしの手もいつもえんぴつのにおいだった。だめにする。ものの扱いに気を遣るようになったのは、人ってこういうところを見て友達になるかいなか決めているのではないかとの憶測ゆえだ。

甘えたらいいじゃん、かついで帰るからいいじゃん、おしっこ漏らした

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