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ガレット・デ・ロワと学級崩壊の奇跡〜改めての自己紹介

クリスマスのシュトーレンと同様に、最近は新年あたりにガレット・デ・ロワをよく見るようになりました。
そろそろ一月もおわり、見なくなってしまう前にすべり込み投稿です。




ばばあ学生、うつに倒れる

2020年春、35歳で専門学校生になった私。
コロナ禍だわ、8時間夜勤しながらの全日制授業。
徐々に異変は出てきていて、
ついに卒業式の4日前。「うつ病」の診断が下りました。
でも、そんなことはあえて伝えず。隠しきれていなかったのか、とにかく休養をと心配してくれていた子たちもいましたが、
みんなに、そして先生に明るく別れを告げました。

それからすぐは通常勤務をしていたものの、からだはとにかく正直。ずるずると1年の休職。

精神疾患持ちの障害者になった私は、
一応スキルを活かした就労継続支援施設のA型で雇用され、社会復帰。
めでたいが、めでたい気持ちでいてはいけない。結婚と一緒。社会復帰はゴールではなく、スタート。

そんなこんな、それはもう、こんなそんなこんなを経て、

昨年、まだ暑さの残る頃に、生まれ育った兵庫県を飛び出し、東大阪へ職と居を移すことになりました。
はしょりすぎですが、それはまたいつか。


新生活も落ち着いた頃、先生に現状報告をしておきたい。校友会の手続き等々もあって、「ご報告したいことがあります」と先生にメールを送りました。それが師走のこと。

ガレット・デ・ロワの奇跡

学校では洋菓子、和菓子、パンと製菓衛生師になるための座学があったのですが、
洋菓子は主にフランス菓子で、キリスト教の行事に関するお菓子がたくさんあります。

ガレット・デ・ロワはEpiphany 公現祭のお菓子。
えぴはにー。それはキリストさんが厩戸皇子っぽくオギャーして、マギー一門3人みたいな賢者が「メシア生まれちゃった!見っけちゃった!」とやって来た日。1月6日のお祭り。

パイの中のアーモンドクリームに、フェーブ(由来は豆)と呼ばれる陶器の何かちいさいのを入れ、焼き上げています。キリスト教っぽいモチーフからお店のロゴ入りのものなど色々あって、何かとしか書きようがありません。
フェーブが入ったピースを食べた人は、その日1日王様になれるのです。
王冠をかぶり、わがままを言うもよし、洋ロックを日本語で歌ってもよし。

日本ではフェーブが別添えになる場合が多いです。意図してフェーブという異物を混入させるのは食品衛生法に違反するからです。
パティシエ芸人、ぽろり正義感として指摘しておきます。
悲しいかな、異教の祭り。風情もへったくれもございません。

さ、学生時代のお話をもうすこし。
コロナ禍で入学式も出来ず、本格的な登校が始まったのが6月。
もう、遅れた分のカリキュラム消化に必死。
週6で登校して、翌日オープンキャンパスのお手伝いしたら…明日月曜やん!土曜も学校あるやん!
な、具合。そこに私は夜9時から朝6時の勤務が週4で。そら、壊れますわ。

壊れるのは私だけでなく、4クラス中、私のいたクラスだけが徐々に崩壊し、最終的に9人の退学者が出ていたのです。

人数が少ないと、実習がかなりキツイのですが、
対して製菓理論の授業では試食のお菓子が余るのです。
冬休みが明け、ガレット・デ・ロワ含む宗教お菓子の理論。

その頃、最前列だった私は、助手の先生に素朴な疑問を投げました。
「切ってる時にナイフがフェーブに当たることはないんですか?」と。
毎年各クラス、何台も切っていても経験したことはない…
それもそうか。360°のうちの数度に薄い刃が当たる確率は高くないか。

2台のガレット・デ・ロワが切り分けられ、生徒に配られます。通常36人クラスなので1台18ピースでカット。
コロナ禍なので黙食。
でも、行事として必須なので「王様だーれだっ!」

2台配ったのに、ひとり。
授業的には王冠を2人に贈呈して終わりたいところ。ここで、希望者による残っているフェーブ入りピースを賭けたじゃんけん大会。

あっ。いる…
淡黄色のアーモンドクリームを透かすような緑の何か。
先生も初めてのことらしく、戸惑い。
「絶対あれやん」「見えてもぉてるやん…」

フラグって、こんな感じで回収されるんやねー。


フェーブはほしい。でも、35歳で王冠をかぶりたくない私と、
食べたいだけで王冠はかぶりたくない19歳男子との譲り合い。いや、押し付け合い。
双方王冠拒否、私はフェーブ、彼はおかわりで円満解決。

これが36人きっちり揃ったクラスには起こり得ない奇跡。欠けたとて、ベツレヘムの星も輝くってもんですよ。


先生に会いに行く

以上がガレット・デ・ロワを見ては思い出す、スケスケフェーブ事件です。
やっと、先生に会った話にいきます。

実習も終わり、片付けている様子が外から見えます。数年前に自分がいた場所。
その中に先生の姿を見つけ、ぺこり。

面談小部屋に行き、最初の項の内容をかいつまむことなくお話しました。

病気なったことで、この先はお菓子だけでなく、福祉や心理に関することを学ぶ。そんな決意を伝えておきたくて。

「先生の弟もな、知的障害があるから、そういうとこでジャム作ったりしてるわー」

え?
先生、きょうだい児やったん?

先生はすごく話が長い。
それは持っている知識を全部伝えたいから。
一方で、先生はすごく冷めてもいる。
自分の熱量への返報性に敏感というか、諦観のようなものがちらほら。

学生だった当時に「きょうだい児」という言葉すら知らなかったし、考えたこともなかった。
就労施設で色んな障害や問題を抱えた人と接点を持ってから、ぐいんと視野を広げました。
知らずにいていいものではない、そう思うほど。


「でも、ぽろりはさっささっさ動くから、そういう現場やとストレスたまるんちゃう?」

そこはねぇ、先生…
私も病気と初めての就労施設を経て、ちょっとばかり成長したし、
先生の諦観は高卒の子らからしたら、無責任に写ってたかもしれへんけど、自分を護るのに大事なことでもあるなって、思ってます。
でも、そんなスカしてもいられないので、私は私のペースで進みます。


にしてもさぁ、先生。
そして、これを読むかもしれないサバイバー(クラスメイト)たち。
専門学校で学級崩壊なんかすると思う?
義務教育でもなし、たっかい学費払ってさ。

おばちゃんまだ教育ローンの返済7年くらいあるからな!元取る為にも学級崩壊の話、こすっていったるから!










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