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015 話す③ アイメッセージ

早いもので、今回で “話す” スキルも3回目です。

話すのは2〜3割に

世には話好きの人がたくさんいます。だからという訳でもないのでしょうが、人と話す際には、自分が話すのは会話量全体の2〜3割に留めた方がよいとされます。つまりは相手に7〜8割を話してもらい、自分は主に聞き手にまわる方がよい…ということです。勿論これは状況によっても変化しますし、時と場合によっては1割にまで減らす必要がある場面もあるかもしれません。簡単に言うと「5対5 (fifty-fifty) ではない 」ということです。

なぜなら自身が5割分を話そうとすると、そのぶん相手の話を聴こうとする態度は失われます。そして話す量は5割が6割、6割が7割に増え、その結果、相手に「話を聞いてもらえなかった」という印象を与えてしまうからです。

まずは「話すのは全体の2〜3割」と心に決めて、 “話す量” がそれを超えないよう意識してみてください。

意見≠事実

“話す量” が2〜3割なら、“話の質” はどうすればよいでしょうか?

一言でいうと「端的に論点を伝える」となるのでしょうが、これを実現するには複数のスキルが必要となります。ですのでここでは “意見と事実の区別” についてだけご紹介することにします。

当然のことながら、意見と事実は別物です(前者は主観、後者は客観という違いがあります)。ですが「そのふたつの見分けはつきますか?」と尋ねると、多くの方は「たぶん…」と自信なさげな返事しかしてくれません(実際、主観と客観の境界線が不明確な場合、区別できない人も散見されます)。

たとえば「ダイヤモンドは硬い」という文章が伝える内容は、事実でしょうか? それとも意見でしょうか?

── 正解は「意見」です。

事実だというためにはそこに主観を入れる訳にはいきませんが、前述の文章には「ダイヤモンドは硬いに決まっている」という主観が入り込んでいるからです。もし文章が「ダイヤモンドは豆腐よりも硬い」ならば事実ですが、前述のように比較対象なしで「硬い」というのは、ただの主観にすぎません(ウルツァイト窒化ホウ素やロンズデーライトに比べると、ダイヤモンドは “柔らかい” のです)。

ですので “事実” を伝えたいときは、そこに規準などの根拠を添えるなどするのがよいでしょう(前述の例のように「豆腐よりも」と比較対象を示したり、「ビッカース硬さ」などの数値を示します)。

「私」を主語にする

では次に、事実ではなく “意見” を伝えたいときは、どうすればよいでしょうか?

このとき使えるのが「アイメッセージ」というテクニックです。アイメッセージの「アイ」は 眼(eye) ではなく “i” 、つまり「私」のことで、アイメッセージとは「私を主語にして伝えるメッセージ」をいいます。

たとえば「(私は)ダイヤモンドは硬いと思ってる」のような表現がこれにあたります。何も規準を示さない「ダイヤモンドは硬い」という文章は前述の通り “意見” ですが、このままでは “事実” のように聞こえてしまうので「と思ってる」を付け加えることによって(主語が「私」だと示して)、客観的事実との誤解を防ぐ効果があります。

これとは反対に「お前、ホント仕事できないなぁ」という言葉の場合、「お前」が主語ですのでこれは “ユーメッセージ” となります。ユーメッセージ が使えるのは客観的事実のみですので、この場面での使用はマナー違反です(仕事の「できる/できない」は只の意見=主観であり、アイメッセージ を使う方がよいからです)。

もし仮にこれが「お前、ホントに英検3級だなぁ」という言葉で事実を伝えたとしたら、響きはネガティブですがマナー違反はありません(百歩譲って「言わんとしていること」がネガティブだったとしても、それもこちらの推察=解釈にすぎませんので「はい、3級です」と返事をするしかありません)。

アイメッセージとユーメッセージ、このふたつの違いを簡単にまとめると、次のようになります。

アイメッセージ
 主語を「私」にした伝え方
 意見・解釈・主張など主観を伝えるときに使う
ユーメッセージ
 主語を「あなた」や「彼/彼女/それ」にした伝え方
 客観的事実を伝えるときに使う

自身が伝えたいのは、事実か意見か。まずはそれを確認してから(もし後者なら)アイメッセージを使って話すようにしてください。そうすれば相手に誤解を与える可能性が減り、“話の質” も高まることでしょう。

[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/