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025 論理① 考える

仕事がら「ずっと悩んでるんだけど、どうすればいいか分からなくて」という言葉をよく耳にします。ここでいう「悩む」とは「苦痛を感じる」という意味ですが、「悩む時間=苦痛を感じてる時間を使って、とっとと解決策を考えたら?」と無慈悲な発言をするわけにもいかず、こちらも「それは困りましたね…」と同調発言をする羽目になります。

もしその悩み(=痛み)が肉体的なものなら、病院に行って診てもらうか、「心頭滅却すれば火もまた涼し」という人間に備わった基本機能(下行性疼痛抑制系)を駆使すればよいのでしょうが、仕事の悩みにはこれは使えません。ではどうすれば良いか?と言うと、今回のテーマ「考える」がその答えとなります。

本当の「分かる」とは?

第3回「論理思考」でお伝えした通り、“考える” とは「予測・判断・決意する/しようとすること、思い付くこと」という意味です。そして、考えて得られるメリット “分かる” とは「充分な情報“量”があり、その情報に“質”がともなっている」状態を指す…とご説明しました。しかし、たとえ自信満々に「分かってる」と言われたところで、そこには何の保証もありません。その人の “勘違い” かもしれないからです。

では本当に「分かっている」とは、どういう状態を指すのでしょうか?

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上図の通り、私たちの認識は「聞いたことがある」程度から始まり、少しずつ「分かっている」へと進化します。しかし前半はすべて「主観=つもり」なので、ただの勘違いという可能性があります。一方、後半は他人から見て「使える/できる」状態、つまり客観評価が可能な状態なので、本当に「分かっている」状態と言えるでしょう。

言い換えれば、独りよがりの「分かっている」にはあまり意味がなく、他人から「分かってるね」と言われて初めて「分かっている」といえるのです。

では、勘違いではなく本当に「分かっている」という状態は、どうすれば実現できるでしょうか?
上記のように、練習したり慣れたりするのは勿論ですが、何を練習し、何に慣れれば良いのでしょうか?

分ければ分かる

数学者にして哲学者のルネ・デカルトは、こう言ったそうです。
(出典はこちら

困難なことはすべて、扱うことができ、解決が必要な部分へと分割せよ

「困難は分割せよ」として知られるこの言葉は、私たちが「分かる」ための本質を表現しています。もっと簡単に言えば「分ければ分かる」ということであり、私たちが何かに対して「分からない」と言うときは、うまく「分けられなかった」だけ…ということを意味しています。

余談ですが、「分かる」を名詞化した「理解」という言葉があります。「理(ことわり)が解(わ)かる」とも「理を解(わ)ける」とも読めますが、この「理」とは、いったい何でしょうか?

辞書を引くと「理」とは「物事の筋道」のことだと分かります。つまり「理解」とは「筋道をうまく分けたら、分かった」ことを意味しているです。

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前述の「何を練習し、何に慣れれば良いのか?」という問いの答えです。──「分ける」こと、つまり「分解」を練習し、「分解」に慣れることが、他人から「分かってるね」と言われる =「本当に分かる」ための第一歩 … だということです。

「考える」のコスパ

ところで「分からないときはどうする?」と尋ねると、多くの人から「調べる」との回答が返ってきます。しかし前述の通り、必要なのは「分ける」こと、即ち「考える」です。ではなぜ多くの人は「分ける=考える」ことをせず、「調べる」を選ぶのでしょう?

まったくの私見ですが、その人たちとって「考えるのはコストパフォーマンスが悪い」というのが、その理由ではないでしょうか?

「考える」のメリット・デメリット
   メリット:「分かった」という認識が得られる(アハ体験
  デメリット: 脳に負荷が掛かる(疲れ、ストレス)

充分に練習を積んだ人の場合、少し考えただけで大きなメリット =「とてもよく分かった」という認識が得られるので非常にコスパがよく、その経験によって、次回もまた考えることを選ぶようになります(これを「強化学習」と呼びます)。

一方、考える練習が不足した人(考えるのが不慣れな人)の場合、ストレスというデメリットばかりで「分かった」というメリットが得られません。なので「考える」より「調べる」方がコスパがよいと判断し、練習不足であるにも関わらず、さらに「考える」ことをしなくなる … というわけです(これを「負の強化学習」と呼びます)。

世の中には、調べても答えが見付からないものや、答えが無いもの、調べようがないものなど、「調べる」という手法では対処できない事象が多くあります。たとえば「あのダメ上司との相性の悪さをどうにかする具体的な方法」は、辞書を引いても、ネットで検索しても出てきません(一般論くらいは出てくるでしょうが)。

少し考えれば答えが見付かることも、「調べる」に依存した人はストレスを嫌って「考える」ことをせず、永久にその答えを手にすることはありません。そしてそれが、その人の人生にとって大きな損失だということに気付くことすらありません。

不要な損失を予防・回避すべく、少し考えただけで「分かる」ようになる考え方、つまり “分解のやり方” を次回ご紹介します。

[参考]これまで&これからの記事

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