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017 読む② 本

スキルというより態度や姿勢が重要だった前回「読む① ニュース」に比べ、もっと具体的なスキルが必要とされるのが、本/書籍の読み方です。

速読はコスパが悪い?

「本を読む時間がない」という悩みを持つ人は、案外多いのではないでしょうか。読書好きの人なら、その時間を優先して確保するため問題とはならないかもしれません。しかし多くのビジネスパーソンにとって読書は「好きというより必要」が本音のため( たとえ時間があったとしても他の用事に時間を割いてしまい )、いつまでも「本を読む時間がない」という状態が続いてしまいがちです。

前回ご紹介したニュースのように「本が私たちを追いかけてきてくれる」ということもありません。ですので、自分から追わない限り、読書する人との知識力&理解力の差は開く一方です。そこで「どんな分厚い本でも数分で読めたら… 」という素直な速読への憧れが芽生えることとなりますが、今度は習得までの苦労が簡単に予想されてしまい、尻込みしたり諦めたりします。

もし仮に速読に挑戦しようと意を決したところで、また次の難題にぶつかります。その手法が無数にあり、どれを選べば良いかが分からない… のです。

もし従来の1,000倍もの効果が得られる究極の速読法が開発されたなら、誰もが尻込みせずそれを選べるようになるのかもしれませんが、残念ながらまだそんな手法は存在しません。では、どうすれば良いのでしょう?

自分に合った読み方を知る

ここでお薦めするのは「優先度をあげて読書時間を捻出し、多読する」という身も蓋もない方法です。なぜなら、速読をマスターしたところで時間不足という根本的な問題は放置されたままだからです。まずは時間を捻出して読書時間を確保し、その上で速読をする方が(対症療法ではない)根本治療と言えるでしょう。

そこで(時間捻出法については「タイムマネジメント」の回に譲り)ここからは多読スキルについてご紹介していきます。

ところで 何事もそうなのですが、万人に向く手法というのは滅多にありません。ならばここではそれを逆手にとって「自分に合った読み方をする」と考えてみてはいかがでしょうか。ただし「自分に合った読み方がわからない」という人が殆どだと思いますので、まず多読を心掛けるだけで十分です。

補足するとしても、速読のような無理な読み方をしないストイックに読もうとしない(読むという手段を目的化しない)といった程度です。そうやって読書を続けていれば、少しずつ読む量は増え、次第に自分に合った読み方も見えてくることでしょう。

ただしその際には「何のためにこの本を読むのか」という目的意識を明確に持つことをお薦めします。読み始める前に、その一冊から「何を得たいのか」を意識しないと作業として読むだけになり(手段が目的化する)、何も得られないからです。
※ダラダラと読書をして “癒やし” を得たいのなら、意識してダラダラすることをお薦めします

ちなみに、読書家で知られる松岡正剛氏は著書『多読術』の中で、次のような創作熟語を挙げています。

感読、耽読、愛読、氾読、食読、録読、味読、雑読、
狭読、乱読、攻読、系読、精読、閑読、散読 
ほか

「何のためにこの本を読むのか」、その一冊から「何を得たいのか」をハッキリさせたなら、あとは上記を参考にして最適な読み方を選べばよいという訳です。

目的にあった読み方を選ぶ

もしビジネス書など「仕事に直接必要な内容だから読む」場合は、その内容の吸収が目的となるでしょう。そんな時にお薦めする手法は、以下の4つです。

まず最初の「なんちゃって速読」ですが、これは上記の通り「脳内音読をやめる」という手法です。私たちの多くは本を読む際に、頭の中で音読をしています。というのも、そもそも黙読は14〜16世紀の発明(おそらく活版印刷登場以降)と言われており、生まれながらに備わったスキルではありません。ですので、ついつい頭の中で音読をしてしまうのです。

速読のボトルネックとなる脳内音読を止めれば、そのスピードに足を引っ張られることもありません。「脳が音読を始める前に、次の行に目を向ける」のがコツです。(第9回でお伝えした傾聴と同じように)頭をカラッポにして目を次の行に移動させ、一区切りついたところで「自分の頭の中に何が入ったか?」を確認してみてください。潜在意識/無意識の中から、先ほど読んだ情報が出てきてくれることでしょう。

あとはそれに続けて、通読・熟読・重読をTPOに合わせて組み合わせれば良いだけです。

本の読み方に万人共通の正解はありません。自分に合った読み方を見付け、ぜひそのメリットを享受してください。

[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/