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016 読む① ニュース

今回から3回に分けて “読む” スキルをご紹介します。まずは、最も読む機会の多いニュースとの付き合い方から話を始めます。

情報大爆発

ニュースを取りまく私たちの環境はこの数十年で大きく様変わりしました。総務省がその事実を端的に示したのが2007年の「情報流通センサス」で、それによると私たちが選択可能な情報量は(それまでの)10年間で410倍に爆増した…とのことでした。

ただし、今となってはそれすら10年以上も昔の話で、現在の情報量はさらに増加し、発表以降の10年で40倍になったという話まであります。しかし「その情報をすべて利用できているか?」というと話は別です。

上記グラフにある通り、私たちが消費可能な情報量には限りがあります。いくら時短を徹底し、生産性を上げたところで、肉体という制約から私たちが解き放たれることはありません。一日に確認できる情報量は、たかが知れているのです。そしてまずはこの前提に立たないと、21世紀におけるニュースとの付き合い方は見えてきません。

追うた子に追われ

さて、私たちが触れられない情報量が日々増え続けた結果、ニュースの届けられ方にも大きな変化がもたらされました。というのも、以前は決まった時間に届けられる新聞やテレビニュースに合わせ、私たちがそれを受け取りに行く必要があったからでした(ネットが普及し、それが Yahoo! ニュースになっても、私たちの方から能動的にアクセスすること自体に変わりはありませんでした)。

ところが、スマートフォンが登場した結果、状況は一変しました。こちらが何処にいようと何をしていようと、ニュースが私たちを追いかけてくるようになったのです(待機画面にロック画面、人によってはスマートウォッチにまで表示される人もあるでしょう)。たとえアプリの通知設定を解除しても状況に大差はありません。facebookを開いてもtwitterを見ても、誰かからシェアされた情報や広告が私たちを追いかけてくるので、逃げ延びるのは至難の業です。

しかも私たちに届けられるニュースは、ひとりひとりの趣味・嗜好に合わせた内容ですので、テレビや新聞のニュースとは情報の “質” のレベルが異なります。スポーツに興味がある人にはスポーツの情報が、映画やテレビに興味がある人にはその情報が…というような大まかなジャンルだけでなく、好みの選手や俳優のニュースの方がより多く届くように自動で設定され、意識していないとニュースを確認するだけで一日が終わってしまう勢いです。

“量” が爆発的に増え、 “質” も格段に高められたニュースが、24時間私たちを追いかけてくる。 ── それが私たちが生きている世界なのです。

フィルタバブルを緩和する

ここまで、現在のニュースを取りまく状況を見てきました。これらを踏まえて、私たちはニュースとどう付き合えばよいでしょうか?

お薦めするのは「質は量に宿る」と信じ、必要情報だけでなくその周辺情報まで取得する…というやり方です。それにはふたつのメリットがあります。ひとつは情報量が1.5〜2倍に増え、情報の質をより高められるというメリット。そしてもうひとつは、情報の偏り「フィルタバブル」を緩和できる というメリットです。

私たちが触れるニュースは、アルゴリズムや認知バイアスによって意識的・無意識的に「選択された情報」です。そこでは必然的に情報に偏りが生まれ、気付かぬままエスカレートしていきます。まさにフィルタバブルと呼べる状態ですが、構造的に “予防” も “回避” も難しいのが実情です。ならばそれを “緩和” すべく、周辺情報までを取得してみてはいかがでしょうか(事実関係の確認をしたり、関連情報を調べたりする)。

昨今問題となっているフェイクニュースの類いも、このようにすれば被害を最小限に留められるでしょう。そして可能であれば、ニュースの内容を次の3つに分類して、自分なりに整理しておくことをお薦めします。

データ
 客観的事実(蓄積と検索性、比較容易性を重視)
インフォメーション[知識]
 データから導き出された知識(正確性と鮮度を重視)
ナレッジ[知恵]
 新たな価値を付加された知識(共有化と差異度を重視)

ニュースを追う時代から追われる時代になった今だからこそ、改めて “追う” 対象としてニュースを捉えたいものです。

[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/