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教育実習生に伝えた25日間の言葉

教育実習生を担当した。
ボク自身にも、実習はもちろんあった。
今から考えると、とんでもないことばかりしていた(苦笑)と思うけれど、それでも、毎日が楽しくて、学校の鍵が開く前から、玄関前で待って一日をスタートさせる日だった。

そんな日を少しでも送れるように、「恩送り」の気持ちで関わった。
今回は、毎日「伝えたいこと」として、日々の指導とは別に(日々の指導はもっと初歩的で、具体的なことが多いので)、やりとりの中で出てきたキーワードを元に、伝えたいことを実習生に渡してきた。(面倒くさいやつだったかもしれないけど・苦笑)

「いつか見返してくれたらいいな」と思いながら渡したものをここに整理にしてみることにした。
それが誰かに届けられたらいいなと願いながら…。

そして、あらためて思うことは、実習生に向けた言葉たちだったけれど、自分に向けての言葉でもあった。本当に大事なことは、経験年数なんて関係ない。そう思った。ボクも学んだ5週間だった。

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教育実習生、初日伝えたこと。

1「やってみたいと思うことは、どんどん言ってください。できるだけやれるようにしていきます」
2「『なぜ』それをするのか。しているのか。を考えながら見てください」
3「子どもへ親切にすることが全て子どものためにならないことがこの仕事の難しさの一つです」

教育実習生、2日目に伝えたこと。

1「いろいろ言うし、言われると思うけれど、最初からできるはずがありません。いや、経験を重ねてもできないこともあるかもしれません」
2「でも、そのことを知っているか、意識しているかは、とても大事なことだと思っています」
3「実は量が質を担保します」

教育実習生、3日目に伝えたこと。

1「子どもたちは環境を呼吸する」~教室環境は、担任が意図した環境です。子どもたちは、それを呼吸して毎日過ごしています。
2「3日間が過ぎたので、そろそろ近くにいる子だけではなく、離れている子、離れて見ている子にもストロークをかけてみてください。」

教育実習生、4日目に伝えたこと。

1「○つけ一つにも、先生の思想が現れます。どんな願いをもち、どんな手立てをとるか」
2「私たちには、何度も訪れる場面でも、子どもたちはたった1回きりの場面」
3「授業を見せてもらう時は、必ず視点をもって臨みましょう。見えてくるものが全く違います」

教育実習生、5日目に伝えたこと。

1「集団で語らず、振り返らず、個人で語る、振り返る」
2「緩急があるからこその○○」
3「感度をもつ。どんな感度をもち、その感度のためのアンテナをどう立てて、はりめぐらしていくか。学級を運営するということは、これに尽きるかもしれません」

教育実習生、1週間を終え、実習手帳に書いたこと。

数週間の実習で、数時間の授業で、指導技術も、授業技術も高めていくことは難しいと思います。
技術のことは意識し続けてほしいですが、それよりも、子どもたちと関わることの楽しさや、あたたかさ、大切さ、難しさ、切なさを感じられる実習にしてほしいです。
(この言葉は、1週間が終わるたびに、繰り返し伝えた)

教育実習生、6日目に伝えたこと。

「物理的距離と心理的距離」~子どもと先生の関係では、物理的な距離感が心理的距離感を表すことが多いです。でも、その見えていること「物理的距離感」に安心したり、とらわれたりしていると、大事なことに気づけないこともあります。見えないところは難しいです。

教育実習生、7日目に伝えたこと。

「ゴールは今ではない」…すぐに結果を出そうとするのではなく、長期的な見通しをもって、そのために何が大切か、考えていきたいと思います。でも、ゴールは今ではないからと言って、大切な場面を見逃さずにいたいと思うし、毎日の積み重ねがあってのゴールです。

教育実習生、8日目に伝えたこと。

子どもたちとのつながり方に凸凹があるはずです。それは、子どもたち一人一人が違う心をもっているということでもあり、子どもたちとの信頼関係は簡単に築けるものではないということです。大事なことは、それに対して、どういう思いをもち、手立てをとるか。です。

教育実習生、9日目に伝えたこと。

授業の中で空白の時間を作らないということは、授業技術の一つです。空白の時間が多くなると、授業だけではなく、学級の状態も不安定になると言われています。でも、一方で、空白の時間に指示を待つのではなく、自分なりに取り組めるようになってほしいと思います。

教育実習生、10日目に伝えたこと。

子どもたちは、私たちの指導を基本的に受け入れてくれるはずです。思うように準備や進め方ができなかった授業や学級経営だったとしても、「楽しかった」と言ってくれる怖さがあります。だからこそ、そこに甘んじることなく、自分を律して問い返すことが大切です。

教育実習生、11日目に伝えたこと。

授業場面の映像を見ると、私たちには見えていない姿がたくさんあることに気づきます。でも、一人一人に伝える。一人一人に分かってもらう。一人一人に考えてもらう。ということを願うことは、難しいことだけれど、絶対に手放してはいけないことだと思っています。

教育実習生、12日目に伝えたこと。

授業をしていると、「わかる」と「できる」は同じではないという思いを何度ももちます。もちろん「できる」は「わかる」の先にあるのですが、私たちは、「わかれ」ば、「できる」と思いがちです。「わかる」から「できる」までには、さらに手立てや場が必要です。

教育実習生、13日目に伝えたこと。

学級づくりと授業づくりを分けて考えるよりは、授業づくりの中にも、学級づくりの視点をもつことを意識しています。そう考えると、授業の中で、学級づくりを意識した指導や評価も大切になってきます。例えば交流前の指示や、交流後の評価も変わってくるはずです

教育実習生、14日目に伝えたこと。

子どもを見なければ、子どもを知ることはできません。子どもを徹底的に見ることで、見えないことを知ることもあります。でも、同じ人生を歩んでいるわけではないから、知ることができても、わかることができたとは言えません。わかったつもりにならないことです。

教育実習生、15日目に伝えたこと。

優しくすることは、甘くすることではないし、厳しくすることは、冷たくすることではありません。そして、自分がどう関わったのか。というよりも、子どもたちがどう受け取っているか。が大事です。でも、甘くすることが必要な場面も出てくるのが難しいところです。

教育実習生、16日目に伝えたこと。

同じような指導をしているのに、どうして子どもの姿が違うのかな…と思うなら、きっと指導した後の子どもの姿を見ていないのです。実は、この差はとても大きいのです。指導をした後の子どもたちまで見てこそ、子どものことも、自分の指導のこともわかってきます。

教育実習生、17日目に伝えたこと。

いくら経験を積んでも、今日の振り返りジャーナルにあった言葉のように、私たちに見えない思い、聞こえない声があるのです。だからと言って、あきらめてもいけません。泥臭く、這いつくばっても、子どもたちの思いを見ようとし、声を聴こうとすることが大切です。

教育実習生、18日目に伝えたこと。

子どもたちに謝れる先生になってほしいです。謝ることには賛否両論あるだろうし、時と場合によって謝るべきかどうか違うという意見もあります。私自身は、なかなか謝れない先生だったけれど、それでも、子どもたちに謝れる先生でいたいと思うし、いてほしいです。

教育実習生、19日目に伝えたこと。

教室で行われている多数決。多数派の意見が尊重されることは、ある面で理に適っています。一方で、それが本当に民主的かどうかはよく考える必要があります。どういう経緯で多数決で決めることにしたのか。どのタイミングで決をとるのか。慎重さが求められます。

教育実習生、20日目に伝えたこと。

自主・自治的な力を育てるために、子どもたちに任せるきることが基本的には大切です。でも、任せることは、放っておくことではありません。学年や集団の状態によっては、任せる形をとりながら関わらなければ、大きな傷を作り出すこともあるのです。難しいのです。

教育実習生、21日目に伝えたこと。

研究授業、お疲れさまでした。これまでの経験を通して、先生の中に積み上げてきたこと。そして、子どもたちとの間に積み上げてきたことが発揮された、よい授業でした。

教育実習生、22日目に伝えたこと。

問いを出し、一部の子たちから反応が返ってきた時、すぐに考えを出させずに、「ちょっと待って。もう少し考えてみて」という指示が秀逸でした。この実習期間中、何度も伝え続けてきた一部の子…ではなく、「できるだけどの子も」という意識の現れでした。

教育実習生、23日目に伝えたこと。

授業の評価は、評価する人がどこに軸足を置いているかで、評価が違ってきます。たとえ、同じ授業を見たとしても、正反対の評価に分かれる時があります。そうだとしても、今日評価してもらった成果と課題は、ぜひ自分の財産にしていってほしいと思います。

教育実習生、24日目に伝えたこと。

担任は(担任制度は変わるかもしれませんが)、授業だけをしていればよいのではなく、子どもたちに委ねるのだとしても、集団を方向付け(組織)していかなければなりません。そして、個の「暮らし」に向き合うことが難しくても、寄り添うことは必要だと思います。

教育実習生、25日目、最終日に伝えたこと

5週間、本当にお疲れさまでした。
私自身も学んだ5週間でした。

先生という仕事につけるよう、子どもたちと一緒に、同じ空の下から応援しています。

私で何か役に立てることがあれば、いつでも連絡をください。
どうぞお元気で。

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実習生との振り返りは、授業中に撮った映像を教室でシェアをしながら、振り返った時もあった。

授業技術のためではなく、こんな子どもたちの姿が、授業をしている中で見えていたか…というテーマで語り合うために。

「あー見えてなかったです」と実習生。
でも、ボクだって見えていなかったかもしれない。ボク自身も学んだ。

事前の指導案には、ほとんど何も言わず、「やりたいようにやるといいよ」とだけ声をかけ、事後の振り返りを大事にしてきた。
他の方が細かいところもまで指導されているのを知ると申し訳ない気もするが、でも、ボクは、きっとその方がよいと思っている。

実習生最後の日の学級通信に、こんな言葉を書いた。

先生という仕事につけるように、みんなでおうえんしていきましょう。同じ空の下からおうえんしていきましょう。
○○○先生、どうぞお元気で。

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