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旅の中で暮らしていたい

映画『バグダッド・カフェ』を観た

どこかノスタルジックで非日常的な美しい映像と、主題歌「Calling You」の切ない響きが印象的な映画。
アイコニックな給水塔、ブーメラン、砂漠の夕暮れの鮮やかさ…。
印象に残るシーンはたくさんあるけれど、やっぱり今はファッションが気になる。

ドイツ人のジャスミンは、羽飾りのついた帽子、レースの襟の白いシャツ、ツイードのスーツ、砂にめり込むパンプス、という姿で、砂漠のモーテル「バグダッドホテル」にやって来た。トランクを引きずり、もう一方の手に黒いダレスバッグを提げて。

この格好は、場所に合っていない、堅苦しい、古めかしい、と捉えることも出来そうだけれど、エレガントで、凛としていて、堂々と自分のスタイルを貫いているようで、なかなか素敵に見える。

エレガント。
凛としている。
堂々と自分のスタイルを貫く。

どれも、ファッションの力を借りることは出来るけれど、それだけでは無理で、自身の内面から醸し出されるものである(のだけれど、そこにファッションの力を借りることは出来る、この両方を忘れずにいたいなあと思う)。

この場所に滞在するようになったジャスミンの姿は一層素敵で、ジャケットを脱いで、スカーフをブラウスに合わせたり、時には腰に巻いたり、部屋ではレースの下着でくつろいだり。

そうそう、こういう感じがいいよなあ、と思う。
たくさんの服はいらないけれど、

  • どんな場所でも堂々としていられる、自分になじんだ外出着

  • 近場の外出くらいなら1枚でも十分なインナー(下着ではなくて、ジャケットの下に着るけれどジャケットを脱いでも大丈夫なシャツやカットソーみたいなの)

  • 部屋着にもなるような下着

  • さらっと羽織れるストールやスカーフ

こういうトランクに入るくらいの少数精鋭なファッションで生きていきたい。
「旅するように暮らしたい」と漠然と思うのだけれど、旅から旅への落ち着かない暮らし、ではなくて、自分のスタイルを持ちながらも身軽で、旅先でも日常を生きられるような、新鮮な刺激の中に、揺るがぬ定番があるような、そういうスタイルが理想。

『バグダッド・カフェ』の話に戻ります

(※ネタばれ、というか後半のあらすじに少し言及します)
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ビザの期限切れでドイツに戻ったジャスミンは、再びバグダッド・カフェに戻って来る。
重厚な素材だった服は、軽やかに風になびくレースの素材になっているけれど、白いセットアップから漂うクラシカルな雰囲気は変わらない。

物語は大円団を迎え、「大人のおとぎ話」ともいえる内容だけれど。
ジャスミンのバグダッド・カフェ再来以降は、夢なんじゃないかという気もした。
中年女性のジャスミンとブレンダがお花畑で戯れるあまりにもファンシーなシーン。
プツンと途切れるような不思議なラスト。
夢だと考えたほうが、腑に落ちる気がする。

ジャスミンとブレンダとコックスさんの夢がまじりあった、共同の幻想のような、美しい夢。


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