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Photo by
voice_watanabe
景色を強く意識する
外出をした。図書館へ、借りた本を返して予約していた本を受け取るために。
外に出て「めっちゃ天気いいな!」と心の中でリアクションをした。桜は満開近くを維持しながらも、花びらはどんどん舞っていき道路を埋め尽くしている。上も下も桜色で、春真っ只中のよい景色。
図書館までの道のりは、春を感じさせる以外はいつもと変わりがなかった。そのことが、何故だか自分を不思議な気持ちにさせた。
9年前の震災は、今と同じように生命や生活の危機だったが、それが建物や自然の損傷で目に見える形で現れていた。
今回は同じく危機のときだが、目に見えての損傷がないからそう見えたのだろう。
朝、BS1のワールドニュースを見ていても、どの都市も景色良いなという感想を持ってしまう。 よくわからない感情だ。
青森の実家に暮らす父から電話があった。今度の法事は来なくてもいいよ、とのことだった。
しかたがない。新幹線のチケットは既に取っていたが、諦めることにした。
「iPadを寺に持っていってもらって、画面上から参加することってできないかな?」と提案したが、父に鼻で笑われ受け流された。
今年は、青森の春の景色を見ることができないのか……。
母の命日が来るたびに、青森の、雪解け間近の岩木山や津軽平野の春を見られるんだろうなと思っていたけれど、かなり早い段階で途切れてしまうんだな。
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