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『あかにんじゃ』

あれは2007年の冬。
その年のスターバックスコーヒーの紙コップや紙袋が素晴らしかった。
木版画のようなタッチで、ホリディシーズンを楽しむ家族や恋人達が描かれているのですが、よくある題材でありながら、一枚ずつの絵の中に物語があるというか奥行きがあるというか。
私はすっかり魅せられて、その冬はいつもより頻繁にスタバに通いました。
サイズごとに違う紙コップの絵柄を確かめたくて、いつも頼まないサイズの飲み物を頼んだりもした。

全世界で使われた、その年のキャンペーンのイラストを担当したのが、日本の方だったというのは何年か後に知りました。
https://www.tis-home.com/tatsurokiuchi/works/2640

そして、その木内達朗という世界的に活躍されているイラストレーターの方が、書店で見かける表紙が印象的な数々の本の装画を担当されていることもそのときに知った。
木版画調タッチが印象的な重松清の『きよしこ』や、池井戸潤の半沢直樹シリーズ、油絵風の新潮クレストブックスの『ソーネチカ』とか。
「アレもコレもこの人?!」
というくらい、実はよく見かけているイラストレーターの方でした。


「絵やデザインが美しい絵本」を探すに当たり、そういえば木内達朗氏は絵本出してないのかな?と調べたところ、やはり何冊もの絵本がすでにあった。
その中でまずは一冊・・・と思って見ていたら、歌人の穂村弘氏との共作の絵本があるではないですか。

穂村弘は、ずいぶん昔に会社の後輩が
「わたし最近はまってるんですけど、これぜったいお好きやと思うんです」
といって『もしもし運命の人ですか』を貸してくれたのを読んで以来、好き。

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というわけでの一冊。
『あかにんじゃ』(穂村弘・著/ 木内達朗・絵)

目立たない格好をするべき忍者がどういうわけか赤い装束を着ている。
巻物を盗みにお城に忍び込むもたちまち見つかり、侍たちに追い詰められ・・・という話なのですが、ピンチになるとドロンドローンと呪文を唱えて予想外のものに変身していく「あかにんじゃ」。
侍の裃にはよく見ればアディダスのロゴがついているし(ナイキの侍もいる)、お城とスカイツリーが同じ画面にあったりもするし、絵本ならでは!で本当に面白い。
最後の最後のページまで、美しいのにやっぱり面白くて、ほんっとうに良いです。

コドモを歯医者に連れて行くときに、最近はコロナで待合室のオモチャも絵本もなくなっていることを予想して持っていき、そこで初めて見せたのですが、案の定ゲラゲラ笑って楽しんでくれ、緊張する待ち時間も楽しく過ごせました。

そういえば、穂村弘を教えてくれた後輩は、その後「IT企業の眼鏡をかけた総務課長」と結婚。穂村弘(昔はIT企業勤務で総務課長だった。眼鏡をかけているがレンズはないらしい)のことがそんなに好きなのか・・・というか、好みのタイプがブレてなくてすごい・・・と思ったことでした。
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『あかにんじゃ(えほんのぼうけん)』
穂村 弘 (著), 木内 達朗 (イラスト)
発売日 : 2012/5/26
単行本 : 32ページ
ISBN-10 : 4265081142
ISBN-13 : 978-4265081141
出版社 : 岩崎書店



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