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子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)と妊活 ⑤ 卵巣チョコレート嚢胞合併妊娠

※ 子宮内膜症を患うアラサー妻と、夫が不妊治療(体外受精)に取り組んだ一例の話です。今までの記事に記載した経過ののち妊娠し、現在に至ります。ご理解の上、お読みください。

胚盤胞移植を経て、妊娠に至った。赤ちゃんの心拍を確認することができたので病院Cに申請用紙を書いてもらい、子育てセンターで母子手帳の交付を受けた。センターの職員から説明を受け、手帳の他にマタニティマークや読み物冊子、オムツのサンプルなどをもらった。互いの両親にも報告し、前回のこともあり養生するよう言われた。食の偏りは治まってきたものの、頭痛と排便トラブルがひどく、お腹を下し続けた日々だった。それでも、元気に過ごせる日も増えてきた。一日一日の体調が異なり、非常に長く感じられた妊娠初期だった。

里帰りをする予定がなかったため、今住んでいる場所で産院を考えることになった。病院Cでも出産を取り扱っていたが、痛みが怖いという思いがあり「無痛分娩」を希望していた。あまり栄えた地域ではないため、無痛分娩を取り扱う病院は地域に1つしかなく、「病院D」に転院することになった。

「病院D」はきれいな個人クリニックであった。地域では評判の良いクリニックで、元職場の人や知り合いも利用する人が多かった。SNSなどの発信も積極的で、医院の雰囲気などを知ることができた。個人クリニックで医師が少ないため、大きなトラブルがあれば近くの総合病院に搬送されるようであった。

安定期と呼ばれる妊娠5ヶ月に入り、戌の日のお参りをしたのち、初めて病院Dで診察を受けることになった。問診票に経過を記入し、病院Cで書いてもらった紹介状を渡して、初めて医師の内診を受けた。赤ちゃんは、順調に育っていた。

併せて、卵巣チョコレート嚢胞も育っていた。

妊娠初期の卵巣は「ルテイン嚢胞」といって通常より少し腫れた状態になる。しばらくすると自然と小さくなり元に戻る。私の場合はその時期を過ぎているにも関わらず、卵巣の腫れは妊娠前よりも増していた。右が丸型で6cmほど、左は楕円形で直径7cmほどであった。おそらく卵巣と子宮との癒着もひどいとのこと。「卵巣が大きい。妊娠中に破裂するケースもある。手術はしなかったのか?」と病院Dの医師に聞かれた。

前回通っていた病院Cでも、胚盤胞の移植前に「卵巣が大きいまま妊娠しても大丈夫か。嚢胞の中身を抽出する施術などはしなくても良いのか」ということを聞いたが、「手術は卵巣の機能をかなり下げるリスクがある。また、嚢胞の抽出術は細菌感染のリスクがある。」と言われ、移植に至ったという経過があった。

「以前の病院の医師にも聞いてみたが、医師の判断でそのまま移植することになった」旨を伝えた。病院Dの医師は「確かに妊娠を先行する考えもあるけれど、この大きさなら妊娠中のリスクを考えて手術した方が良かったと思う。」と言った。

医師によってここまで考え方や方針が違うと、素人の自分は非常に混乱する。お腹の中に生きている命がある以上、もう引き返すことはできない。以前までの経過にも記載したが、自分の身体は自分で守るべきであるとは思うものの、あまりにも専門的な分野については、医師と同じ土俵で話すことはできない。病院CとD、果たしてどちらが正解なのかわからない。けれど、自分が医者ではない以上、今は目の前の専門家の言うことを信じ、向き合うしかないのだ。預かっている命はこうして悩んでいる間にもぐんぐんと育っていく。感情的に何かを責めたところで、現状は変えられない。

転院した後の初診から、こんなに不安な気持ちが生じるとは思わなかった。「では、どうすれば良いのか」と聞くと、病院Dの医師は渋い顔をしながら「何もできない。経過観察しかない。お腹がもっと大きくなって、産まれてくるまではどうなるかわからない。」と答えた。「卵巣は妊娠中に小さくなるのか」と聞くと「妊娠期間の10ヶ月程度では大きさは変わらない」ということも伝えられた。

定義としては、卵巣チョコレート嚢胞を合併する妊娠ということになった。生じうることとしては、卵巣の破裂。どれぐらいの割合で起こるかを聞くと、16週ぐらいで起こる人もいれば、30週ぐらいで起こる人もいる。出産中に破裂することもある。が、破裂が起こらない人もいる、とのことであった。人によって違うらしい。妊娠中に手術をするケースもあるようだが、私の場合は手術が可能な週数を過ぎてしまっていた。「無痛分娩」を希望していたが、卵巣の破裂に気づかない場合もあるから、無痛分娩が適応できるかわからないことも伝えられた。卵巣と周囲の癒着もひどいため、妊娠中に痛みが生じる可能性もあることも言われた。

…ああ、頭がパンクしそうである。

世の中には、もっと様々な持病を抱え、症状と向き合いながらも妊娠出産されている方々がいる。また、妊娠中に発症する病気やリスクもいろいろある。自分だけが終始健康で過ごせるなんてことは決して思わない。けれど、子宮内膜症という病気、人のQOLを著しく下げるこの病気、新しい命の誕生にも悩みをもたらすこの病気は、一体どこまで厄介なのだろうか。

生理痛がきついと訴える人は周りにも多くいる。内膜症がわかった当初は、生理のキツさを訴える友人にも「絶対に産婦人科で診てもらった方がいい」と強く勧めていたが、内膜症のある人が女性の10%の割合でしかいないと聞くと、妊娠や出産などの用件がない限り、実際に病院に行く人はいないだろう。私が「メンタルがよく沈むんだよね」と言って、カウンセリングを受けるように助言をもらっても、精神科に行くまで気持ちが向かないのと同じような感じかもしれない。実際に生活に支障が出るほど症状がキツくなり病気が判明するまでは、人は危機感をもって動かない。

今回の治療については、何が正解なのかはわからない。もし、他のタイミングでタマゴの移植をしても、結果がまた違ったかもしれないし、赤ちゃんが来てくれたというところではこのタイミングがベストだったのかもしれない。けれど爆弾を抱えたまま、妊娠生活を送ることに不安を抱いていることには違いなかった。

妊娠生活中、お腹が張ること以外に、左右どちらかの下腹部だけがズキズキと痛むことがあった。しばらく休むと治まったが、チョコレート嚢胞を抱えている実感はあった。

破裂すると、ひどい腹痛で動けなくなるらしいが、幸いにも現在(妊娠9ヶ月)までにそこまでの症状は見られていない。(この妊娠が第一子で、専業主婦で自宅で過ごすことが多く、自分自身の行動に最大限に気をつけられているというところはあるが)


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私は、実際に自分が病院で診断されるまでは、内膜症や不妊治療のことを知らなかった。現代女性の10人に1人はいる病気であるが、保健の授業では習わなかったし、今のようにネットやYouTubeなどで配信する人も昔はいなかった。経過を並べただけの自己満足の文章だが、読んでくださった人が何か知るきっかけになるといいなと思う。(とはいっても、子宮内膜症に関することのほんの一部でしかないし、私の場合はこうだった…と言うだけなので、詳しいことはやっぱり専門家を訪ねてほしい)

私も今まで、さまざまな人の体験談や書籍などを読ませてもらったが、病気について知ることができたとともに、苦しんでいるのは自分だけじゃないということも知ることができた。また、軽度から重度まで様々であるが、子宮内膜症を抱えながら妊活、そして妊娠出産を経験する人は多いこともわかった。

読んでくださっている方にも、同じような症状を持っていらっしゃる方もいるかもしれない。もしくは「私は生理きついかも…」と思って調べて「子宮内膜症」というキーワードに辿り着いた方もいるかもしれない。

妊活のことも含め、デリケートで難しい内容でもあるので、他人と話題をシェアできないかもしれない。私も友人に病気や治療のことを話したことがあるが、噛み砕いて話しても相手の頭には「?」が浮かぶばかりで「なんか大変そうだ…」とだけ思わせてしまったのが申し訳なかった。逆の立場なら、私も理解しようにもできなかったと思う。

「つらいのは一人じゃない」とまで言ってしまうのはおこがましいかもしれない。

でも、子宮内膜症を抱える人はどうやら女性の10人に1人はいるようなのだから、実は身近な誰かも同じような思いを抱え「自分だけかも…」と悩んでいるのかもしれない。





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