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【私のイチオシ②】

(note公式様の「春の連続投稿チャレンジ」に挑戦中です)

 「私のイチオシ」第二弾は特撮編です。「イチオシ」なのに第二弾があるとは何事か、と言われましても推しが多すぎるので仕方ありません。
 前回はアニメ編で、五万以上ある推しアニメの中から『SAMURAI7』を選ばせて頂きました。さて今回は特撮編、アニメ以上に推し作品が十万とあるのです。しかし、迷いはありません。この作品の素晴らしさ、全人類に届いて欲しい。その日本一の特撮こそ、
 

『快傑ズバット』


 はい、特撮ファンなら一度は耳にしたことがあるタイトルではないでしょうか。リアルタイムで毎週手に汗握っていらした方、VHSを擦り切れるまで見倒していらした方、DVDにノイズが出るまで再生し続けていらした方、サブスクで中毒になってしまわれた方。どの世代にも狂気のインパクトを刻みつけた強烈な作品です。
 伝説の始まりは1977年2月2日19時30分。着陸したセスナからギターを片手に降り立った男は、キザな笑みと投げキッスで視聴者男女のハートを瞬時に鷲掴みにしました。特撮界のレジェンド宮内洋氏演じる「日本一の男」の華麗にして壮絶な活躍の始まりです。
 オープニングソングのタイトルは「地獄のズバット」 ヒーローがいきなり地獄と復讐を背負って出てきてしまいました。ここで全ての特撮ファンは気付いてしまうのです。こいつは子供向け番組の正義の味方なんかじゃねえぞ。地獄を見た男が心に復讐の風を吹かせ仇を追って追って追い詰めるのです。正義のせの字も出てこない、とんでもねえ歌詞ですよ。
 そのオープニング映像の中で、凶弾に倒れる親友を目撃した主人公が彼の名を絶叫するのですが、これがまあ流行りましたねえ。カラオケの合いの手は当然として、古くは2ちゃんねるの特撮板に始まり、現在はXなどSNSの特撮クラスタ内で、毎年2月2日に大量の絶叫が書き込まれる有様です。ジブリファンにとっての「バルス」のようなものでしょうか。
 伝説はまだまだ続きます。主人公の私立探偵・早川健は親友である飛鳥五郎の仇を探して復讐の旅に出ることになります。この早川健、親友の仇を討つために何と宇宙探索用に設計されていた装備と車両を勝手に改造して強化戦闘服「ズバットスーツ」と飛行機能付き特殊車両「ズバッカー」を完成させてしまうのです。ちょっと待って、なんで最初からそんなオーバーキルする気満々なんですか。まあ、実のところ悪の秘密組織が裏で糸を引いているのでこれで良いといえば良いのかもしれませんが、この時の早川はまだ悪の組織のことを知らないのです。相手をただの質の悪いヤ○ザだと思っています。やっぱりオーバーキルじゃないですか。
 さて、早川健という男は武術格闘技知力体力とにかくあらゆる能力が「日本一」という設定です。強敵に「だが、この日本じゃあ二番目だ」とキザな仕草で言い放つ有名なシーンがまさに熱く展開されます。しかし、ここで大きな問題が生じてしまいます。ズバットに変身した後より、変身前の早川の方が明らかに強いのです。ヒーロー番組(なのか?)としては致命的です。そこで、毎回なにかしらのトラブルが起きて生身での戦闘を封じられズバットに変身せざるを得ない状況が作られます。かなり強引です。
 変身と書きましたが、劇中では一度も変身ポーズやエフェクトは描かれません。ピンチになる、早川が姿を消す、突然ズバッカーに乗ったズバットが現れます。いつ変身したのかどうやって危機を脱したのかズバッカーはどこから出て来たのか一切説明はありません。ズバット参上、の口上で全て片付けられてしまうのです。
 そんな早川ですが飛鳥を射殺した犯人を知りません。当然悪の秘密組織のことも知らないので、毎回敵にこう訊ねなければなりません。
 「2月2日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か!?」
 ここで敵役が命乞いをして「違う、俺はその日イタリアでスパゲッティを食べていたんだ(実際に使われた台詞)」とアリバイを訴えるまでがセットです。ズバットはフェイスシールドを外して早川の顔を見せ「飛鳥…こいつでもなかったよ…」と呟き姿を消すのです。後には叩きのめされた敵が累々と転がっていて「この者、連続爆破犯人」などと書かれたズバットカードが残されているだけ。
 因みに、敵と言っても怪人や戦闘員ではありません。変身もしなければ改造手術もされていないただの人間です。悪の秘密組織のメンバーとはいえ所詮はヤ○ザの親分と用心棒と下っ端です。それが日本一の早川にボコボコにされた上、強化スーツのズバットに完膚無きまでに叩きのめされるのですからたまったものではありません。早川は無駄な殺生はしない主義なので滅多なことで命は取りませんが、それでも生身の人間相手に強化スーツで戦うってなかなか非道ですよね。そこが魅力でもあるのですが。
 黒のテンガロンハットにレザーのウェスタンスタイル、飛鳥の形見の白いギターを弾きながら颯爽と現れる早川健。個性豊かな敵の用心棒を日本一の技で倒していく痛快な前半、人質を取られたり罠に嵌められたりと危機に陥る中盤、一気に敵を殲滅する後半、毎回30分番組とは思えない濃密なストーリー。肝心の子供向け玩具が売れず惜しくも32話で打ち切りとなってしまいましたが、今なお老若男女多くのファンに愛され続けている伝説の異色特撮です。
 散々ネタバレしておいて今更ですが、未見の特撮ファンの方には死ぬまでにぜひ一度見ておいて頂きたい作品です。それでは、最後は皆様ご一緒に。

「飛鳥ああああああああああああああああっ!!!」
 

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