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文学フリマ東京37に出店するひとの、不安と期待と戯言とお品書き

 小説を書いているわりには凡人である自覚がある。一般社会で生きていくには変人である自覚もある。中学校の教室では小説を書いているというだけで自分のアイデンティティを確立できたのに、そこから一歩二歩と出ればまわりは小説を書いているひとだらけでわたしはなんにも特別じゃない。
 どう生きるにも中途半端で、どこにいてもいつも、背伸びをしたりつま先立ちをしたり膝をかがめたり頭をかたむけたりして無理やり身体の形をその場所に当てはめている。そうしないと、中途半端なわたしにはどこにも収まらない。

 文フリのカタログを眺めているだけでこんなにも面白そうな作品がたくさん、スクロールすればするほどいくらでもたくさんあって当日がうずうずと待ち遠しいのと同時に、このなかから無名のわたしの本など、いったい誰が選んで買って読んでくれるというのだろうという気持ち。

 などと落ち込んでいても仕方がないから、読んでもらうためにいまできることはぜんぶ乗せでやるしかないのよ。小説の試し読み公開したりポスターつくったりテーブルクロス買ったり、それからお供として連れていく看板ぬいを任命したりしました。桜色のふわふわうさぎちゃん。耳に菜の花っぽいお花がついています。

 自分の小説を自分で宣伝するのって本当にむずかしいですね。わたしってとってもいい子なんだよ!って自分で言う子より、あの子って本当にいい子なんだよね、って第三者から言われる子の方が何倍も信用してしまうのと同様に。ぜったいおもしろいからぜったい読んで!買って!という自己中心的で主観的な宣伝ではなく、いかに自分の作品を客観的に分析し、届くべきひとに確実に届くように、言葉を使えるか。
 文フリって作品を書いて完成させるだけじゃなくて、その大事につくって生み育てた作品をいかに読んでもらうか、書いてから読まれるまでの道筋をいかに丁寧に整えられるかもとても大事なのだなあと実感しました。

 要するに、こんなに面白そうな作品もSNSを上手に使って宣伝するひともたくさんいるなかで、わたしの小説など一冊も売れないかもしれない…と言う気持ちになって夜も眠れないというだけなのですが…。初出店なので、無名の新人がどの程度読んでもらえるのかとんとわからない。とても心配。(きっとみなさんそうだよね?)
 送料を浮かせるために、行きも帰りも本の在庫はリュックに背負っていく予定でいます。帰りはちょっとでも軽くなっていると、とってもうれしいな…。


 N-42の純文学カテゴリ。まだ1冊しかありませんが、出来たてほやほやの新刊です。
 純文学小説「あの子人形になったって、風」は82頁で1冊500円。本当は700円の予定だったのですが、印刷のオプションを一個減らしたら200円の値引きに成功しました、やったね。
 生まれつき全身に痣がある大学生の女の子が、自分の手脚を人形の美しい身体に取り換える話です。着想は川端康成の「片腕」から得ましたが、行きついた先はぜんぜんちがう。
 だれにも消費されない身体を求めて、彼女は孤高に跳ぶ。とぶ。飛ぶ。

 第一章の途中まで試し読みを公開してあるのでよかったら。

 あとは松濤美術館で7月~8月まで開催されていた「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」という人形展示のレポートも併録しました。こちらは文フリ当日までnoteで全文無料公開しています。

 表紙のイラストはCanvaに描いてもらいました。AIのバグで脚が三本になっていたのですが、かえって作品の色にぴったりと沿っているような気がしたのであえて採用しました。
 どれが彼女の本当の脚でしょうね。

あの子人形になったって、風

 
 ほかには、フリー配布用の折り本を100冊つくりました。母に手伝ってもらって、がんばって折り折りちょきちょきしたので無料だからって粗末にしないでね。

拍手のひと

 文庫本の半分の大きさ、コンパクトなA7サイズです。
 掌編小説「拍手のひと」はこのnoteでも読めます。マイノリティーがうまれる瞬間を書きました。


 でも今回はとくに来場者が多そうなので、もっと気軽に配布できるフリーペーパーとかいっぱいあったほうがいいのか?とも思いつつある。るるる。

 立ち読み用の本を立てるためにセリアでアンティークイーゼルを買ったのだけど、帰ってきて立ててみたら重さで後ろにひょこんと倒れました。どうやらポストカードサイズの一枚の紙を立てる用だったみたいです、アンティークとかに惹かれずふつうのイーゼル買えばよかった。仕方がないのでポップ立てとして活躍してもらおうと思います。


 なんかいろいろごちゃごちゃを書いてしまいましたがけっきょく一周まわって、ぜったい面白いから買って!読んで!お願い!という気持ちです!

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