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介護職員が知っておきたい高齢者心理の基礎

私たち介護職員は、利用者に寄り添うことが大切とよく言われます。
ですが、その寄り添うというのが多くの意味を含んでおり、何が寄り添うということなのかよく分からない人も多いのではないでしょうか。

利用者の気持ちを考える上で、「加齢に伴って生じる心の変化」を理解しておく必要があります。
今回は、その変化について紹介をしていきます。

1.老いを”自覚する”ということ

年齢を重ねていくと、徐々に自分の人生経験や周りの環境の変化から、自分が老いてきたことを自覚するようになります。老いを主観的に自覚することを、専門用語では「老性自覚」と言います。

老性自覚をする出来事は多々ありますが、そのきっかけになる出来事を「老性兆候」と言います。老性兆候は、まず身体面の変化から自覚ことが多いと言われています。

身体面の変化
関節が痛むことが多くなった 転びやすくなった 白髪が増えてきた 耳が遠くなってきた など

また集中力がなくなった、記憶力が悪くなってきたなど、精神面からも老性兆候を感じることも多いです。

精神面の変化
集中力がなくなった 記憶力が衰えた 無気力になった 若い頃を懐かしむようになった など

老性兆候には、さらに定年退職を迎えた、友人と会うことが少なくなったなど、環境面からも実感することがあります。

環境面の変化
定年退職を迎えた 社会活動に参加しなくなった 人間関係が狭い範囲になってきた 孫が生まれた など

特に男性の場合は、定年退職が大きな老性兆候となり、心理的に大きな変化をもたらすきっかけとなります。

このような変化で老いを感じるようになりますが、それを素直に受け止めることは難しく、本人にとっては非常に辛いものがあります。このような状態をどう乗り切るかが、その後の高齢期の幸福度を左右すると言っても過言ではないです。

介護職員としては、このような「高齢者の加齢を受け入れることの難しさ」に気づき、関わっていくことが大切になります。

2.様々なものを”失う”ということ

始まりには必ず終わりがあるもので、人は年齢を重ねるとともに今まで培ってきたものを失っていきます。身体的に衰えていくことを始め、役割の喪失、生きがいの喪失、仲間の喪失など、何かを得ることよりも失っていくことが自然と増えていきます。

このような喪失体験というものは、人によって程度は違えど高齢者の心理に影響を与えていきます。

例えば…

🔶定年まで仕事一筋、それなりの役職にも就き会社のために尽くしてきた男性。これまで家庭のことは全て妻に任せてきたため、定年退職して家でゆっくり過ごせるようになったとしても、なんだかぽっかり心に穴が開いた状態になってしまった。「私は老後、何をすればいいのだろうか?」そう考える日々を送っている。
🔶一人娘を大切に育ててきた母親。一緒に家事をしたり、買い物へ行ったりすることが何よりの楽しみであった。しかし娘もいい歳になり、嫁ぐことになってしまった。娘の幸せを願う気持ちの反面、生活の楽しみがなくなってしまい何となく一日一日を過ごしてしまうようになった。
🔶毎週末、気の合う仲間数人と集まって、ゲートボールをすることが趣味であった男性。ゲートボールで体を動かして、仲間と他愛もない話をして、「なんて健康的な生活をしているんだ」と日々充実感を得ていた。しかし、一年また一年と経つうちに、一人また一人とゲートボールに来られなくなる友人が現れ、いつしか私一人になってしまった。私はまだ体を動かせる、しかしゲートボールは仲間とやらないとつまらない、なんとも言えない葛藤が男性の心にいつもつきまとっている。

このようなことが、実際に様々なところで起こっています。

このような喪失体験に加え、自身の健康面や経済面の不安などもあり、高齢者は様々な葛藤があることが想像できます。

3.私たちにできること

高齢者の心理状態には、様々な背景があります。
それを踏まえ行動できることは、やはり一言でいえば「寄り添う」ことなのでしょう。しかし今回紹介した内容を見た後では、その「寄り添う」の考え方が少しは変わったのではないでしょうか。

利用者に寄り添うためには、もっともっと知らなければならない情報がたくさんあります。個々によって大事にしてきたことや、譲れないものが違います。
業務に追われ、一人ひとりの話を聞いている時間はないかもしれません。しかし、私たちが日々悩んでいること以上に、その利用者は悩みながらそれまでに人生を生きてきました。そこを理解するだけでも、寄り添い方は変わってくるはずです。


綺麗事かもしれませんが、介護職員の持つべき姿勢として大切と思うことをお伝えしました。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。



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