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新興国の新型コロナウイルス感染の現状は、多くは日本と同じくらい

世界各国の新型コロナウイルス感染状況は、日本経済新聞社の「新型コロナウイルス感染 世界マップ」をみると海外のサイトにいかなくともデータが載っているので、誰でも知っているものだと思っていたのですが、そうでもないようなので海外の新型コロナウイルス感染状況を簡単にまとめます。

日本は世界で120番目

日本全国で新型コロナウイルスの新規感染者数がおさまってきたここ最近、「日本の死亡者数の少なさは特別」、「次は新興国が危ない」という記事が増えてきました。

事実は、日本の人口当たり死亡者数の少なさは世界で約120番目(約210の国・地域が比較対象、人口当たり死亡者が多い方から数えると約90番目)です。

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(出所:European CDC)

日本よりも人口当たり死亡者が少ない国は、たとえば上の図の国々などです。

国数で世界の9割を占める新興国で全部とはいかずとも、ほとんどの新興国ではとくに感染者数の発散は5月20日現在は起きていないようです。

5月20日現在日本でも多く報道されているブラジルの感染状況は少し心配ですが、それでも私たちが日本や欧米の状況をみるときによく見ていた対数ベースで推移をみると、他の国々よりは遅いペースながら、少しずつ収束方向に向いているとみえなくもありません。

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ブラジルとメキシコ以外の主要な新興国は、もっと早いペースで収束に向かっているようにみえます。

新興国の方が日本より遅れて感染が広がっている(ため人口当たり死亡者数が少なく見える)のは事実なので、各地域の国々の人口当たり死亡者数の推移を載せます。

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(↑ 東アジア、南アジア)

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(↑ ラテンアメリカ)

ロシアでの感染拡大が日本でも報道されていますが、人口当たり死亡者数は現在の日本の数倍程度のようです。(ただし後出のFTの推計値によると、ロシアの死亡者数はもう少し増えるかもしれません。)

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(↑ 東欧)

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(↑ 東南アジア)

BCG説のその後

3月ころ、新型コロナウイルスはBCGを多くの人が接種していない国で亡くなるステージまでいってしまう方が増加しており、日本はほとんどの人がBCGを接種しているので大丈夫なのでは、という仮説が日本でもネット上で広まりました。

その時以下の世界地図が同時に広まりましたが、世界ではBCGを打っていない国の方が稀なようです。

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あれから約2か月経ちましたが、やはりBCG接種がほぼ義務付けられている国々では欧米の水準での死亡者の増加はみられていないようです。

逆に新興国の中でほぼ唯一BCG接種を行っていないとTHE BCG WORLD ATLASに載っているエクアドルでは、その後公表ベースでは欧米よりすこし少なくブラジルより若干多い程度の人口当たり死亡者数となっていますが、PCR検査の陽性率が世界第2位であることから新型コロナウイルス感染者を補足しづらくなってしまっている可能性があり、イギリスの経済紙FTの推定値(通常の年の今頃と今年の死亡者数の乖離値)を用いると実際の人口当たり死亡者数は世界でも最も多いグループにはいってしまう可能性もあります。

一方、オーストラリアとニュージーランドは、今南半球が夏であることを考慮しても、エクアドルも常夏であることを考えると唯一の例外といえます。

やはりBCGとなんらかの因果関係はありそうですが、ご存知の方も多い通り、成人がBCGを打って新型コロナウイルスの重症化防止に役立つかはまだ全く分かっておらず、また成人が打ってしまうと本来打つはずだった人に届かなくなってしまうリスクがあることから、BCG接種国で死亡者が少ないというのは、少なくとも現時点ではあまり役に立たない知識ともいえるかもしれません。

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