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そらのキャンバス #1

「視覚障害者の人たちってね、ほんとうに星が五角形だと思ってて---」

お盆の親戚の集まりで、となりに座ってる姉ちゃんの声が耳に入った。
叔父さんがマスコミ関係に転職した姉ちゃんにいろいろ突き詰めているところだった。
姉ちゃんは大学生の頃、教師になりたくて教育実習での障害学級に足を運んでいた。
その時、紙に青一色で描いているひとりの児童に無理矢理ほかの色のえんぴつを持たせようとした職員に疑問を持ち、卒業して三年は一般企業で働いたものの、ふと自分の人生のやりたいことを考えたら、あの時の懸命に青にこだわる少年とその対応に疑問を持っていたことを思い出したらしい。あの子と同じような子があの時のように強制されないで自由に学校で絵が描けるような社会になっていけたら…
そのためには現状を多くに人に知ってもらうのが一番だと思った姉ちゃんは二年前に転職した。
全国の障害者の施設などの現場に飛び回り、編集作業は徹夜も当たり前であったので去年はお盆は休めず会えなかった叔父さんが心配したのである。

「---かわいい絵のような世界に生きていると思ってる。ふふ」

最後にこぼれた笑みと、我が子を愛でるような口調に、姉ちゃんは今の仕事に誇りを持っていると確信した。

わたしに向かって言われた言葉じゃないが、その後も”視覚障害者のみえる世界”が気になった。

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