プールの中のワンネス
私は泳ぐのが得意ではない。
平泳ぎだったらなんとか25m泳げはするものの、苦しくて仕方がない。クロールの息つぎをするときにどうしても体が沈んでしまうので、できるだけ息つぎをしないようにしていた。25mの真ん中あたりで苦しくなったときに、1回だけ必死に犬かきをして息つぎをするというマヌケな姿。その姿を先生に気づかれていたかどうかはわからないけれど、なんとかその作戦でプールの授業をやりすごしてきた。
顔を水につけることが正直恐いし、息ができない水の中にもぐるなんて不自然だ。今までもこれからもきっと私は泳げるようにならないだろう。
でも、強制的に泳がされない、ただ遊ぶためだけのプールは好きだ。
暑い夏に、冷たい水の感触ほど心地よいものはない。
浮き輪を使って水にプカプカ浮くのは、なんと気持ちがいいんだろう。
先日、息子と旦那さんと市民プールに行った。ただ水の中に入って、歩いたり浮いたりしているだけで息子も旦那さんも私もなんだか楽しくて、2時間があっという間に過ぎていった。
水にプカプカ浮いているときに、ふと感じたことがある。
こんなに肌に密着するものは水以外にない、ということだ。
毎日着ているぴったりサイズの下着だって、水ほどは肌に密着していない。
長い時間水に浮いていると、だんだん自分の肌と水との境界線があいまいになってくる。
自分の体が、水と溶け合っていくような感覚だ。
そのままもし寝てしまったりしたら、私はそのまま水になってしまうかのような感覚。
そして、その私が溶け合っている水と溶け合っている、プールの中にいるすべての人たちと、水を介してつながっているような感覚。
いわゆるスピリチュアルな世界で「ワンネス」といわれる感覚に近いのかもしれない。
私と、水と、あなた。
ワンネスとは、全部一見バラバラに存在するように見えているけれど、本当はすべてつながっている。そんなような考え方のことだ。
このワンネスという言葉がわかりにくいのであれば、「一体感」という言葉をイメージしてほしい。
この感覚を味わっているとき、人間は猛烈に幸せを感じるものである。
想い合っている人とまるで1つになったかのようにくっついているときの安心感。みんなで同じ方向に向ってがんばっているときの加速するエネルギー。みんなが同じアーティストを応援しているときのライブ会場の熱気。
だれもが一度は味わったことがあると思う。
これと同じような感覚を、私はまさかのプールの中で感じてしまった。
プールはみんなが楽しんでいる場所だから、その楽しい気持ちの人たちが溶け合っている水にも、その楽しい気持ちが溶け込んで、そしてその水に入った人を楽しくさせる。
人は水に影響を与えて
水もまた、人に影響を与える。
そんなような気がした。
この感覚は、プールの中じゃなくても感じられる。でも、肌に密着している水を通して、プールの中ではすごく感じやすいと思うのだ。
日常生活の中で私は、大切な家族がいるのに、なんだか一人ぼっちなような気がするときがある。そんなとき私は目を閉じて想像する。
私と、私の周りに漂う空気。
そして、その空気を吸う私。
私の体の中にその空気が満ちて
私とその空気が溶け合っていく。
そして、あの人もあの人もあの人も
空気を吸っていて、空気と溶け合っている。
だから、私とあの人も溶け合っている。
つながっている。
その想像は、私をやさしくやさしく癒やしてくれる。
感じようとすればどこにいても感じられるワンネスという感覚。
でも目に見えない空気の中でよりも、感触があって目に見える水の中での方が、その感覚を感じやすいような気がする。
だから、孤独を感じているとき、さみしいとき、なんだかモヤモヤするとき、私はプールや海に浮かんでみることをおすすめしたいと思う。
楽しい気持ち入りの水に入った瞬間、きっとあなたを楽しい気持ちにしてくれる。そして、水を介してつながっているたくさんの人たちの存在で、孤独感やさみしさが、すーっと消えていくにちがいない。
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