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人はなぜ罪を犯すのか〜医療刑務所での精神科勤務を通して〜
みなさんは自分が犯罪者になる可能性について考えたことがあるでしょうか。
先日、授業で発表するという小学生に頼まれ取材を受けたのですが、その際「人はなぜ罪を犯すのか」というなんとも哲学的な質問をされました。
そこでふと興味が湧いてしまった私は「〇〇くんは自分は絶対犯罪者にならないと思う?」と聞き返したのですが、するとそこはさすが小学生。ピカピカの心で「絶対にならないです!」と元気な答えを返してくれました。
では、みなさんはどうでしょう?
サイコパシー、ソシオパシーなんて言葉がメディアでキャッチーに用いられだしてから、自分の中の犯罪性に怯えたりむしろ少し憧れている人すらも出てきました。ネット上のサイコパス診断テスト、なんていうものをやってみて自分は異端なんだ、とニヤついた経験がある方もいるかもしれません。
では、現在収容されている犯罪者の方々はみな生まれ持って犯罪性を持ち、昔から自分は犯罪者になると思っていて、なるべくして犯罪者になったのでしょうか。
犯罪理論の根底には様々な観点があります。
「人は本来、正しいことをしたい善良な生き物である」という観点を「順法的観点」、それとは逆に「人は規制がなければ節操なく罪も犯す生き物だ」とする「非順法的観点」、さらに元々はどちらでもなく環境から学び行動に至るだけだ、という「学習論的観点」などが存在します。
そこから派生し様々な理論が出てきますがもうすでに何だか難しくて嫌になってきている人もいるでしょうからこれはまたの機会にします。
さて、少し話を進めますが、そもそもなぜ、一精神科医の私が犯罪者について語り出しているのでしょう。
Twitterやテレビで私のことを知ってくれている人はわかっているかもしれませんが実は私はここ数年、精神病院勤務の傍ら医療刑務所でも働かせていただいています。医療刑務所の勤務は常勤だと副業規定も厳しく、こういった発信をしている人はとても少ないので情報がほとんど漏れてきません。医療者の中にも興味がある人は多いようでよく聞かれますが、話を聞いた上で実際に勤務する人はほとんどいません。
ここでは、医療刑務所が普通の刑務所と何が違うのか、どんな患者さんがいるのか 、そしてそこで働く人は何をしているのか。そして私がなぜ精神科医として医療刑務所で勤務をしているのかを通し、人間の中の犯罪性というものについて私の考えを少し綴ってみようと思います。
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