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日本一高い富士山 登頂回顧録

 日本一標高があり、日本一有名な山でもある富士山。これまでとんと縁がありませんでしたが、友人の協力も得ながら先日初登頂に成功しました。

既に何度も登っている友人から、「富士山は登る山ではなく、遠くから眺める山だよ」とは聞いておりました。

が、いざ自分の足で挑戦してみると、伝聞とは違う現実を目の当たりにして戸惑いの連続…。

改めて富士山の偉大さを噛みしめる、大変印象深い登山となりました。

他の山とは一味違う富士山

国内標高最高地点

富士山が注目されやすい理由の一つに、標高の高さ(3776メートル)があります。国内標高2位の北岳(3192メートル)とは、実に500メートル以上の差があるのです。標高に関しては横に並び立てる山がいないブッチギリの独走、これはインパクトがあります。


さらに独立峰であることも大きな理由の一つでしょう。

富士山は遠くから見ても一目瞭然の存在、東西南北から何処から見ても同じ形の美しい台形なのです。

前述の北岳は南アルプスの一部に属し隣の山と尾根で連なっている為、遠くからだと判別しにくいのです。
普段から登山をしている人ならそれなりの見極めもできるでしょうけど、一般人なら初見での判断はまず難しいのではないでしょうか。

今挙げた項目だけでも、富士山が際立った存在として認められる理由に十分なり得ると思います。


観光気分はご法度 登頂は想像以上のハードモード


さて前置きが長くなりましたが、多くの人の憧れ世界遺産の富士山。現在はすっかり観光地化しておりますが、流石に国内最高峰の山です。私も一筋縄では登頂できませんでした。

①高度順応はかなり厄介

 雲海が標高の高さを物語る

何が最大ネックになるかといえば、一にも二にも酸素の薄さです。普段からマラソンを行っていたり、アルプス系の山々を登っているような体力自慢の人でも、標高3200メートル以上の高地トレーニングができる場所は、富士山を除いて国内には存在しないのです。

 自分も高地順応の為に、あらかじめ標高約3000メートルの山でしっかり足馴らしをして臨んだはずでした。が…富士山の8合目近辺3400メートルを超えた直後から、急に息が続かなくなり立ちくらみを何度も起こす事態に至りました。

山頂に至るまでの登り区間、最後の1時間ほどは、『歩く(約1分)→息切れ→ヨタヨタ歩き→停止・立ちくらみ→休憩(約3~5分)→歩き再開』

ひたすらこれの繰り返しでした。
高山病がより悪化するまでには至らなかったのは、正に幸運の一言。体力だけではどうにもならない世界があると、心の底から痛感したのです。

②富士山の紫外線の強さ 半端なし

裸眼の人もいるが、サングラスはあった方がベター

高い山に登ると多少なりとも太陽との距離が縮まるので、体に浴びる紫外線が強くなると言われています。

いくら帽子を帽子をかぶっていたとしても、目から入る紫外線を防ぐには限界があるのです。

自分はこれまで北アルプスのような高山では、サングラスでも何とか対処できたこと、さらに紫外線の強さでも有名な豪州で1年間それなりに過ごせた経験もありました。

しかしながら今回は富士山登山を終えた翌日から目の周りが腫れてしまい、完治するまでに数日間を要しました。

正直富士山の紫外線を正直舐めていたという慢心は、今後に向けて良い教訓となりました。

 
後日、富士山に登った方からの投稿で、こんなハードな内容の動画を見つけました。確かに山の天気は運に大きく左右されるのですが…。
自分の時は本当にラッキーだったと実感。


③登山は下山時の方が怪我をしやすい

登山道は、けっこう岩がゴツゴツ



富士山の救助要請でよく耳にするのは、「 下山時に立ち往生・怪我」です。


登頂した後、登山口に向けての下山中に動けなくなる。もちろん登山キャリアの豊富な人でも陥いることがある事例ですが、大半は登山歴が浅さから来る、トレーニング不足(筋力不足)が大きな要因ではないかと推測されます。

疲労からの筋力低下によって、小さな石や段差に足を取られやすくなるのですが、下山時は特に顕著になりやすいのです。

実際に自分たちが山頂に向けて登っている際、山頂方面から下りてきた年配登山者が、すれ違い様に大きくよろめく場面に遭遇しました。

いくら自分たちも間近で見ていたといえ、急転直下の出来事。どうすることもできません。

手摺用ともいえるロープが運良くそばにあったので、男性はどうにかしがみついて態勢を立て直すことができたのですが、もしあのまま大きくバランスを崩していたら…。

男性は外傷を負っていただけでなく、近くにいた人(男性より下にいた人)も巻き添えを食っていた可能性があり、正に大惨事を引き起こしていたやもしれません。(それでも軽い落石が発生してました)

その後しばらくは、男性が下山する様子を上から眺めていましたが、何とも足取りがおぼつかない様子でとにかく危なっかしいのです。(いちおヘルメットはかぶってました)

北アルプスや八ヶ岳連峰といった同じ高地では、ほぼ見かけない光景でしたのでとにかくビックリでした!

実際の現場を見て、富士山での救助要請が多い理由もしごく納得できましたね。

自分でも簡単に富士山に登れそうという錯覚が、怪我や事故を引き起こすのだと思いました。

ここからはあくまで体験談を元にした持論です。

登山へのエントリーはあくまでも自己申告。例え体力にイマイチ自信が持てなかったとしても、富士山に挑戦することは可能です。

しかし実際に登山計画する際、ツアーでの参加を検討しようが、山小屋に泊まって2日間での登山を考えていようが、最低限1日6~8時間の登山に耐えうるぐらいの体力・筋力をつけてから、富士山には登ってもらいたいと思います。

 登山にもある程度の、心技体が要求されるのです。

普段、トレーニングを十分していても山では怪我をすることもあるのだから、準備不足で臨む登山は推して知るべしだと思います。


山を甘く見てはいけないのです。

まとめ

奥に見える剣ヶ峰と大迫力の火口部


普段、定期的に登山をしている自分でも富士山登頂は大変でした。これが経験値の低い人なら、尚のことです。

それでも富士山頂上からの眺めは素晴らしく、達成感も他の山とはひと味違う。五感を使って、独特の感覚を理解できたのでした。

メディアやSNSだけでは伝えきれていないハードルの高さ以外にも、多くの人が魅了されて止まなくなる山の魅了など、確かに富士山には色々な哲学が存在していたのです。

富士山はただの観光の山ではない(実際には霊山です)。これは間違いない事実だと思います。

ほんの少しだけ自身の成長を感じ取れた、そんな富士山登山でした。

経験より尊いものは無いのです。

ここまで ご愛読ありがとうございました。





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