見出し画像

バーデンバーデン音楽祭にベルリンフィルを行った時の写真

ベルリンフィルの新しい音楽監督キリル・ペトレンコの演奏を初めて聴いた。
前半はシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲でソリストはコパチンスカヤ。
中々猟奇的な曲だが衣装はそれと対比するような純白のワンピース。叫びのような嘆きのような旋律の一つ一つにも説得力を感じさせるような演奏。
舞台に立ってから靴を脱ぎ裸足になり飛び跳ねたりしながら何かに憑かれたかのように弾いていた。高度な集中力。
曲でシェーンベルクが何を言いたいのかわからなかったが、彼女はとても深いところで理解しているということはわかった。
間奏の間の微動だにしない立ち方や表情、全てが徹底したパフォーマンス。
アンコールではクラリネットのオッテンザマーが登場しデュオ楽しそうに吹いていた。かなり破天荒なコパチンスカヤに前に引っ張り出されたようなオッテンザマーは終始はにかんでいて好感が持てた。「4月は君の嘘」の主人公たちのように見えた。

メインはチャイコフスキー交響曲5番。
ペトレンコは本当に全てのフレーズの歌い方にまで指示を出しているというくらいに細かく、しかしダイナミックな指揮をしていた。
ファゴットのメロディーを聴きながらタクトを見ていると、本当に彼の指示する通りにきれいに吹いていて驚いた。
客席から棒を見ていてもどうフレージングしたいのかが手に取るように伝わる。それだけわかりやすい指揮。"見たままの音がでている"みたいなのを初めて体験した。
しかしペトレンコが演奏を全て強要していたりコントロールしようとしているようには見えず、オーケストラをとても尊重しているのも伝わってきた。そしてオーケストラが彼を100%受け入れて信じているようにも見えた。

1楽章が終わりみんなが咳をしている間、首席ホルンのドールはぼんやりと上を見上げていた。
緊張とリラックスが混ざっているような不思議な雰囲気。
ソロの入りは今まで録音も含めて聴いたことのないほど小さくて優しい音だった。その瞬間の緊張感はこれまでにも感じたことのないもの。観客全員が1人に引き込まれていくようなくう
アンドレもよく言っていた。
「どう吹いたら演奏しやすいかではなく、どう吹いたら音楽的かが先になければならない」
本当に素晴らしかった。

弦楽器がffになった時のあの音圧はベルリンフィルにしかない音。ペトレンコはその厚みさらに引き出してまとめ上げていた。
指揮者候補だった人の演奏も聴いたことがあるが、ペトレンコは比べ物にならないほど素晴らしくベルリンフィルと合っていた。
ラトルの時代とは全く違うオーケストラになっていくだろうな。観客としてとても楽しみ。


サポートをいただけたらうれしいです。帰国の渡航費の足しにします。