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アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉

今回は、アルフレッド・アドラー氏の言葉を小倉広氏が解説した書籍『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』をご紹介します。

『嫌われる勇気』で日本でも一躍有名となった、偉大な心理学者であり自己啓発の父とも言われるアルフレッド・アドラー(1870~1937年)。
本書はアドラー氏の言葉を、学術書や心理学の入門書とも異なる平易な言葉使いやシンプルな意味解釈によって、大変わかりやすく解説しています。
「人生は複雑ではなく極めてシンプルである」ことに気付かされる、そんな一冊です。

あらゆる人が日常生活を送る上で役に立つ考え方や行動を示唆する、極めて有用な内容が本書には詰まっています。
本書でアドラー心理学を学び、日々の生活の質を向上させていきましょう!


本書は下記の内容で構成されています。
1-10 すべてあなたが決めたこと――自己決定性について
11-19 そのままの自分を認めよ――劣等感について
20-29 感情には隠された目的がある――感情について
20-38 性格は今この瞬間に変えられる――ライフスタイルについて
39-46 あらゆる悩みは対人関係に行き着く――ライフタスクについて
47-56 家族こそが世界である――家族構成について
57-65 叱ってはいけない、ほめてもいけない――教育について
66-80 幸せになる唯一の方法は他社への貢献――共同体感覚について
81-96 困難を克服する勇気を持て――勇気について
97-100 他人の課題を背負ってはいけない――課題の分離について

以下、6つの言葉を抜粋してご紹介します。


1.「やる気がなくなった」のではない。「やる気をなくす」という決断を自分でしただけだ。
「変われない」のではない。「変われない」のではない。「変わらない」という決断を自分でしているだけだ。

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(「1-10 すべてあなたが決めたこと――自己決定性について」より)

刺激反応(Stimulus Response)モデルという考え方があります。
「叱られた」という刺激に対して、「腹が立つ」という反応(感情、思想、行動)がある、という単純な考え方です。
しかし、現代心理学ではこのような考え方を否定します。
刺激と反応の間に「認知」という主観がある。
それがアドラーを源流とする現代心理学の考え方です。

叱られた時にそれをどのように「認知」し「意味づける」かは、人それぞれです。
腹が立つ、という人もいれば、悲しみ落ち込む、という人もいるでしょう。
しかし、一方で「なにくそ!」と発憤する人もいれば、叱ってもらってありがたい、と感謝する人もいるでしょう。
人は「認知」や「意味づけ」を変えることで、いかようにでも反応、すなわち、思考、行動、感情を変えることができるのです。

「叱られたから腹が立ち、やる気がなくなった」のではありません。
叱られた時に数多くある「認知」と「意味づけ」の中からあなたが自分の意思で怒りを選択し、勝手に自分でそれを言い訳にしてやる気をなくしたのです。
上司のせいにしてはいけません。
すべては自分の選択の結果であり、いくらでも選択を変えることは可能なのです。


2.遺伝もトラウマもあなたを支配してはいない。
どんな過去であれ、未来は「今ここにいるあなた」が作るのだ。

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(「1-10 すべてあなたが決めたこと――自己決定性について」より)

ある殺人犯は「なぜ殺したのか?」と問われたときに「自分は親に捨てられたからだ」と答えました。
親に捨てられ、まともな家庭に育たなかったから自分は殺人犯になったのだ。
自分は悪くない、という理由です。
しかし、親に捨てられた子供がすべて殺人犯になるわけではありません。
中には、自分と同じような苦しみを次世代の孤児たちに味わわせなくない、と孤児の自立支援に奔走する人もいます。
同じ環境に育っても、人は自分の意思で、違う未来を選択できるのです。

しかし、私たちはついつい、現在の問題を過去のせいにしてしまいがちです。
「子供の頃、お母さんが私をおいて働いてばかりいたから、私はこんなに暗い性格になってしまった。私は悪くない。お母さんのせいだ。」
「家が裕福でなかったから大学に行けなかった。もしもっとお金に余裕があれば、今頃は大学を卒業してもっといい職業につけていたに違いない。」

このように過去の環境のせいにしてしまうのです。
しかし、それは単なる言い訳です。
過去の体験をバネにして未来を切り開く道を選ぶのか、ふてくされて被害者のふりをして言い訳だらけの人生を過ごすのか。
それを決めるのは自分です。
自分次第でいかようにでも進む道を決めることができるのです。


3.「私は〇〇である」
「世の中の人々は〇〇である」
「私は〇〇であらねばならない」
性格の根っこには、この3つの価値観がある。

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(「20-38 性格は今この瞬間に変えられる――ライフスタイルについて」より)

性格といっても、様々な定義が考えられるでしょう。
「明るい性格」「暗い性格」「人なつっこい性格」「人見知りな性格」など無数にバリュエーションがあるのではないでしょうか。
しかし、これらは表層的な浅いレベルの性格でしかありません。

これらの深層部には、あらゆる性格の根本とも言える3つの価値観、信念があるのです。
アドラーはそれをライフスタイルと呼びました。
その3つとは、
①自己概念(私は~である)
②世界像(世の中の人々は~である)
③自己理想(私は~であらねばならない)

という3つのセットです。
先の浅いレベルの性格は、これら①~③の組み合わせにより決まってくるのです。

例えば、以下のようなライフスタイル=3つのセットを持っている人がいたとしましょう。
①自己概念:私なんかには誰も興味を持っていない。
②世界像:人々はつまらない人間を相手にしない。
③自己理想:私は誰からも相手にされないので、目立たずに黙っている方がいい。
おそらく、この人は「明るい」というよりは「暗い」人であり、「人なつっこい」というよりは「人見知り」な人になるでしょう。

このように表層的な性格の根本には、ライフスタイルと呼ばれる3つのセットがあるのです。
ですから、「暗い」人は「明るく」なろうとするのではなく、①~③の3つのセットを変えることが必要です。
そして、自分を変えていく第一歩が、まずは自分自身のライフスタイル、3つのセットを知ることなのです。


4.使い続けたライフスタイルが支障をきたしても、人はそれを変えようとはしない。
現実をねじ曲げてでも、自分は正しいと思い込むのである。

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(「20-38 性格は今この瞬間に変えられる――ライフスタイルについて」より)

私たちは認知バイアスから逃れることはできません。
認知バイアスにより、自分にとって都合のいい情報だけを取り入れて、それ以外は例外として処理します。
また、自分にとって都合のいいように解釈をねじ曲げて、「これまでの考え方は正しかったのだ」と無理やり納得しようとするのです。
その方が楽であり、そうでないと不安になるからです。

「自分は人から愛されている」というライフスタイル(=性格)を持っている人は、たくさんの友だちを作り、「やはり自分は愛されている」とその信念を強めるでしょう。
逆に「自分は人から嫌われている」と思っている人は、友だちを作ろうとせず、結果的には友だちはできず「やはり自分は人から嫌われているんだ」とますますその信念を強くするでしょう。

私たちは常日頃から認知バイアスでねじ曲げて、世の中を自分の都合のいいように解釈していることを認識しておきましょう。


5.自分だけでなく、仲間の利益を大切にすること。
受け取るよりも多く、相手に与えること。
幸福になる唯一の道である。

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(「66-80 幸せになる唯一の方法は他社への貢献――共同体感覚について」より)

アドラーは「共同体感覚」と持つことの大切さを繰り返し述べました。
なぜならば、これこそが悩みから解放され、幸せになる唯一の道だからです。
そして、共同体感覚とは「他者に対する貢献」により形成されると言いました。
社会の中で居場所がないということは大変悲しいことです。
しかし、泣き言を言っても誰も助けてはくれません。
そうではなく、自ら居場所をつくるのです。
そのためには「他者へ貢献すること」から始めなくてはなりません。
そのことにより、他者から感謝され、そして他者からもお返しとして支援され、社会の中に居場所をつくっていくのです。

このように、アドラーの提唱した共同体感覚は、キリスト教などの宗教、および現代の自己啓発理論と極めて近い概念が含まれています。
そのため、アドラー心理学は、それまでの心理学者から「科学的でない」と批判を受けました。
しかし、健全な対人関係すなわち健全な人生を送るためには共同体感覚が不可欠です。
そして、現代の心理学では、アドラーの概念はすでに「常識」となっています。
「アドラーの理論は世の中よりも1世紀早すぎた」と言われる所以がここにあります。

「自分の居場所がない」と感じるのなら、「周りの人が自分をわかってくれない」と愚痴るのではなく、自分から周囲に貢献するのです。
そうすれば必ず居場所ができるはずです。


6.「他者は私を援助してくれる」
「私は他者に貢献できる」
「私は仲間の一員である」
この感覚がすべての困難からあなたを解放するだろう。

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(「66-80 幸せになる唯一の方法は他社への貢献――共同体感覚について」より)

「共同体感覚」はアドラー心理学の中核とも言える考え方です。
「アドラー心理学の実践上の目標は、『共同体感覚』の育成であり、『共同体感覚』が発展されればすべての困難から解放される」とアドラーは言っています。
そして、その「共同体感覚」は、以下の3つにより構成されています。

①周囲の人は私を援助してくれる=他者信頼
②私は周囲の人へ貢献できる=自己信頼
③(その結果として)私は共同体に居場所がある=所属感

の3つです。

さらに①の他者信頼と②の自己信頼は相互因果関係にあります。
①他者は私を援助してくれる、と感じるからこそ、私は貢献できるのです。
もし、周囲の人が私にとって敵である、と感じていたならば、おそらく私は恐怖のあまり貢献に踏み出すことが難しいでしょう。
なぜならば、親切で行ったことを拒否されたときに、私は大いに傷つくからです。

逆もまた真なりです。
つまり②自分は他者に貢献できる、と感じていれば、私は自信を持って他者に貢献できるのです。
もしも、自己信頼がなく、自分なんて人に貢献することはできない、と思っていたとしても、貢献に踏み出すことはできないでしょう。

では①も②もない人はどうすればいいのでしょうか。
答えは先に述べた通り。
あなたから始めるのです。
見返りを求めず、承認も求めず。
そこから始めるのです。


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以上、本書に収録されたアドラーの言葉のほんの一部のみをご紹介しました。
個人的には、ストーリー仕立ての『嫌われる勇気』より、テーマ別にまとめられた本書の方が、明確かつ後から見返しやすく好きです。
また、家族構成や教育に関するテーマもあり、子育て世代の私にとって大変興味深く勉強になる内容でした。

全ての人に強くおススメできる一冊です。


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