MYP-Math-測定が生み出す芸術の探究-
岐阜市にあるサニーサイドインターナショナルスクールでの中等部における数学の実践についてまとめていきます。最終的には、4年間のカリキュラムを作っていくための備忘録として実践を紹介できたらと思います。このnoteを通して「世の中を数学的に見ることができる人を育成すること。」を目指していくプロセスをシェアできたらと思います。
Unit1では「数の起源の探究」を行い、いよいよUnit2では「現代社会で起きている不平等や格差を数字で明らかにする探究」を実施しました。かなり長い探究でした!
Unit3でも数学科で大切にしたいことは同じです。
Unit3では、MYPの数学の枠組みにある、4つの学習分野の1つである「幾何と三角法」の分野を行っていきます。
「なぜ、私たちはを幾何と三角法学ぶのか?」
私たちは、日常生活していると様々なモノと出会い、「美しさ」も商品を購入する判断材料の1つにしていると思います。私たちが無意識に選択して購入している製品も背景にはプロダクトのデザイナーがいて、様々な観点から測定されて商品が作られています。具体的にはデジタルカメラも様々な角度から設計図が書かれていたりしています。更に、世の中のデザインされたものを見てみると、実は自分たちが知っている図形を結合させて作られているものがほとんどです。このユニットでは測定によって定義された図形が芸術性や創造性を生み出すことを探究していきます。
Unit3のカリキュラム内容
こちらが、Unit3のカリキュラムの概要になります。
探究の流れ
具体的な探究の流れはこちらです。
導入
導入では、まずは、Statement of inquiryにある「芸術性(美)」についての探究を行うことから始まりました。ここでは、私たちが無意識に美しいと感じると言われている「黄金比」や「白銀比」というものに対して本当に「美しさ」を感じるのかを探っていきました。この時は、まだ多くの子どもたちは白銀比や黄金比については知らない状態です。早速身の周りや学校を歩いて、美しい、或いはしっくりくる長方形を探して測定する活動を行いました。
そして、測定を行ったものの比率を縦の長さ(短い方)を1として求めていきました。結果をグラフにすると以下のようになりました。
不思議なことに、誘導することなく1:1.4(白銀比)と1:1.6(黄金比)の比率が多いことが分かりました。
展開1-1 コピー用紙の美しさの探究
アクティビティとしてはA7からA0とB7からB0までの縦と横の長さを計測していく学習活動を実際にコピー用紙を繋げて行いました。測定結果からある法則を発見していました。縦と横の長さが、1つ小さなサイズになると、縦の長さが元の横の長さとなり、横の長さは縦の長さと同じになるのが繰り返されることを発見していました。
実際に黄金比(1:1.618)の長方形を作成し、半分におった時に黄金比が繰り返されるのかを測定し、黄金比では同じ比率が繰り返されず、白銀比のみが同じ比率が繰り返されることを発見していました。ここに白銀比がもつ特別な特徴を見出していました。
展開1-2 白銀比に出てくる無限に続く数の正体とは何か?
白銀比に出てくる1:1.41421356...の無限に続いていく数(無理数)についての導入を行いました。同じ数をかけて2になる数を電卓を使って調査をする中で、白銀比に出てきた数が出てきたところで、平方根と無理数の考え方の導入を行いました。「なぜ平方根が便利なのか?」について実際に必要感が出てきたときに導入することで数の概念の拡張を行いました。
展開2-1 投影図って?
投影図の考え方の導入として、教室にある身近なものから立面図でクイズを行いました。立面図だけを見せて、教室の中にあるものを見つける活動を行いました。子どもたちからは「この情報だけでは分からない。」「別の角度からみた図も欲しい。」という考えも出てきました。そして、全てのクイズに答えたところで平面図(正面から見た図)も提示し、投影図という考え方の導入を行いました。そして、立面図と平面図で見え方が大きく異なりそうな身の回りのものを投影図で書くワークを行いました。
展開2-2 プロダクトデザインって?
身の回りのプロダクトは様々な角度から測定されてデザインされていることを伝え、実際に自分たちの身の回りのあるものを6つの角度から描くワークを行い、これから行う立体のモデリングの準備ワークを行いました。
展開2-3 幾何学的モデリングって?
プログラミングの講師をしている方をゲストとして招いて、Thinkercadを用いた基本的なモデリングの基本スキルにフォーカスした学習活動を行いました。最初の活動としては、身の回りにあるコップの測定を行い投影図を書きました。そして、基本的な図形を組み合わせてコップの製作を行い、コップの制作が終わった人から「6つの角度から描いたプロダクトデザインの図」をThinkercadで実際にモデリングする活動に入っていきました。
評価課題
ミニ展覧会
この生徒は作品のテーマを「自問自答」としていました。この展覧会では、相互に評価をするのではなく、芸術作品を「鑑賞する」視点で自分が感じたことをコメントに書く活動を行いました。
評価課題
また、自由鑑賞の後はMYPの数学の評価基準に則り、コミュニケーションの部分で評価課題を出しました。課題は「モデリングした立体のつくるプロセスについて第三者が分かるように適切な数学的言語を用いて説明することができる」ことを提示しました。
いよいよ次のユニット4が今年度の最終ユニットになります。次回のユニットは「代数」になります。
子どもたちが「世の中を数学的に見ることができる人を育成すること。」をミッションにした数学のカリキュラムづくりは続いていいます。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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