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PYPにおける学びの先にあるアクション

今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学4年生の担任をしています。このブログでは、教科横断的な学びをどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。


◎ こんな疑問を感じている人に読んで欲しい!
・教科の枠を超えた学びってなんだろう?
・学校での学びの先にある小さなアクションを考えたい!

Unit3のカリキュラム

【Centarl idea】
水の利用と管理は、地域の開発と持続可能性に影響を与える
【重要概念】原因、関連、責任
【教科の枠を超えたテーマ】
この地球を共有すること
【探究の流れ】
・生命の資源としての水の重要性
・水の利用と使用に対する地理的影響
・コミュニティが持続的に水を管理・使用するさまざまな方法
【ATL】
・思考スキル

導入 【数学】水の重要性を計算で紐解く

最初の導入として、生命の資源としての水の重要性を、私たちが普段どれ位の水を使用しているのかを計算することでジブンゴトにしていきました。具体的には、私たちが学んでいるサニーサイドインターナショナルでは、1日でどれ位の水を使用しているのかを概算で計算を行いました。

・手洗いで使用する水
・トイレで使用する水
・プールの水
・料理で使用する水
・飲料水etc...

ここでは、小学4年生の「およその数(計算の見積もり)」と小学校5年生の「単位量当たりの大きさ」で学習する内容を重ねて、1人あたりのおおよその使用量をリサーチして、生徒数でかけることで学校全体の水の使用量を概算する学習活動を行いました。更に、プールで使用している水の量を調査するために、プールの直径を測り、容積を測る子も出てきました。そして、全ての水の使用量を計算して、実際の答え合わせは水道管のメーターを見て行いました。ここでも、単位が1㎥と書かれているのを見て、1㎡というこれまでに学習した面積の単位を想起しながら、実際に1㎥の大きさをつくり、ここに1Lの牛乳パックが何個入るかを敷き詰めて1㎥が1000Lという量であることを感覚でも掴んでいる子も出てきました。実際に水道管のメーターで使用量を見て、自分たちがこれだけ多くの水を使っていることに驚いていました。

展開1 【社会】水はどこへ行くのか?

下水処理場へのフィールドトリップ

「では、私たちが使った沢山の水はどこに行くのか?」
子どもたちは、水の行方について考えたことはなく「そのまま流れていたら街が臭くなってしまうから何か綺麗にする場所があるのではないか?」という仮説が生まれていました。そして、実際に市の下水処理場に見学にいき、排水をきれいにする仕組みについて学び、下水処理場は、私たちの暮らしに必要なものなので公共のサービスとして税金も活用しながら市が管理していることをUnit1で学習した政治のユニットと繋げて考えを広げることができていました。

展開2 【理科】泥水と海水のろか実験

水は山から来るのか?海から来るのか?

「では、私たちが使用している水はどこから来るのか?」
水の排水の仕組みについては学習したので、次に私たちが使用している水道水はどこからやってくるのかという疑問を考えていきました。
子どもたちの中で、水は山から来るという意見と海から来る意見の2つで分かれており、実際に山から流れてくる泥水と海水をろ過する実験を通して、自分たちの立てた仮説を検証していきました。

泥水と海水を濾過する実験

泥水を濾過する実験は、実際に学校近くの山に行き自然の濾過する仕組みを観察して自然のもので材料を集めて濾過装置の設計図を書いて、ろ過装置をつくり濾過前と濾過後での変化を比較しました。
さらに、海水を濾過する実験では海水の塩分濃度をリサーチし、実際の塩分濃度の海水を計算して作るところからスタートし、濾過実験を行いました。実験後は、思った以上に海水を濾過することの難しさを感じており、それでも泥水も海水も濾過することはできると考え、住んでいる土地に影響するのではないかという考えも出てきました。

展開3 【社会】水はどこから来るのか?

水源地へのフィールドトリップ

「では、岐阜市では水道水の水の源泉はどこなのか?」
子どもたちの中で、岐阜市は長良川が流れているので、山から川に流れ出てくるのではないかという意見が多く、それが浄水場できれいにされて私たちが使用している水道から出てくると予想をしていました。しかし、実際に見学に行くと、本に書いてある一般的な情報とは違う施設と出会うことになります。
「実は浄水場は岐阜市にはないんです。」「え….?????」子どもたちは驚きます。「岐阜市は良質な水に恵まれており、最低限の消毒のみで配水することができます。だから他の地域にあるような浄水場は岐阜市にはありません。」岐阜市では、きれいな水が循環しているのは地理的な影響を受けていることを学ぶことができました。

展開4 【理科】水の環境調査

岐阜市が主催の出前講座(長良川の環境調査)

「本当に長良川の水はきれいなのか?」
次に私たちの水道水の源泉でもある長良川の水を環境調査する活動を行いました。調査方法としては、化学調査、生物調査、感覚調査の3つで行いました。化学調査では、CODとphで調査を行い、生物調査では川に生息している生き物から水のきれいさを分析し、感覚調査では匂いや色を観察することで評価を行いました。調査をすると、長良川の水質がきれいであることがわかりましたが、その一方で最近ではゴミを捨てる人もいたり、台所から油を流したりする人がいて、川の水質も変わっていく可能性があることを危惧しているリアルな話は子どもたちにとっても印象的だったのではないかなと思います。

総括的評価 ポスターセッション

Unit3総括課題の評価基準

子どもたちは、これまでに学んできたことを振り返りながら、自由な表現方法で、私たちが住んでいる岐阜市での水の循環方法、水の管理方法、水をきれいに管理するための個人やコミュニティの責任についてまとめていきました。リサーチする内容の評価基準は示し、リサーチした方法を表現する方法は自由にしました。

生徒の最終ポスターセッション

アクション 【国語】ディスカッション

ディスカッションテーマ

最後に、ユニットで学んでことをアクションに活かす場として、きれいな水の循環につながるアクションとして自分たちにできるアクションをディスカッションを通して考える活動を行いました。
「なぜ、行動を基本要素に含まれるのか?」

PYPでは、教育は知識を与えるだけではなく、社会的責任を伴った行動、思いやりのある、正しい行動までもが教えられるべきものだと考えられています。私たちは、PYPの学習プロセスの結果として、探究の成功が児童による自主的で責任を伴った行動につながる、という明確な期待を掲げています。この行動は年齢層によってさまざまに現れ、児童の学習を発展させ、あるいはより広い社会的な影響を与える可能性をもつものです。PYP校 は、すべての児童に対して、世界で、そして世界に変化をもたらすために、行動することを選択する機会と力自分の行動を決定する機会と力、そしてその行動の振り返りを行う機会と力を与えることができます。これは容易なことではありませんが、学校はその役割を果たすべきです。

PYPのつくりかた(pg.29)
PYPのつくりかた「行動サイクル」(pg.29-30)

そこで出てきたアイデアが長良川のクリーンアップ作戦でした。子どもたちはフィールドトリップを通して学んできた、岐阜市の水がきれいな循環ができている一方で、実際はゴミが捨てられており、それが海に流れて海の生き物や生態系に影響を与えていることを学んだことから、長良川をきれいにする活動をディスカッションを通して決めました。ディスカッションでは、書記とファシリテーター役を立てて議論を進めることができました。

アクション クリーンアップPJ

長良川のクリーンアッププロジェクトでは、ただゴミを拾うだけでなく、落ちているゴミを分析するためにゴミビンゴに取り組みながらゴミ拾いを行いました。子どもたちは、ゴミを拾う中で、思った以上に様々なゴミが落ちていることに気づいたり、ゴミを拾うときにゴミが集中しているのは車道に近いところで信号を待っている間にゴミを捨てているのではないかと行動分析をしている子もいました。「思ったよりもゴミ拾いって頭を使う。」と拾いながら呟いている子もいました。そして、ゴミ拾いを終えた後の振り返りで「ゴミ博物館をしたい。」というアイデアが出てきて、今年度中にゴミ博物館開催に向けて動き出します。
このユニットでは、探究の成果として、児童による自主的で責任を伴った行動につながるアクションが生まれているように思えました。改めて、学校で学んだことを生かした奉仕活動を子どもたちが選択して行動できる機会を作っていく重要性を感じました。

参考文献

PYPのつくりかた - 初等教育のための国際教育カリキュラムの枠組み -(リンク

いつも読んでいただきありがとうございます。
もっと詳細を知りたい方はブログの方に詳細をまとめてありますので、こちらを見て頂けたらと思います。



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