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地域づくりから平和構築を考える

私は、2020年の4月から2023年の3月まで鹿児島県の奄美群島にある沖永良部島で地域おこし協力隊として、学校や行政と協働しながら教育を切り口にまちづくりに関する事業(島留学、子ども第三の居場所事業etc)に携わっていました。この3年間での学びが私の今後の人生にとっても大切な気づきを得ることができたので、改めて島で3年間過ごす中で考えてきたことの言語化にチャレンジしていきます。

◎こんなあなたに読んでほしい
・これから地域に移住しようと考えている
・地域で何かにチャレンジしたいと考えている
・教育を切り口に地域で何かにチェレンジしてみたい
・実際に地域に移住して人間関係や協同の面で困っているetc…

今回のnoteのテーマは「平和構築」です。かなり大きなテーマから入っていくのですが、複数回に渡って島で学んだこと、気づいたことをnoteにまとめていくので、読んで頂けると嬉しいです。

「そもそもなぜ、平和構築というキーワードなのか?」
私自身も地域おこし協力隊としての任期が始まるまでは、平和構築というキーワードに繋がるとは思っていなかったのですが、この3年間は様々なConflictの連続でした。地域おこし協力隊として着任したことで、「地域をおこす」というミッションと、その地域にある文化やアイデンティティを大切にしながらどのようにアクションに起こしていくのかが実は求められていました。(最初は、全然理解していませんでした。)

上の図は、5つの対立への対処するスタイルを表しています。横軸(cooperativeness=協調性)の度合いを表しており、縦軸が(assertiveness=自己主張)の度合いを表しています。対立と聞くとネガティブなイメージを持つ方も多いと思うのですが、対立が起きているということは、2つ以上の立場のそれぞれが意見が表明できている状態なので、協働で意思決定をするプロセスにおいて意見の違いで対立が起きることは自然なことでもあります。実際に地域おこし協力隊は、民間的な視点を活かしながら行政や学校、地域と仕事を行うので、それぞれの考え方や価値観の違いで意見が衝突するのは自然なことだと今だからこそ思えます。当時は、なぜこんなにも意見の違いでぶつかるのか分からず、苦しかったのですが、研修を重ねることで行政や学校と少しづつ関係性を築きながら共に意思決定する機会が少しづつ増えてきました。

さて、この図の簡単な解説を実際の経験を元に解説を行なっていきます。この5つは、どれが良くてどれが悪いというのではなく、その対立の状況に応じて自分たちの対処する立場を変えていく必要があります。

参考:さまざまな状況や性格に応じた 5 つの対立スタイルを理解する(リンク

回避(Avoiding)
対立回避スタイルは対立を完全に回避します。このスタイルを使用する人は対立のどちらの側にも立たず、対立を無視することを選択します。
順応(Accomodating)
順応的な対立管理スタイルでは、他人のニーズに応えるために自分のニーズを犠牲にします。他人の望みを叶えるために、自分の望みやニーズを放棄します。
妥協(Compromising)
妥協的な紛争管理スタイルは、議論の双方の意見を部分的に満足させようとするものであり、対立する双方が妥当な妥協点を見つけるために調整する必要があることを意味します。
協力(Collaborating)
協力的対立スタイルは、対立に関与するすべての当事者が完全に満足する解決策を見つけようとします。双方が妥協しなければならない妥協点を見つけるのではなく、このスタイルは双方が相互に受け入れられる win-win の解決策を見つけようとします。
競争(Competing)
競合的紛争管理スタイルでは、妥協したり、関係者の視点に立ったりすることを拒否します。このスタイルを選択する人は、確固とした姿勢を取り、望むものを手に入れるまで譲歩しません。

参考:さまざまな状況や性格に応じた 5 つの対立スタイルを理解する(リンク

回避(Avoiding)の事例

最初に行ったえらぶゆりの島留学の事業では、行政の中でも島留学を反対する立場(=学校の統廃合を考えている)と島留学を賛成する立場(=地域の文化を守る)で分かれていました。正直、行政の立場の違いに地域おこし協力隊の私たちが介入しても結果を変えることは難しく、ここでは「えらぶゆりの島留学事業」の提案までを行いました。その後の行政の意思決定プロセスは見守ることになります。結果的には、町の方針でえらぶゆりの島留学を新規事業で進めることになり、この事業から私は地域おこし協力隊してジョインすることになりました。

順応(Accomodating)

地域おこし協力隊として着任したのは、島の小規模で異年齢学級での教育環境を生かした教育を推進できたらと思っていました。そこで、私は地域おこし協力隊をしながら、実際に島留学を行う学校現場との信頼関係の構築も兼ねて学習支援員としてサポートに入ることになりました。私たちの意図としては、「複式学級の魅力化」のサポートができたらと思っていたのですが、私に与えられた役職は反対の「複式解消支援員」でした。なんと私が入ることで、魅力的だと思っていた複式学級が解消されることになってしまいました。これについては、もう決定事項でもあり、学校現場との信頼関係を構築が目的だったので、学校現場のニーズを受け取り、複式解消支援員としてサポートが始まりました。

妥協(Compromising)

地域おこし協力隊の基本的なスタンスとしては、Collaboratingの状態を目指して事業計画の設計を行なっていきます。しかし、時には妥協点をお互いに探さなければならない時もあります。一番の出来事は、「私の働き方」をめぐる妥協点でした。私は、学校教育課配属の地域おこし協力隊でもあり、一般社団法人えらぶ手帖の役員でもありました。元々は、学校教育課では担えない教育の魅力化につながることをミッションに着任したのですが、いざ着任すると学校教育課に籍があることで私の勤務場所についても妥協点を探る必要がありました。民間側としては、必要に応じて学校教育課に出勤し、基本的には地域を拠点にした活動を希望していました。しかし、学校教育課としては籍が学校教育課にあるので、朝は学校教育課に出勤して、必要に応じて地域で活動を行うものでした。ここでの妥協点としては、午前中は学校教育課に出勤し(必要に応じて地域で活動)し、午後は地域を拠点にした活動をする妥協点で落ち着きました。

競争(Competing)

しかし、時には妥協点を探ることもできない場面もあります。

町の地域おこし協力隊で着任しながら、環境省の国立公園の保全事業で、外来種を駆除する活動の委託を受けていました。しかし、その町の町花が実は外来種で、地域の活動で外来種である町花を国立公園に植樹をする行事が行われる企画があることを知りました。

論理的に考えると、国立公園に外来種を植えることは止めなければいけません。しかし、共感的に考えると町花が決められたときは、もちろん外来種ではなく、町の人にとってアイデンティティの一部でもあります。この場合、どう振る舞うのがいいのでしょうか?地域で活動していると、論理的理解と共感的理解のバランスが常に問われ、これも価値観が異なる人と協働していくために必要な考え方になりますが、分かっていても実践するのが難しいなと感じていました。この時ばかりは、議員さんに対しても確固たる信念を貫き通した出来事でした。

協力(Collaborating)

とはいえ、いつも競争している訳でもなく、基本的なスタンスとしてはコラボレーション(協働)できる状態を目指して事業設計を行なっていきます。3年間の任期の中で一番行政や学校と協働する事業になったのが日本財団の子ども第三の居場所事業になります。この事業では、私たちの目指すビジョンと町のビジョン、地域の方の想い、地域の子どもたちの想いを大切にするために、丁寧にヒアリングを行いながら事業設計を行いました。そして、ついに地域の空き家を改修して子ども第三の居場所事業としてe.lab<みんなのおうち>をオープンすることができました。

みんなのおうちに関する記事はこちらをご覧ください。

さて、このように地域で何か新しい事業を進めていくと、様々な場面で色々な対立と出会います。今思い返すと、島で活動しているときは、「人と人で生きている」感覚が日々ありました。同じ地域に住んでいるのに、こんなにもぶつかるのかと思うほどずっと何かしらの対立の間にいました。多様性と聞くと、国家間の言語や文化の違いを思い浮かべると思いますが、人口が5000人程の小さな島、もっというと家族間にもそれぞれ文化があって、身近に文化や価値観の違いを感じる場面はたくさんあります。

しかし、現代では近所での付き合いがなくなったり、地域コミュニティでの活動が少なくなったり、無人レジやタブレットでの注文などでそもそも人とコミュニケーションをしなくても生活ができるようにんばっています。人と関わらなくても生活ができるようになっているので、結果的に日々の対立の数は減ったかもしれません。しかし、これって本当に平和な世の中に近づいているのでしょうか。

今私は暮らしの中で「対立」という状態にいることが少なくなりました。なぜなら、学校では比較的同じ価値観(教育観)を持っている方と同じ共通言語を用いながら働き、家では一人暮らしで、暮らしの中で自分とは異なる価値観とぶつかることがほとんどなくなりました。

でも、不思議なことに、島に住んでいる時の方が家では自由に生活ができていました。島では、ピアノの音が聞こえてきたり、子どもの声が聞こえてきたり、三味線の音が聞こえてきたり。でも日々の近所付き合いがあるから、生活の中の様々な音が雑音にならなかったなと。日々のコミュニケーションがあるから、寧ろ雑音がコミュニケーションのきっかけになる。三味線の音を聞いて、家に近所の人がやってくる。「昨日の夜に三味線弾いてたね!上手くなっているね!」苦情ではなく、それをきっかけにコミュニケーションになっていました。今は、どこに住むにしても、マンションであっても楽器の使用が禁止されています。

島で学んだことは、日常のコミュニケーションがお互いを知ることにつながり、お互いを許せることに繋がるんだなと。日々コミュニケーションが取れているからこそ、お互いに我慢をする必要がないんだろうなと。

もちろん、島民と移住者の間には力関係の差はありますが、それでも人と人とで繋がっている感覚がどこかにあったからこの島で何かやりたいと思えたんだと思います。

これからのnoteで書きそうなテーマがこちらです。

#多様性 #遊ぶように学びながら暮らす #共に暮らす
共同生活をすることで、各家庭の多様性やその地域の文化の違いなどを感じ、他者と共存して暮らすことを親子一緒に学んでいく場づくりを大事にしたい
▶︎ リンク

#共同体感覚
異なる価値観を持つ人とも共同体感覚を育むことで共に未来を育むことができる

#自由 #アイデンティティ
その人/地域のアイデンティティを尊重することで、誰もが自由に生きていく最初のきっかけをつかむことができる。
Peace building

#自他境界 #境界線 #自己理解
他者と関わり、自他の境界線を知ることで自分自身を知ることができる。

これって、全て平和構築に繋がっている活動だったんだなと。ここまで読んでいただきありがとうございます。


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