Vol.2 フィンランドの小学生と考えてみた「良い学習環境とは?」
このnoteでは、2024年3月25日から28日までの4日間でフィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。
今回のnoteでは、「フィンランドの小学生の目線」で「フィンランドと日本の教育を比較する中で見えてきたこと」について考察をしていきます。
この授業をするきっかけとなったのは、フィンランドの小学校の校長先生から「子どもたち(小学3-6年生)が日本とフィンランドの教育の違いを知れる授業をしてほしい」とリクエストがあったことから始まりました。
私が授業を通して伝えたかったのは、「異なる世界を知ることで自分を取り囲む世界の理解に繋がる」ことです。人は自分が置かれている同じ環境に長くいると、自分が今置かれている環境や状況について客観的に知ることは難しくなると思います。しかし、自分とは違う考えを持っている人と話をしたり、自分がいる環境とは異なる世界の話を聞くことで、違いを見つけることができ、自分自身の身の回りの世界の理解に繋がることもあると思います。
今回の授業では、日本とフィンランドの学習環境の違いについて様々な事例を通して一緒に考えていきました。
まずは学校のルールについてです。日本の学校には、学校によって様々なルールがあるので、クイズ形式でいくつかルールを取り上げてフィンランドの学校のルールと比較をしながらディスカッションを行いました。
・スマホの取り扱い方
まずはスマホの取り扱い方についてです。フィンランドの学校でも、子どもを取り囲む環境の1つとしてスマホやSNSが子どもたちに影響を与えていると先生達は話をしていました。私が初めてフィンランドを訪れた6年前は、スマホについて特にルールが定められておらず、スマホを文房具の1つとして授業でも使っており、休み時間もスマホを自由に使っていました。それが、徐々に学校の時間(8時から12時)はスマホを使ってはいけないルールになり、今は先生の許可がないとスマホを学校で使えないルールに徐々に変化をしていました。日本の学校では、そもそも学校にスマホを持っていくことができない学校が多いことをシェアすると、子どもたちも「えっ」という反応でした。
・夏休みなどの休日の外出時間の規定
夏休みなどの休日の外出時間の規定についてです。これは、私の小学生の頃にもあり、鹿児島県では今でも夏休みにこのような規定がある地域もあります。子どもたちが外出する時間が、学校のルールで定められていることに児童も先生も驚いていました。このルールは学校のルールの一部で、スマホの使い方なども学校で規定していることがあることを話すと、日本の学校の責任範囲の広さに驚いており、子どもたちも休日や放課後の過ごし方に学校のルールが適用されることに驚いている様子でした。
・服装(靴下等)の規定
学校に身につけていく服装に規定があることに一番驚いていました。今でも日本の学校には、今でも無地の靴下、華美でないもの、白を基調としたもの等服装1つをとっても様々なルールが規定されているところがあります。この話をすると、教室内の机も揃っているし、集会でも綺麗に整列している写真から、日本には「揃える」考え方があることに気づいていました。「フィンランドでは日本のように綺麗に整列することはできないと思う」と先生方も話していました。その一方で「なぜそのような靴下を揃えるルールがあるのか?」と聞かれ、誰一人として日本人がその理由について答えられない状況にも驚いていました。理由を理解していないまま、学校のルールに従ってきたことに気付かされる時間でした。フィンランドでは、合理性が重要視されているので、子どもたちに校則の理由を伝えることを大切にしています。
次に学習環境について子どもたちとディスカッションを行いました。
「人数が多いのと少ないのとではどちらがいいと思うのか?」と言う問いかけについては、40人全ての児童が今くらいの20人前後の人数が良いと話をしていました。その理由としては、教室の一人当たりの空間を広く使うことができると話をしていました。
「フィンランドと日本の教室環境、どちらで学習をしたいのか?」と言う問いかけに対しては、8割くらいの児童がフィンランドの学習環境を選択し、2割くらいの児童は日本の教室環境がいいと話していました。
フィンランドの子どもたちの中には、日本の教室環境に良さのようなものを見出していることが意外でしたが、多くの子どもたちにとってフィンランドの教室環境にある「自分に合った環境を選べること」や「パーソナルスペースが広いこと」は魅力のようでした。しかし、日本の給食の写真を見せるとメニューの種類が多くて、羨ましがっている子もいました。
こちらがフィンランドの教室環境になります。1つの教室に何種類の椅子を見つけることができるでしょうか?
木の固定された椅子、ローラーのついた椅子、バランスチェア、ソフア、両サイドが仕切られたソファーのような椅子、背もたれのある椅子、背もたれのない椅子、クッション。と言うように何種類ものの椅子が置かれていました。6年前は、試験的に教室の中に様々な種類の椅子が取り入れられ、その効果は大学で研究中という声を聞いていたのですが、今では現場の先生が様々な椅子を取り入れることで様々な特性をもった子どもたちが一緒に学べる環境として必要であることを伝えてくれました。教室内で座席は決まっているけど、椅子は決まっていないことも面白いなと。
改めて感じたのは、全てを自由にするのではなく、大人が適切に環境設定に介入していることに教員としての役割を感じました。そのため、教師は子どもの様子を観察するスキルが必要で、観察によって見えてきたことを元に子どもと対話を重ね、一緒により良い環境を作っていくことを大切にしているように見えました。このような教員の姿勢はPISAの学力調査の結果では見えず、全ての子どもが安心して学校に通えている状況がフィンランドで実現しているのは学校(教員)が子どもたち一人一人が安心して学習できる環境づくりにかなり力を入れているからだと思いました。
今回の授業では、日本の教育がマイナスでフィンランドの教育がプラスであるということではなく、それぞれの国の教育には、それぞれの社会のカルチャーも影響しており、その先にお互いの教育には違うところも似ているところもあることを感じてもらえたらと思いました。
日本でも、子どもたちに世界の教育環境と日本の教育環境を比較することで、「子ども目線で良い学習環境」を一緒に考えるようなきっかけを考える機会もつくっていけたら面白そうだと思いました。
実は昨年ウィーケンという探究的な学びを行っているオンラインの学校で『世界の教育最前線!やりたいことを叶える小学校を考える(リンク)』をテーマに話をしたことを思い出しました。今年度もお声がけを頂き、もしかすると授業をさせて頂けそうなので、フィンランドの子どもたちの声を届けながら、日本の学校に通う小学生の声も聞けることが楽しみです。
子どもの声が学習環境に反映されるフィンランドの小学校。大人の環境設定だけでなく、子ども目線での環境設定の両方のバランスが大事なんだろうなと思いました。
いつも読んでいただきありがとうございます。
moimoi!
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