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書評 村上春樹 著「ねじまき鳥クロニクル」

Audibleに入ってきたので昨年聞いた。基本的に村上春樹作品に対しては私は好意的に見ている。そのため、この作品もそれなりに楽しめた。

ただ1点気になったのは、作中の人物 綿谷昇に対してである。

Wikipediaから彼の紹介を引用する。

綿谷昇(ワタヤ ノボル)
久美子の兄。東京大学経済学部卒業。イェール大学大学院に2年間留学したのち、東大の大学院に戻り研究者となる。離婚歴があるが、現在は独身。伯父の綿谷義孝は戦時中、陸軍参謀本部に勤め、公職追放が解かれたのち参議院議員と衆議院議員を歴任した。
34歳のときに出版した経済学の専門書が批評家から絶賛され、マスメディアの寵児となる。伯父の地盤を継いで政界への進出を図る。

Wikipedia

この作品が発表されたのが、1994年である。もしこの時期を過ごさずにこの作品を読んだ場合、どういった印象を受けるのだろうか。それはリアルタイムでこの時期、または作中の時期を過ごしていなければ感じられないリアルがあるように聞きながら思えたからだ。

綿谷昇の後半の部分「34歳のときに出版した経済学の専門書が批評家から絶賛され、マスメディアの寵児となる。」を聴いた瞬間に、『浅田彰』氏をベースにして作られたキャラクターなのかなと感じ、先ほどググってみても同じことを考えている人はいるようです。「34歳のときに出版した経済学の専門書」とは「構造と力」であると考えてしまうのは、その当時の浅田彰さんの状況と酷似しているからです。

「構造と力」は1983年に出版されました。内容はフランス近代の哲学をうまくまとめた作品になります。

レヴィ=ストロースらの構造主義の方法を定位したうえでポスト構造主義の展望を示し、ドゥルーズ=ガタリらの理論からその理路を探る。現代思想の鮮明な地図を描き、当時26歳の著者による大胆かつ軽妙な筆致で時代の空気を捉えて空前のベストセラーとなった本書。1983年の刊行から現在まで多くの読者に読まれ、刷を重ねている。

構造と力

私も10年くらい前に読みましたが、クラインの壺が出てきた事くらいしか思い出せません。「逃走論―スキゾ・キッズの冒険」の微分の考え方の方がまだ覚えています。両方とももう一度読んでみたいですね。

さて、村上春樹作品の主人公は、村上春樹の一部であると思っています。「ねじまき鳥クロニクル」の岡田亨も彼の分身であると思っています。

綿谷昇は本当に扱い方が酷い。もっと言うならば、なぜ村上春樹さんは、浅田彰さんに対して敵意を持っているのか。それが気になった作品でした。

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