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世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える⑥~半面中間・ベースライン内1m~

こんにちは、トモヒトです。

今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。



前提条件

ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。

ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間

ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。

$$ t= 0.25 + (sprint  length / 10) $$

この式は、以下を想定したものです。

  • 反応時間=0.25秒

  • スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕

ショットの条件

  • ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない

  • ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする

エースの条件

エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。


結果

それでは、結果についてみていきます。

このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。

  • ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス

  • クロス:シングルスサイドラインからの距離

shot widthの定義

今回は、シングルスサイドラインから2m内側・かつベースライン内1mからのショットを考えてみます。
これは、コート半面の中間付近で、ベースラインの1m前方に当たります。

【ストレート方向】

ショット到達時間(ストレート方向/打点=0.6m)
ショット到達時間(ストレート方向/打点=1.5m)

このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.916mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=-2.0: 0.7707s (0.25 + (5.207 / 10))

  • shot width=-1.5: 0.7163s (0.25 + (4.663 / 10))

  • shot width=-1.0: 0.6619s (0.25 + (4.119 / 10))

  • shot width=-0.5: 0.6075s (0.25 + (3.575 / 10))

  • shot width=0.0: 0.5531s (0.25 + (3.031 / 10))

これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。

  • shot width=-2.0 => 打点=0.6m: 140km/h / 打点=1.5m: 140km/h

  • shot width=-1.5 => 打点=0.6m: 150km/h / 打点=1.5m: 150km/h

  • shot width=-1.0 => 打点=0.6m: 160km/h / 打点=1.5m: 160km/h

また、-2.0middleはサービスラインとベースラインの中間、-2.0shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-2.0のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-2.0middleでは120km/h、-2.0shortでは100km/hでエースが奪える計算となります。

反対に、shot width=-1.5以下(シングルスサイドラインから0.5m内側のエリア)のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 4.765m / 打点=1.5m: 4.685m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 3.675m / 打点=1.5m: 3.585m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 2.775m / 打点=1.5m: 2.735m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 2.005m / 打点=1.5m: 2.035m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 1.445m / 打点=1.5m: 1.425m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 0.865m / 打点=1.5m: 0.905m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 0.455m / 打点=1.5m: 0.435m

  • 170km/h => 打点=0.6m: 0.075m / 打点=1.5m: 0.045m

この結果をみると、130km/h以下のストロークでエースを取るには、ヒッティング時の相手のポジションをB・Cよりも外側に追い出す必要があると考えることができます(下図青丸)。
一方、140km/h以上であれば、B,C内であっても、センターマークとの距離とショットスピードの兼ね合いによっては、エースを取ることができます(下図黒丸)。

エースの取り方(ストレート方向)


【クロス方向】

次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。

ショートクロス

ショット到達時間(ショートクロス/打点=0.6m)

仮に、センターマークから0.916m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。

  • shot width=0.0: 100km/h
    (移動距離=5.731m/フットワーク所要時間=0.8231s)

  • shot width=0.5: 105km/h
    (移動距離=5.080m/フットワーク所要時間=0.7580s)

ミドルクロス

ショット到達時間(ミドルクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(ミドルクロス/打点=1.5m)

合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.916mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=0.0: 0.7269s (0.25 + 4.769 / 10)

  • shot width=0.5: 0.6651s (0.25 + 4.151  / 10)

  • shot width=1.0: 0.6032s (0.25 + 3.532 / 10)

  • shot width=1.5: 0.5414s (0.25 + 2.914 / 10)

以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。

  • shot width=0.0: 打点=0.6m: 130km/h / 打点=1.5m: 130km/h

  • shot width=0.5: 打点=0.6m: 140km/h / 打点=1.5m: 140km/h

  • shot width=1.0: 打点=0.6m: 155km/h / 打点=1.5m: 155km/h

反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 2.058m / 打点=1.5m: 1.918m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 1.048m / 打点=1.5m: 1.018m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 0.308m / 打点=1.5m: 0.278m

  • 130km/h => 打点=0.6m: -0.292m / 打点=1.5m: -0.322m

  • 140km/h => 打点=0.6m: -0.822m / 打点=1.5m: -0.852m

  • 150km/h => 打点=0.6m: -1.262m / 打点=1.5m: -1.302m

  • 160km/h => 打点=0.6m: -1.572m / 打点=1.5m: -1.702m

  • 170km/h => 打点=0.6m: -1.842m / 打点=1.5m: -2.052m

この結果をみると、エースになる条件を次のように考えることができます。

  • ショットスピードが100km/h以下
    =>自分がストロークを打つ時点でB,Cより外側にいる必要がある(下図黒丸)

  • ショットスピードが110km/h以上120km/h以下
    =>B,Cにいてもセンターマークを越えずにストレート側の半面にいれば、エースになる可能性がある(下図青丸)

  • ショットスピードが130km/h以上
    =>センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)

エースの取り方(ミドルクロス)

深いクロス

ショット到達時間(深いクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(深いクロス/打点=1.5m)

深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも3.199m(フットワーク所要時間=0.5699s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うことは困難です。

もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 4.572m / 打点=1.5m: 4.462m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 3.452m / 打点=1.5m: 3.332m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 2.502m / 打点=1.5m: 2.432m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 1.752m / 打点=1.5m: 1.672m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 1.142m / 打点=1.5m: 1.062m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 0.582m / 打点=1.5m: 0.542m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 0.122m / 打点=1.5m: 0.092m

  • 170km/h => 打点=0.6m: -0.278m / 打点=1.5m: -0.328m

この結果をみると、次のように考えることができるかと思います。

  • ショットスピードが120km/h以下
    =>エースを奪うには、B, Cの外側に相手が残っている必要がある(黒丸)

  • ショットスピードが130km/h以上
    =>B, Cにいても、ストレート側の半面に残っていれば、エースになる可能性がある(青丸)

  • ショットスピードが170km/h以上
    センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)

エースの取り方(深いクロス)

まとめ

今回は、コート半面の中間でベースライン前方1mからのエースの取り方について考えてきました。

ショットスピードとコース・ポジションの関係によって、エースになる相手のポジションが変わってきます。
ショットスピードとポジションから、相手がどこにいればどのコースでエースが奪えるのかを把握できれば、次はその状況を作り出すにはどうすればいいのか、につながると考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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