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テニスでシングルスサイドラインより外からストレートに打つのは効果的か?

こんにちは、トモヒトです。

今回は、「テニスでシングルスサイドラインよりも外からストレートに打つのは効果的なのか?」について、物理的に考えてみます。

条件設定

条件は、次のようになります。

定数(物理定数、用具)

  • 重力加速度=9.81m/s^2

  • 空気密度=1.21kg/m^3

  • 反発係数=0.75

  • 摩擦係数=0.72

  • ボール半径=0.033m

  • ボールの質量=0.0577kg

変数

  • 球速:90km/h~180km/hの範囲で5km/h刻み

  • ショットの打ち出し角度:1~19.8度の範囲で0.2度刻み

  • 回転量:1200~2750回転の範囲で50回転刻み

ショット到達時間算出時に使用する計算式

ストロークのショット到達時間に関しては、重力・空気抵抗とマグヌス効果を考慮した斜方投射として、物理的に算出します。
算出時の計算式は、以下のものを用います。

$$
v=ショット速度   w=spin ×\frac{\pi}{30}   spin=回転量\\
抗力係数\\
Cd = 0.508 × \frac{1}{22.503 +4.196((\frac{v}{0.033×w})^{2.5})^{0.4}} \\
揚力係数\\
Cl = \frac{1}{2.02+0.981(\frac{v}{0.033×w})} \\
水平方向の加速度\\
\frac{0.033^2×\pi×1.21×v}{2×0.0577}(-Cd×v_x + Cl×v_y)\\
垂直方向の加速度\\
\frac{0.033^2×\pi×1.21×v}{2×0.0577}(-Cd×v_y - Cl×v_x) - 9.81
$$

プレーヤーA(サイドライン外からストレートへ打つプレーヤー)

  • シングルスサイドラインよりも1.5m外側(アレーより0.1m程度外)かつベースライン上からストレートへ打つ

  • 打点の高さは0.6m

プレーヤーB(ストレートへのショットに対応するプレーヤー)

  • ポジションはベースライン後方1mの位置

フットワークの時間

フットワークの時間は、次の2局面に分けて考えます。

  1. 反応時間(ショットのコースを確認してスタートを切るまでの時間)=0.3秒を想定

  2. スプリント時間(スタートを切ってヒッティングポジションまで移動する時間)

また、移動距離に関しては、リーチの長さとして1mを差し引いた

結果・考察

上記の条件設定をもとに、サイドライン外からストレートへストロークを打つケースを考えていきます。

ストレートへのショットの到達時間

まずは、ストレートへのショット到達時間をみてみます。
ここでのショット到達時間は、各ショットスピードで相手のベースライン後方1mラインを越える時間を表しています。

shot widthに関しては、サイドラインから何m離れた位置にストロークがバウンドするかを表しています。

ショット到達時間

プレーヤーBの合理的待機位置が、センターマークから1.4mの位置とすると、プレーヤーBの移動距離は次のようになります。

  • shot width=0.0m:5.452m

  • shot width=0.5m:4.931m

  • shot width=1.0m:4.410m

  • shot width=1.5m:3.889m

  • shot width=2.0m:3.368m

これをもとに、フットワークスピード別に所要時間を算出してみます。
フットワーク所要時間を算出した計算式は、以下のとおりです。

$$
フットワーク所要時間〔s〕\\= 0.3〔s〕 + 移動距離〔m〕/ フットワークスピード〔m/s〕
$$

フットワークスピード〔m/s〕別のフットワーク所要時間を算出すると、次の表のようになります。

フットワーク所要時間

ショット到達時間とフットワーク所要時間の表を組み合わせて考えてみます。
例えば、プレーヤーBのフットワークスピードが7m/s(=25.2km/h)だとすると、次のようになります。

  • shot width=0.0のとき、120km/h以上のショットはエースになる

  • shot width=0.5のとき、130km/h以上のショットはエースになる

  • shot width=1.0のとき、145km/h以上のショットはエースになる

  • shot width=1.5のとき、160km/h以上のショットはエースになる

  • shot width=2.0のとき、180km/h以上のショットはエースになる

これをみると、シングルスサイドラインの内側1mよりもセンター寄りに入ると、145km/hを下回ると相手に追いつかれるという計算になります。

プレーヤーAのリカバリー

仮にプレーヤーBがボールに追いつくことができるのであれば、次のショットに備えてリカバリーする必要があります。

shot widthごとの合理的待機位置とリカバリー距離をみると、次のようになります。

  • shot width=0.0
    合理的待機位置=1.07m / リカバリー距離=6.685m

  • shot width=0.5
    合理的待機位置=0.93m / リカバリー距離=6.545m

  • shot width=1.0
    合理的待機位置=0.77m / リカバリー距離=6.385m

  • shot width=1.5
    合理的待機位置=0.64m / リカバリー距離=6.255m

  • shot width=2.0
    合理的待機位置=0.49m / リカバリー距離=6.105m

上のリカバリー距離をもとに、リカバリー所要時間を算出すると次のようになります。
ただし、今回はストローク打球後リカバリー開始までに0.1秒のラグがあると仮定します。
また、リカバリー位置は、ベースライン後方1mの合理的待機位置とします。

リカバリー所要時間

プレーヤーAのフットワークスピードが7m/sとすると、ショット到達時間とリカバリー所要時間の表から、次のようなことがいえます。

shot width=0.0:105km/h以下のショットであればリカバリー可能
shot width=0.5:105km/h以下のショットであればリカバリー可能
shot width=1.0:110km/h以下のショットであればリカバリー可能
shot width=1.5:110km/h以下のショットであればリカバリー可能
shot width=2.0:115km/h以下のショットであればリカバリー可能

先ほどのエースになるショットスピードと、リカバリー可能なショットスピードを見比べた場合、次のようなことがいえます。

  • shot width=0.5のとき、110~125km/hの場合は、相手に追いつかれ、かつリカバリーしきれない

  • shot width=1.0のとき、115~140km/hの場合は、相手に追いつかれ、かつリカバリーしきれない

  • shot width=1.5のとき、115~155km/hの場合は、相手に追いつかれ、かつリカバリーしきれない

  • shot width=2.0のとき、120~175km/hの場合は、相手に追いつかれ、かつリカバリーしきれない

上の条件に当てはまると、プレーヤーAはクロス方向にオープンコートを作ることになります。

まとめ

今回は、シングルスサイドライン外からストレートへ打つのは効果的かを、物理的に考察しました。
今回の結果から、リスク管理の点では次のように考えます。

  • 一定以上のショットスピード(今回の条件だと140km/h以上)でサイドラインの内側1m以内に打つことができるなら、ストレートを狙うのも有効

  • ショットスピードが130km/h台以下、またはサイドラインの内側1.0m以内に打つコントロールがあるといえないなら、クロス方向へ返して、リスクを抑える

相手のフットワークがより速ければ、エースになる最低速度が上がります。
また、自分のフットワークがより遅い場合は、リカバリー可能な最高速度が下がります。

ショット選択のうえでは、相手が取れるか取れないかだけでなく、取られた場合にリカバリーできるかも重要になります。
リスクを承知で攻撃するケースでなければ、ボールが返ってきた場合の想定も必要になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見ご感想あれば、コメントにお願いします。

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