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世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える④~半面中間・ベースライン後方1m~

こんにちは、トモヒトです。

今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。



前提条件

ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。

ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間

ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。

$$ t= 0.25 + (sprint  length / 10) $$

この式は、以下を想定したものです。

  • 反応時間=0.25秒

  • スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕

ショットの条件

  • ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない

  • ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする

エースの条件

エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。


結果

それでは、結果についてみていきます。

このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。

  • ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス

  • クロス:シングルスサイドラインからの距離

shot widthの定義

今回は、シングルスサイドラインから2m内側・かつベースライン後方1mからのショットを考えてみます。
これは、コート半面の中間付近で、ベースライン後方に当たります。

【ストレート方向】

ショット到達時間(ストレート方向/打点=0.6m)
ショット到達時間(ストレート方向/打点=1.5m)

このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.821mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=-2.0: 0.7597s (0.25 + (5.097 / 10))

  • shot width=-1.5: 0.7057s (0.25 + (4.557 / 10))

  • shot width=-1.0: 0.6517s (0.25 + (4.017 / 10))

  • shot width=-0.5: 0.5976s (0.25 + (3.476 / 10))

  • shot width=0.0: 0.5436s (0.25 + (2.936 / 10))

これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。

  • shot width=-2.0 => 打点=0.6m: 155km/h / 打点=1.5m: 155km/h

  • shot width=-1.5 => 打点=0.6m: 170km/h / 打点=1.5m: 170km/h

  • shot width=-1.0 => 打点=0.6m: 180km/h / 打点=1.5m: 180km/h

同じベースライン後方1mでも、サイドライン付近から相手コートのサイドラインを狙ったショットでは、エースになる最低速度が145km/hになっています。
このことから、自分のポジションがセンター寄りになるほどエースが狙いにくいと考えられます。

また、-2.0middleはサービスラインとベースラインの中間、-2.0shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-2.0のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-2.0middleでは135km/h、-2.0shortでは120km/hでエースが奪える計算となります。

反対に、shot width=-1.5以下(シングルスサイドラインから0.5m内側のエリア)のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 6.075m / 打点=1.5m: 6.055m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 4.885m / 打点=1.5m: 4.735m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 3.835m / 打点=1.5m: 3.765m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 2.985m / 打点=1.5m: 2.985m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 2.275m / 打点=1.5m: 2.275m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 1.655m / 打点=1.5m: 1.665m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 1.195m / 打点=1.5m: 1.165m

  • 170km/h => 打点=0.6m: 0.705m / 打点=1.5m: 0.725m

この結果をみると、140km/h以下のストロークでエースを取るには、ヒッティング時の相手のポジションをB・Cよりも外側に追い出す必要があると考えることができます。

コートポジションの定義


【クロス方向】

次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。

ショートクロス

ショット到達時間(ショートクロス/打点=0.6m)

仮に、センターマークから0.821m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。

  • shot width=0.0: 115km/h
    (移動距離=5.587m/フットワーク所要時間=0.8087s)

  • shot width=0.5: 120km/h
    (移動距離=4.945m/フットワーク所要時間=0.7445s)

ミドルクロス

ショット到達時間(ミドルクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(ミドルクロス/打点=1.5m)

合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.821mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=0.0: 0.7135s (0.25 + 4.635 / 10)

  • shot width=0.5: 0.6528s (0.25 + 4.028  / 10)

  • shot width=1.0: 0.5920s (0.25 + 3.420 / 10)

  • shot width=1.5: 0.5312s (0.25 + 2.812 / 10)

以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。

  • shot width=0.0: 打点=0.6m: 150km/h / 打点=1.5m: 150km/h

  • shot width=0.5: 打点=0.6m: 160km/h / 打点=1.5m: 160km/h

反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 3.421m / 打点=1.5m: 3.291m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 2.331m / 打点=1.5m: 2.201m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 1.421m / 打点=1.5m: 1.341m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 0.651m / 打点=1.5m: 0.631m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 0.091m / 打点=1.5m: 0.061m

  • 150km/h => 打点=0.6m: -0.429m / 打点=1.5m: -0.469m

  • 160km/h => 打点=0.6m: -0.879m / 打点=1.5m: -0.889m

  • 170km/h => 打点=0.6m: -1.219m / 打点=1.5m: -1.269m

この結果をみると、エースになる条件を次のように考えることができます。

  • ショットスピードが110km/h以下
    =>自分がストロークを打つ時点でB,Cより外側にいる必要がある(下図黒丸)

  • ショットスピードが120km/h以上140km/h以下
    =>B,Cにいてもセンターマークを越えずにストレート側の半面にいれば、エースになる可能性がある(下図青丸)

  • ショットスピードが150km/h以上
    =>センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)

ショットスピード別・エース条件

深いクロス

ショット到達時間(深いクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(深いクロス/打点=1.5m)

深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも3.294m(フットワーク所要時間=0.5794s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うことは困難です。

もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 5.922m / 打点=1.5m: 5.882m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 4.612m / 打点=1.5m: 4.582m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 3.592m / 打点=1.5m: 3.562m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 2.762m / 打点=1.5m: 2.692m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 2.002m / 打点=1.5m: 1.992m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 1.402m / 打点=1.5m: 1.392m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 0.912m / 打点=1.5m: 0.902m

  • 170km/h => 打点=0.6m: 0.372m / 打点=1.5m: 0.412m

この結果をみると、130km/hと140km/hの間で分けて考えることができるかと思います。

  • ショットスピードが130km/h以下
    =>エースを奪うには、B, Cの外側に相手が残っている必要がある(黒丸)

  • ショットスピードが140km/h以上
    =>B, Cにいても、ストレート側の半面に残っていれば、エースになる可能性がある(青丸)

ショットスピード別・エース条件

まとめ

今回は、コート半面の中間でベースライン後方1mからのエースの取り方について考えてきました。

センター寄りのポジションほど返球可能範囲が狭くなるため、エースが取りにくくなります。
実際、ベースライン後方1mでのエースになる最低速度を、サイドライン付近とコート半面の中間で比較すると、コート半面の中間のほうが高くなっていることからもわかります。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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