世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える②~サイドライン付近・ベースライン上~
こんにちは、トモヒトです。
今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。
前提条件
ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。
ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間
ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。
$$ t= 0.25 + (sprint length / 10) $$
この式は、以下を想定したものです。
反応時間=0.25秒
スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕
ショットの条件
ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない
ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする
エースの条件
エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。
結果
それでは、結果についてみていきます。
このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。
ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス
クロス:シングルスサイドラインからの距離
今回は、シングルスサイドラインから0.5m内側・かつベースライン上からのショットを考えてみます。
【ストレート方向】
まずは、打点が0.6mの場合を見てみます。
このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ1.480mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=-0.5: 0.8137s (0.25 + (5.6371 / 10))
shot width=0.0: 0.7595s (0.25 + (5.095 / 10))
shot width=0.5: 0.7053s (0.25 + (4.553 / 10))
shot width=1.0: 0.6511s (0.25 + (4.011 / 10))
shot width=1.5: 0.5969s (0.25 + (3.469 / 10))
これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。
shot width=-0.5 => 140km/h
shot width=0.0 => 145km/h
shot width=0.5 => 160km/h
shot width=1.0 => 170km/h
横のポジションが同じでベースライン後方1mの位置からだと、shot width=-0.5のときの最低速度が145km/hであったことから、ポジションが前になるほどショットスピードの最低ラインが下がることがわかります。
また、-0.5middleはサービスラインとベースラインの中間、-0.5shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-0.5のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-0.5middleでは120km/h、-0.5shortでは100km/hでエースが奪える計算となります。
反対に、shot width=0以下のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。
100km/h => 5.325m
110km/h => 4.075m
120km/h => 3.125m
130km/h => 2.375m
140km/h => 1.765m
150km/h => 1.195m
160km/h => 0.685m
170km/h => 0.325m
この結果をみると、相手がAかDにいれば130km/h台のストロークでも、ストレートへのショットでエースになると考えることができます。
次に、打点が1.5mの場合を見てみます。
ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間は同じとすると、エースになる最低速度は次のようになります。
shot width=-0.5 => 140km/h
shot width=0.0 => 145km/h
shot width=0.5 => 155km/h
shot width=1.0 => 170km/h
5km/h刻みだとほとんど結果が変わっていないことがわかります。
shot width=0以下のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。
100km/h => 5.195m(差分:0.1300m)
110km/h => 4.025m(差分:0.0500m)
120km/h => 3.095m(差分:0.0300m)
130km/h => 2.344m(差分:0.0300m)
140km/h => 1.665m(差分:0.1000m)
150km/h => 1.185m(差分:0.0100m)
160km/h => 0.725m(差分:-0.0400m)
170km/h => 0.295m(差分:0.0300m)
こちらも数cmの差となっており、同じショットスピードであれば打点の高さで有利不利はほとんど出ないと考えられます。
【クロス方向】
次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。
ショートクロス
仮に、センターマークから1.480m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。
shot width=0.0: 110km/h
(移動距離=5.560m/フットワーク所要時間=0.8060s)shot width=0.5: 120km/h
(移動距離=4.931m/フットワーク所要時間=0.7431s)
ミドルクロス
合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ1.48mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。
shot width=0.0: 0.6878s (0.25 + 4.378 / 10)
shot width=0.5: 0.6266s (0.25 + 3.766 / 10)
shot width=1.0: 0.5653s (0.25 + 3.153 / 10)
shot width=1.5: 0.5040s (0.25 + 2.540 / 10)
以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。
shot width=0.0: 打点=0.6m: 150km/h / 打点=1.5m: 150km/h
shot width=0.5: 打点=0.6m: 165km/h / 打点=1.5m: 160km/h
反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 2.564m / 打点=1.5m: 2.484m
110km/h => 打点=0.6m: 1.604m / 打点=1.5m: 1.514m
120km/h => 打点=0.6m: 0.734m / 打点=1.5m: 0.684m
130km/h => 打点=0.6m: 0.004m / 打点=1.5m: 0.044m
140km/h => 打点=0.6m: -0.566m / 打点=1.5m: -0.616m
150km/h => 打点=0.6m: -1.036m / 打点=1.5m: -1.036m
160km/h => 打点=0.6m: -1.426m / 打点=1.5m: -1.516m
170km/h => 打点=0.6m: -1.776m / 打点=1.5m: -1.866m
深いクロス
深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも2.635m(フットワーク所要時間=0.5135s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うことは困難です。
もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。
100km/h => 打点=0.6m: 5.397m / 打点=1.5m: 5.337m
110km/h => 打点=0.6m: 4.137m / 打点=1.5m: 4.077m
120km/h => 打点=0.6m: 3.097m / 打点=1.5m: 3.107m
130km/h => 打点=0.6m: 2.317m / 打点=1.5m: 2.217m
140km/h => 打点=0.6m: 1.597m / 打点=1.5m: 1.567m
150km/h => 打点=0.6m: 0.987m / 打点=1.5m: 1.007m
160km/h => 打点=0.6m: 0.487m / 打点=1.5m: 0.507m
170km/h => 打点=0.6m: 0.097m / 打点=1.5m: 0.067m
まとめ
今回は、サイドライン付近・ベースライン上のケースで、エースの取り方を見てきました。
前回よりも前のポジションになったことで、返球可能範囲やショットの距離が変わってくることから、エースになる条件が変わってきます。
エースになるショットスピードの下限が下がるため、ショットスピードを補う選択肢としても有効だといえます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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