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記録 10月15日・寝ずの番

6時過ぎに目覚める。今日も父は夢枕に立たなかった。

コーヒーを淹れる。
父用には、いつもと同じく砂糖を入れて。
ちょっと舐めてみたら、あっっっっっま!!!
いくら甘党とはいえ、これ毎日飲んでてよく糖尿にならなかったな。。。代わりに違う病気になったわけだけど。

一緒にコーヒーを飲みながら。今日は納棺だと思うと、もう悲しい。
少し顔が変わってきてる。
眼窩のくぼみがさらに落ちてきて、耳の横、頬骨?が出っ張ってきてる。口もやっぱり開いてきてしまって。重力に逆らう力がもう体にないってことだ。

まだ誰も来ないし、少し家の周りを歩く。父の散歩コース。
さすが東北、空気がひんやりしている。うっすら色づいている山々を眺める。

葬儀屋さんが来て、父の状態を確認。布団の下を初めて見た、お腹がすごく凹んでいてびっくりする。痩せてきたとは聞いていたけど、そんなに痩せてたの?

遺影のサンプルも届いた。
あー父だなあ、って感じのいい笑顔で、これでよかったねーと言いながら。
顔は父だけど、背景がないことが「遺影」であることを改めて思い知らされて、なんだかものすごく悲しくなった。

流石に昨日ほどの来客はなく、やけに余裕のある時間。
適当にお昼を食べて、父が好きな茸ご飯を少しお供え。

とはいえ、ちょこちょこ来客がある。
もう家にいるの最後だから、という近所のおばちゃん。

そうだもう最後だ。

ついに喪服に着替え。
あーもうほんとに最後だ、という気持ちがますます強くなる。

移送の霊柩車が到着する。
少し準備や何か前振りがあるのかと思ったけど、特にそういったこともなく。

それでは移送させていただきます、と、予定時刻ぴったりに。

葬儀屋さんは手際よく父を布団ごと白い布で包み、ストレッチャーに乗せて。
父は、あっという間に霊柩車に運び込まれた。
この間、わずか数分。

もう父はこの家にこの体では帰ってこない。
全身を白い布で包まれた様子は、人、というより抜け殻、いや蛹のようにも見えて。
遺体とすら言いようのない、もはや父ではない何かの塊のようで。

確かにこれはキツい。今までの中でいちばん辛い。涙が止まらない。
でも、見届けなければ。。
意外にも母と妹は、あれこれしていて見ていない。この瞬間を見てるのは、私だけだ。

近所の人や親戚が、家の前に並んでいた。(ここで少しトラブル、、、おじちゃんの余計なひと言で母がキレる。。。)
母が少し挨拶をして、霊柩車に乗り込む。

長いクラクション。


妹の車で移動。さっきのトラブルで、もはや気持ちがぐったり。

斎場について、諸々説明を受ける。
湯灌はしないらしいけど、納棺の前に少し家族で清拭などはするとのこと。
父はもう納棺する部屋にいて、納棺士さんたち?が準備を進めてくれていた。
今までかかっていた布団がないから、痩せた感じが一層よくわかって切ない。

着せる着物を選ぶ。色がいくつかあって、羽織的なやつと長着と組み合わせが選べるとのこと。白装束なのかと思ってたから意外。
もともとお寺生まれの父に、法衣上級ということで紫にする。

お手当ての間、30分くらい?
ホールの装花や御供えのチェックをしていたら、あっという間。
お支度終わりました、と声がかかって。
見に行くと、頰が落ちた感じや口元の感じが少し戻って、肌ツヤも良くなっていた。意外と紫もほんと法衣っぽくて似合う。
てか、祖母に似てるとみんな言う。あんまり思ったことなかったけど、眼鏡もしてないからかほんと似てる。骨格が似てたのかなあ。

すぐに納棺の儀。

家族、親類で、少しずつ手足を拭いて。
顔に近いところは私たち家族がもう一度。

そしていよいよ、納棺。
男性陣が布団を持ち、棺に納める。

足袋、脚絆などを足元からつけていく。私は手甲を。
今は頭の三角巾はつけないそうだけど、六文銭やらなんやら。
草鞋なんかも入って。

あーほんと旅支度なんだなあ。。。
やっぱり涙がにじむ。

それから個人的に入れたいもの。いわゆる副葬品。
読みかけの文庫本とか、よく着てたジャケットに帽子。
なんかどっかに出かけるときみたいになった。

そしてついに、顔の周りに花を。
こうなると、ほんとうにご遺体という感じ。。。

蓋棺の前に、もう一度顔を見て、頬に触れる。
たぶん、ちゃんとさわれるのはこれが最後だね。

母がいつまでも名残惜しそうに触れているけど、係の方にそろそろ、と言われ離れたところで、蓋棺。

棺が祭壇前に運ばれる。
思ったより棺周りのスペースがなく、顔はちょっとしか見れない。
火葬前に顔を見たい人には申し訳ないけど、しょうがないか。。。

そうこうしてる間に、お通夜の弔問客が来始める。早くない??
と思ったけど、読経は参列せずに焼香だけの人は早く来るものだそうで。
親族席で挨拶をしているうちに、お寺さんも到着。

バタバタしてるうちにお通夜。
正直、この間のことはあんまり覚えてない。
斎場スタッフさんの所作はさすがにきれいだなあとか、どうでもいいこと思ってた。

弔問客も引けて、親類に通夜振る舞いのお弁当を渡し、
明日の打ち合わせをして、解散。
今日は私と妹は線香番で斎場に泊まり込みなので、母たちは親戚に送ってもらう。

斎場のスタッフさんが、施設の設備とお線香の扱いについて説明してくれる。
遅れて来た人がいる場合は〜とか言ってる間にも何人か来てバタバタ。

一段落して、改めて説明聞いて。
長時間燃焼の線香があるから、蝋燭だけ消してあとは寝てくださいって。寝ずの番と言っても、ほんとに寝ずにでなくていい模様。
泊まり部屋の設備も意外とよくて、お布団はもとよりお風呂もちゃんとあるしアメニティにタオルも完備で、キッチンあるからお湯も氷も作れるし、すっごい快適〜。下手なビジホよりいいかも。
スタッフさんも帰って施錠して。

てことで、よっしゃ献杯だぜ!ちょっとテンション上がる。
近くのコンビニでビールとか買って、御供えに紛れさせてた日本酒も持ってきて、仕出し弁当のおかずがちょうどいいつまみ内容。
まず父の祭壇に献杯して。
妹と飲むのも久しぶり。入院時の話とか、看取りの時のこととか改めて聞く。

と言っても明日もあるから長話も深酒もできない。
適当に布団敷いて風呂入って、明日の準備をして寝る。

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