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あのときのわたしも、きっと泣いている|心を揺さぶられたエッセイ

今日は、心を揺さぶられたよづきさんのエッセイを受けて、書きたいと思います。

ちなみに、わたしはどちらかというと、エッセイには苦手意識がありました。Webライター人生の多くは、ほとんどが説明したり、わかりやすいように「翻訳」する仕事。

対して、「わかりやすくする」ことと正反対の位置づけにあるのが、小説やエッセイだと”思っていました”。ですが、それは思い込みと言うか、食わず嫌いだったのかもしれません。
色々な方のエッセイに触れている内に、「わたしが本当に表現したかったのは、感情だったんだ」と最近思うようにもなりました。

投稿企画で書いてみた詩やエッセイは、自分で後から見返しても、結構気に入っているものが多いです。

さて、ここからは、改めてよづきさんのエッセイを振り返りながら、わたしが感じたことを書いていきたいと思います。

『ああ、なんだ。あんな店、とうの昔に辞めたんだった。』

わたしの場合は、適応障害になった際の職場で嫌なことがあったわけではないのですが、今までの職場のなかでやってしまったことと、叱責されている記憶が夢に出てくるとは今でも時々あります。

ただ、「今だったらこういう立ち回りをしたはず」とか、「この部分は自分もよくなかった」と整理はついていますし、同時にわたしが当時揉めた相手は、大切なことを教えてくれた上司でもありました。勇気を出して昔の年賀状を頼りに葉書きを出してみましたが、半年以上たった今でも未だに返事はありません。

そんな形で、もう自分として心の整理はついたつもりなのですが、「あのときこうしていたら」という気持ちや、シンプルに今抱えている嫌な気持ちが当時の思い出を呼び出してしまっているんだろうなと思います。

『時給1000円と引き換えに私の命が消えてたまるかよ。』

これ、本当に強いですよね。ちょっとしたバイトや、仕事が本当に嫌になったとき、よく思っていました。しかし、わたしの場合は、単にちょっと嫌な気持ちになっただけで、本当に心から思ったものではなかったです。

その証拠にそもそも、「自分が本当にどうしたいのか」を考えたのはずっと後になってからであり、休職・復職を経た今となっては、ちゃんとした言葉にすることができますが、この想いがしっかり言葉になって出てくる強さ、生命力の強さのようなものに震えました。

『傷つけることが怖いから、私の不器用な手で壊してしまうのが怖いから触らない。』

これもよくわかります。また、思い出していたのは、小学校低学年の教科書に載っていた『おじさんのかさ』という話。

傘を大切にするあまり、雨が降ってきたら傘が濡れないように抱きかかえる描写があります。

まぁ、よづきさんの話はそれとは少し違っていて、自分の不器用さを理解しているからこそなんですよね。
そして、家族には理解してもらえず、心無い言葉を言われる。そして、大切にしたかったものも、使われないことで痛んでいってしまう。

実にいたたまれない状況です。誰かが悪いことなのでしょうか
・そもそも、買わなきゃよかった?
・勇気を出して自転車に乗ればよかった?
・乗らずとも、手入れをしてあげればよかった?
・家族が「一緒にやろう」と乗ったり、手入れしようと声をかけてあげればよかった?
すべてそうなのかもしれないし、どれも効果はなかったかもしれません。

同時に、この部分は「欲しいものを聞かれているのに、一番欲しいものはあげなかった謎の幼少期」を思い出しました。しかも、この体験は1回2回の話ではありません。
本当に欲しいものを望んではいけない。どこかで心に蓋をしてしまっていたのかもしれない、あのいたたまれない感じが蘇ります。

『そんなざらついた感情が自分から出たものなんて信じたくもないけれど、でも紛れもなく私の一部なんだ。』

これこそエッセイ。これこそ書き手の誰もが思うことではないでしょうか。
どこか自分をよく見せたい、多くの人に読んでほしい、でも、比較や攻撃はしないでほしい。

そんな「ざらついた感情」とせめぎ合いながらも、それが発露されたときに最も読み手に届く、心が動かされるのだということも実感しています。
ただ、それを書くのは書き手としては勇気がいることです。

そして、よづきさんはさらに踏み込んで、そうした想いを自己認知しつつ、それ自体も自分として受け入れていること。
ただ、強い。
もちろん、それは、その出来事から一定の期間が過ぎているからとか、一度ご自身の日記に書いているからなのかもしれませんが、その認知と受け入れの精度の高さに改めて凄いなと思います。

さらに、雨をテーマにした状況と心理描写のリンク。この辺は細かく解説してしまうと野暮になると思うので、この辺にしておきますが、まさに「これこそがエッセイ」と思わせていただくようなnoteでした。
偉そうな書評みたいになってしまい恐縮ですが、シンプルに「こうしたエッセイを自分も書いてみたい」と思わせてもらった、素晴らしいnoteでした。


今回のトップ画像は、素敵な写真をアップされているted_ozawaさんの写真を使わせていただきました!


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