クロナガオサムシ成虫採集&飼育メモ
クロナガオサムシ
体長25-34mm
体色は艶消しの黒。
成虫は初夏に発生し、夏眠を行った後に秋から晩秋まで見られる。
そのため、盛夏にはほとんど見られない。
秋に繁殖を行い、幼虫越冬をする生態が知られるが、成虫の越冬個体も確認されている。
各地に亜種が存在し、体型や生態も少しずつ異なる。
飼育
飼育は比較的容易で、土や砂、腐葉土等の床材を敷いてシェルターを設置したプラケースで昆虫ゼリーや生肉、ミミズ、白サシ、ミルワーム等を与える事で問題なく飼える。
以下の画像は水を含ませた蛹粉に昆虫ゼリーを乗せたもの。
オサムシやゴミムシの類は狭食性の傾向があるが、飢餓状態であれば昆虫ゼリーや果実、水分を含んだタンパク質なら大抵の物は食べるため、餌に困る事はあまり無い。
その他、餌のラインナップについては別項で後述する。
ただし、飼育自体は容易だが他のオサムシ類と違って共食いを行う確率が比較的高い。
特に羽化から間もない5〜6月辺りは外殻が柔らかいために共食いが多発する。
全ての個体に充分な量の餌を与えても、膨張した腹部に喰らいつき共食いが始まってしまう事がある。
ピットフォールトラップによる捕獲においても、アオオサムシやマイマイカブリ等は相当な飢餓状態にならなければ同じコップに入ったシデムシ等を捕食しないのに対し、クロナガオサムシは比較的早い段階(1日〜数日)でそれらを捕食する。また、その中での共食いも発生する。
基本はシェルターを増やした上で餌を絶やさず、少数または単独飼育を行う事が推奨される。
繁殖を目的とした飼育をするならば、ペアリング時以外は雌雄を隔離して飼育した方が他個体との接触による産卵の中断が少ない。この種においては共食い防止にも繋がる。
基本的に、常に交尾を行える状態での飼育は雄側の消耗が激しく、個体同士の接触により雌の産卵が阻害されるため、繁殖期は隔離した上で飼育を行う事を強く推奨する。
これはマイマイカブリやアオオサムシ等にも有効な手法であり、一定期間隔離された雄を雌の飼育容器内に放つと、触角を使い積極的に雌を探す。
交尾時の活性も高くなり、人の掌の上でも交尾を行うほどに警戒心が無くなるので、観察もしやすい。
産卵
産卵は秋から晩秋にかけて行われ、成虫がケバエ幼虫等の昆虫類を捕食し続ける事で体内の卵が成熟する。
飼育容器内に厚さ2〜3センチ以上になるように床材を敷いて湿らせる事で産卵場所となり、土中に直接産卵する。
生息地の土をそのまま使用する事でも産卵は行うが、土中の微生物によって卵が脅かされる事があるため、滅菌をする事が望ましい。
ホームセンターに売られている黒土や川砂への産卵も確認した。
森林内に生息していたマイマイカブリでも川砂や硅砂を使った産卵床に好んで産む事が多い。オサムシ類の卵は大型だが非常にデリケートで、人が掘り起こした衝撃で卵が死んでしまう事さえある。
そうしたデリケートさ故に微生物の少ない無機質な床材を好んで産卵を行うという可能性も考えられる。
飼育の項でも書いたように、交尾を確認した後は産卵に専念させるために雌の単独飼育を行った方が良い。
餌
飼育下で与えた餌はコオロギ、ゴキブリ、セミ、ハエ幼虫、ハエ蛹、ハエ成虫、ケバエ成虫、ミルワーム、ミミズ、ナメクジ、鱗翅目幼虫、生肉、魚肉、ザリガニ、昆虫ゼリー、バナナ等。
いずれも嗜好性が高かったが、水分や体液が多い餌を特に好んだ。
昆虫ゼリーは水分補給を兼ねられるため、常設しておくことが望ましい。
野外では成虫幼虫共に、ケバエ幼虫や鱗翅目幼虫を捕食する観察例が多いため、それらに含まれている栄養が繁殖や成長に繋がっていると考えられる。
以下は文献より引用された捕食の記録。
全てが近縁種オオクロナガオサムシのもの。
捕獲
クロナガオサムシは5〜6月、または9月〜11月に庭や雑木林におけるルッキングやピットフォールトラップによる採集で得られた。
ピットフォールトラップに使用したベイトは蛹粉、生豚肉、アサリ、ザリガニ、バナナであり、いずれもクロナガオサムシの誘引を確認した。
以下画像は短時間で腐敗し、強い腐臭を放つ貝類(アサリ)やザリガニをベイトとして用いた際のもの。
特にザリガニは冷凍したものを常備しておけば自家繁殖をしているハエの餌、もしくはベイトトラップやペットの餌に使用できるので重宝している。
湿地帯に侵入したアメリカザリガニが大きな問題となっている地域であるため、定期的に駆除を行なっており、そこで得られたザリガニ達を活用させてもらっている。
ピットフォールトラップに使用している底部もしくは底部側面には水抜き用の穴を複数作り、コップの上部には獣害対策としてダイソーで売られているマチ針を刺す。
埋め込んだコップはJ字型ピンで固定し、掘り返しを防いだ。
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