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6/5 野外にてセアカオサムシ新成虫を確認


2023/06/05

新規産地にて、セアカオサムシの新成虫を発見。

セアカオサムシ


もしや?と思って摘んでみると、やはり柔らかい。新成虫だ。
その体はある程度の硬さを伴った柔らかさで、摘めば鞘翅の形は変わってしまうが、離せばバネのように元通りになる。
6月の初めにこの体色で尚且つ地上を歩いているという事は、4月に産卵された個体が同月中に孵化し成長。5月中には蛹化から羽化を済ませ、しばらくして体が硬化した後に地上に現れたのだろう。
飼育下でも羽化後に地上に現れた頃はこのような体色だった。



投稿時に画質が落ちてしまったため見辛いとは思うが、上記ツイートに掲載した動画では、鞘翅の硬さを確かめている際に鞘翅裏から1匹のダニが現れた事を確認した。便乗性のダニだろうか。

ダニが現れる前
ダニが現れた後

肉食甲虫には時折、便乗性のダニが寄生しており、宿主が餌を捕食する際に共に餌を食べる生態を持つ。特にスカベンジャーは生物遺体を求めてあちこちを移動するため、宿主は他個体との接触も多く、その際にダニが他個体に乗り移ったりもする。
今回のものも便乗性ダニだとするならば、セアカオサムシも同じようにして寄生されたのだろうか。
ちなみに、アオヘリアオゴミムシ幼虫の繁殖を行った際、嗜好性を試す実験においてコキベリアオゴミムシ成虫の新鮮な死骸を与えたケース(コキベリアオに対しては飢餓時の水分補給程度にしか捕食しなかった)では、コキベリアオから乗り移った便乗性ダニに纏わりつかれたアオヘリアオ幼虫が脱皮不全にて亡くなってしまったという事故が起きた。恐らくはダニが与え続けたストレスによるものと思われるため、肉食甲虫類を飼育する際は注意したい。



文献においてセアカオサムシは6月頃より産卵を始め、8月中旬から10月にかけて見られる事が多いとされているが、Twitter等の観察例や自身の繁殖記録では4月の内に採集した個体が即座に産卵しているケースも多く、野外にて幼虫の姿も確認されている。
春の訪れが早かった今年以前にもそうした観察例がいくつか存在するため、本来はその時期から産卵が行われているものと思われる。

生息地では、全国を襲った豪雨により水没したであろう跡があちこちに残されていた。
上記画像においても草上の泥がそれを物語っている。


成虫は洪水にもある程度の耐性があり、流された個体が海浜で発見される事もある。
しかし、身動きの取れない前蛹〜羽化直後の個体は水没により亡くなってしまうケースもあると思われる。セアカオサムシの名前がイコールで繋がるほどに有名な産地は某遊水地だが、非常に強い台風が通った翌年は確認できる個体の数が減ると聞く。
今年はかなり早い段階で豪雨が発生したが、あの地のセアカオサムシは無事なのだろうか。広い範囲が水没したと思われる。羽化して地上に出てくる個体も早期に育っている事を祈りたい。

今回新成虫を確認したポイントは荒れ地であった。広葉樹の疎林、畑、水田に囲まれており、川のような水源は小さな三面護岸水路以外に存在せず、豪雨の際、主に水田から溢れた水が荒れ地の大部分を沈めたであろう跡が残されていた。
以前のように某有名多産地に毎年通っていた頃は、多産地の環境のイメージが強すぎて、このような環境にセアカオサムシがいる事などは全く想像ができていなかった。
しかし、飼育繁殖を通した今ならば、かなり腑に落ちる要素が揃っていた。そのような場所の苔下で越冬する事も含めて色々と腑に落ちる。
この地では苔を見つけられなかったが、いつかはその越冬生態の観察に辿り着いてみたいところ。


苔下にて越冬するセアカオサムシの画像及び本種の生態に関してはフォロワーのroki氏のサイト、以下リンク先をご覧いただきたい。
(Twitterアプリ内で当記事を閲覧している場合はリンク先に飛べないことがあるため、その際はブラウザやnoteアプリにて閲覧いただきたい。)




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