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〈to'morrow music〉 NEW ARTISTS OF THE MONTH (January 2021)

R.I.P. SOPHIE.

僕にとってSOPHIEや彼女が中心にいたシーンはずっと敷居の高いモノだった。楽曲が凄いのは理解出来ても何が凄いのかはわからなかったし、”クラブイベント”ではなく”ライブイベント”にあくまで遊びに行っていたので、少し距離も感じた。

そういう感じで僕にとってずっと好きだった!と声を大きくしては言えないシーンではあるのだけど、こうやって書いているのは、”今”の僕にとって本当に大事なシーンだからだ。

最初のキッカケは2016年に〈PC Music〉が主催しているクラブイベントに友達に連れられて遊びに行ったときだと思う。その日のことは飲みすぎていてあんまり覚えていないけど、とにかく楽しかったのだ。

もう一つのキッカケといえばBrooklynに住んでいたときだ。ルームメイトが金曜の夜になるとたくさんの友人をアパートに連れて来て、ワインを空けたあと、LGBTQのクラブイベントにド派手な洋服に着替えて遊びに行っていた。僕は他の予定もあったし毎回参加できたわけではなかったが、彼らと一緒に行く大好きな〈Elsewhere〉という箱でのイベントはいつも最高に楽しかったし、僕のようなジェンダー的にはマイノリティーの日本人もいつでも受け入れてくれた。性別なんて関係なく、みんな良い奴ら。僕が本当の意味でLGBTQの人たちに対して何一つ偏見を持たず、逆に変な気を使うこともなく遊べるようになったのは彼らのおかげだろう。

LAに帰ってきてからは〈HEAV3N〉というパーティーに毎月遊びに行くようになった。基本的にインディー、もしくはラップ系の界隈に友達がいたので、最初はアウェーの中遊びに行ったが、Rina Sawayamaが出演したときやCharli XCXのアフターパーティー、そしてSOPHIEがヘッドラインを務めたバレンタイン・パーティーの日も含め行くたびに新しい出会いがあり、いつも刺激的な音楽が流れ、ハイパーポップ系のサウンドに熱が入ったキッカケのパーティでもあった。とにかく一番楽しい場所だった。

今ここに書いてきたパーティーや遊び場はSOPHIEがいなかったら確実に形が違うものだったと言えるだろうし、出会えてなかった人たちも多くいるだろう。色々な積み重なりで久々にミュージシャンの死でかなり落ち込んだし、LAに帰ったとき彼女の参加するパーティーがもう無いのは本当に悲しいけど、SOPHIEが残した音楽やアイデンティティーという遺伝子は確実にシーンに浸透していると思うし、これからも新しい音楽や現場が生まれるだろうから楽しんで、共有していきたい。

SOPHIEを聴いたことないという人はぜひ聴いてみてくださいね。
This is SOPHIE

惑星にSOPHIEのつけるための署名活動も進行中です。
Name TOI-1338 b in honor of SOPHIE

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前置きにしては長くなってしまいました。今月もプレイリスト〈TO'MORROW MONTHLY〉から国籍 / ジャンルを問わずに特にお気に入りのニューカマーを厳選し紹介していこうと思います!

BROTHER SUN SISTER MOON(Osaka / Japan)

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大阪を拠点に活動中の3人組、BROTHER SUN SISTER MOON。元々前身バンドとして活動していたローファイでビーチっぽさのあるバンドでも好きだったのだが、2019年の年末にBROTHER SUN SISTER MOONとしてのライブを初めて観たときにあまりにも力強くなっていてその迫力に驚いた。Tame ImpalaのようなサイケデリックからBeach Houseのようなドリームポップを鳴らすバンド。邦楽でいうとThe fin.She her her hersのような海外の音楽にも負けない壮大で宇宙っぽさを感じさせる世界観を出せるバンドが久々に出てきたのではないだろうか。楽曲ごとに男女ヴォーカルが入れ替わったりするのも音楽性の幅を広げていて素晴らしいし、今のところ発表されている曲はどれも違うタイプの曲だけどどれも良い。フルアルバムがリリースされる時、どのように進化しているかが楽しみで仕方ない!

Dora Jar (New York / USA)

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NY生まれ、California育ちのアーティスト、Dora Jar。まだ2曲しかリリースしていないが最新曲でもある「Multiply」のフォーキーで耳に残るアコギのフレーズと彼女にしか表現出来ないであろう美しいけど癖もあるヴォーカルをミックスしているのがまず素晴らしいけど、楽曲の後半でいきなりノイジーで爆発力のあるオルタナティブなパートをブチ込んで来て、そのままアウトロへと繋がっていく楽曲の構成が何より最高だ。ちなみにデビュー曲の「Did I Get It Wrong」はもっとメインシーンに近いオルタナポップな曲なのでアーティストの全体像としてはまだまだ見えないけど、どちらの曲もポップセンスがある中で一癖出してきてる感じが最高ですね。

kiwi (Tokyo / Japan)

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東京を拠点に活動中の4人組インディーバンド、kiwi。Captured Tracks系統のUSインディーやシューゲイズを組み合わせたドリーミーなサウンドにギターポップとかでも通じるキャッチーなメロディーを組み合わせたスタイルとダークな印象を与えるシューゲイズ系の音楽の中でもとびきり明るさを醸し出してるヴォーカルも最高だ。新曲として公開された「You」という楽曲は彼らの今までのディスコグラフィーの中でも抜群な良さがある。リリックは英語だけど、途中のギターソロで表現しているエモい感じとか日本でないと生まれない音楽だよなと思う。

國 (Tokyo / Japan)

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2020年9月に東京を拠点に活動をスタートさせたオルタナティブ・ロック・バンド、國。どこまでも伸びていくような壮大なヴォーカルと決して激しすぎずバランスの取れたオルタナ系のサウンドが魅力的なニューカマーで、きのこ帝国羊文学といった日本音楽シーンの中でも特に素晴らしく芯のあるフィメール・ヴォーカル・シーンの逸材と言えそう。他にもデビュー曲「ムスカリ」という曲のイントロとかを聴いているとART-SCHOOLとかにも通じるし、恐らくですが海外の音楽〜J-POPまで様々なバッググラウンドがあるバンドだろうなと感じますね。

Rat Tally (Chicago / USA)

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シカゴを拠点に活動中のSSW、Addy Harrisによるプロジェクト、Rat Tally。Julien Bakerを発掘した〈6131 Records〉と契約し、今のところ新人SSW系の中では今年一番デビューアルバムのリリースを期待しているアーティスト。Phoebe BridgersFenne Lilyといったアコギ1本のサウンドが似合う声質やドリームポップやエモ系のムードを加えた音楽性がとにかく最高だし、最新曲「Shrug」で鳴っているエモーショナルなギターフレーズとかを聴いているとスマパンのような90年代のヒーローを思い出す。

Robbie & Mona (Bristol / UK)

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昨年2枚の大傑作をリリースしたブリストルのバンド、Pet ShimmersのメンバーでもあるWilliam Carkeet / Eleanor Grayの2人が別に組んでいるユニット、Robbie & Mona。エレクトロポップからオルタナティブ、ノイズミュージックなど様々なサウンドをミックスし、実験的とも言えるけど、とにかく中毒性の高いサウンドを作り出している。この曲のヴォーカルのメロディーとかはSorryCrumbといったバンドを思い出す人も多いのでは?と思うし、触れにくいと思わせておいて、心地良く、カオスだと思わせておいて、実はとても親しみやすい。今年が終わることには、2021年の裏ベストニューカマーとかいう感じの立ち位置になっていそうだ。

shigecki (Los Angeles / US)

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昨年の〈PC Music〉のコンピレーションにも参加していたLAを拠点に活動中のアーティスト、shigecki。先日リリースしたデビューEP『Growing Pains』はベッドルームサウンドを軸にR&B〜ソウルから電子音を取り入れた楽曲までをミックスしたセンス溢れる作品に仕上がっている。Maxwell YoungJack LarsenRyan Beattyとかとも通じる部分があるし、Kevin Abstract周辺からどんどん広がっているベッドルーム系アーティストの注目したいアーティストの一人と言ってもいいでしょうし、これからどんどん化けていくような気もしています。

Sofía Valdés (Panamá City / Panama)

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パナマを拠点に活動中の20歳のSSW、Sofía Valdés。家族が音楽一家ということもあり、13歳で初めて曲を書き、リヴァプールのアート系の学校で音楽を学んだ経験もあるアーティスト。先日リリースしたデビューEP『Ventura』ではナッシュビルのCharli AdamsのようにPhoebe Bridgersを彷彿とさせるようなエモーショナルなフォーク系のサウンドからスパニッシュの響きを活かしたインディーとR&Bとラテンを繋いだ楽曲までを収録した素晴らしい作品だったし、ブラジリアン・ミュージックからの影響を感じさせるハピネスさと先ほども言った通りのエモーショナルのバランスが素晴らしいですね!

Stray Fossa(Charlottesville / USA)

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ヴァージニア州はシャーロッツビルを拠点に活動中のトリオ、Stray Fossa。2019年にリリースしたデビューEP『Laridae』からBeach FossilaTurnoverのようなアーティストを彷彿とさせる素晴らしいインディーポップをリリースしていた3人組で、4月には待望のデビューアルバム『With You For Ever』をリリースする。カリフォルニアのローファイシーンを彷彿とさせる感じの曲からとかもあるけど、新曲として公開された「How Come?」は彼ららしいUSインディーの曲調に少しダンス要素も含めたりしていて、まさにTurnoverが向かった先に続いている感じがある!

WYLDE (Los Angeles / USA)

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LAを拠点に活動中のアーティスト、WYLDE。デビューEP『CASTLES』はダークでドリーミーなポップミュージックが詰まった作品だ。少しTones and Iを彷彿させるような唄声を響かせながらディープに沈んでいくポップミュージックは癖になる。ノルウェーのAuroraが”森”のアーティストであるならば、WYLDEは”海”のアーティストであり、この手のアーティストのサウンドの中でも全体的にワンラインダークな部分を突いているのが最高。ポップミュージックなのだけど、少し横にずれている感じが個人的にはMaggie Rogersが「Alaska」をリリースした時に少し近い感覚があるし、メディアとかに露出しはじめたらあっという間な気もする。

上記で紹介したアーティストを含めたマンスリープレイリスト〈TO'MORROW MONTHLY〉も公開してます!

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