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それはアンカーみたいな気持ちだったんだ

 「気持ちをこめて、楽しんで、大きな声でね!」満面の笑顔で6歳の長女が私の手をぎゅっと握る。「わかった!がんばってくるね!」とこれじゃあどちらが親かわからない……そんな会話を交わしたのは水曜日の夜。

仕事で大事な海外プレゼンが入って、時差の関係でどうしても夕食の時間にかかってしまうのでどうしようかと夫に相談したら、子供たちを連れて外で夕食を済ませてくるとナイスレスポンス。玄関先でエールを交換して子供たちは外食へ、私は自宅でパソコンに向かうそんなシーンだった。

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 プレゼンが決まったのは2か月前。いやもっと言えば年度はじめの4月に人事異動に伴うチーム内での担務再編があって、その時に海外プレゼンの担当をやりたい、と手を挙げたのは他ならぬ自分自身。身近な友人が海外駐在を経験したり、英語でのプレゼンに挑戦している様子を聞いていて、いつかチャンスがあればやってみたい、と思っていたことと何事も経験してみなくてはわからない、と常々感じていたから。友人の話を聞いたり本を読んだりすることでの気づきは本当に多いけれど、やってみないとわからないことってやっぱり多い。チャンスがあるならばぜひに、と思ったのだ。

英語の練習、プレゼンのアジェンダづくり、そのためのトピックスとデータ収集。前年の同様のプレゼンを担当した先輩の録画を見返したり、日本の今をどう伝えたら良いかニュースを集めたり。やることは山ほどあって、時間は足りない。もちろん育児だって、はいお休み、とはいかないわけで。

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手を挙げたもののどうしようかなぁ、できるかなぁ。。と弱気になった私を救ってくれたのはvoicyで聞いた言葉だった。

「周囲の人に助けを求めることはビジネススキルのひとつ」

女性活躍を推進されている株式会社NOKIOOの小田木朝子さんのパーソナリティが好きで朝時間によく聞いているのだけれど、「仕事を一人で抱え込まず、適切な情報共有と”ヘルプを求める行動”によりチームでの成果を最大化するのが大事」という彼女の話がこの時期に自分にはとっても響いて。そうだ、これって間違いなく重要なチームタスクだよね、と腹落ち。

 1人で仕上げることをやめ、今回のプレゼンの意図と骨子、想定聴衆を簡単にまとめた上で、ひたすら各所に相談&壁打ちそして修正の日々が始まった。マーケティングチームのメンバーには骨子に問題ないかどうか、ポイントとデータの相談を。プレゼン上手な同僚には資料構成の相談を。ある程度骨子をまとめたら資料について、資料づくりの師匠である上司は資料の見せ方、デザインについて実に細やかにアドバイスをくれたし、海外駐在の同僚や英語の先生は英語での表現についてとことん相談にのってくれた。各方面に”ヘルプ”を出してみたら、思ったよりはるかに多くの人が手を差し伸べてくれて、資料は当初想定より早く完成。一番不安だった英語でのプレゼン練習に自分の時間をあてることができて、この練習にも同僚や先輩が何度も付き合ってくれたことがほんとうにほんとうに有難かった。家族にも「ママは10月末に初めての英語プレゼンを控えて余裕がありません~ご協力を!」と宣言、休日も英語をブツブツ練習しながらの公園遊びに2歳の次女なんて「??」だっただろうに何も言わず見守ってくれた数か月。これまでで一番「感謝」の言葉を多く口にしたかもしれない。

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 そうして迎えたプレゼン本番当日。パソコンの前に座っているのはもちろん自分一人、なんだけれど何というか家族や同僚を含めたチームの代表としてここにいるんだ、という気持ちが強く不思議と緊張はあまり感じない。やれることはここまでやってきた、周りのひとにたくさん協力もしてもらった。今日はその成果をベストな形で伝えられるようにがんばろうーそう、それはまるでリレーのアンカーのような気持ちだったんだ。約20分の自分の出番はあっという間に過ぎて、質問にも何とか答え終わるとさすがにほっとチカラが抜けたし、こっそり白状するとすべてが終了してから今回のファシリテーターを務めてくれた海外駐在の同僚と別ZOOMをつないで思わず”乾杯”してしまったりしたけれど、全体を通じて「走り切ったなぁ」と何か試合を終えたような充足感があったのは、ほんとう。また一緒にこんな仕事をしたいね、と話が弾んで「お風呂に入ろうよ~」と呼びに来た子どもの声に慌てて現実に戻ったのは夜の9時だった。

 こと英語力はまだまだ力不足ではあったけれど、今の自分には少し高いハードルに挑めたこと、そして一人の力でなく周囲に”ヘルプ”を出して一緒に取り組めたことーこの経験は間違いなく自分の中で残るなぁと実感した、秋の終わり。何より、助けてって言えるってありがたいし、自分も他人を助けられる存在でありたい。そのために自分のできることも増やしていきたいーあらためて自分の在り方も振り返った今回の挑戦。またこういう機会を増やしていきたいな。それにはまずは、自分自身を磨くところからー今日も英語レッスンを、ひとつ始めよう。できることから、一歩ずつ、一歩ずつ。

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