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富士の嶺の雪


 雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などしてあつまりさぶらふに、「元木よ。富士の嶺の雪いかならむ。」と仰せらるれば、「遠くにて見侍り。」と申し侍れば、笑はせたまふ。人々も「さる事は巨人と知り、スポーツ紙などに見ゆれど、思ひこそよらざりつれ。なほ御上の人にはさべきなめり。」と言ふ。

『清氏文草』

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