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虹色ドリーミング(第11回)

#創作大賞2024
#お仕事小説部門

【イーグル@ミオタンメン】
カカシのことは、CLEAN時代から知っています。彼は東京のトップオタでしたから。自分は横浜を推していました。特にリーダーのカエデ推しで、よく新宿ブラックノーズでワンマンやっていたので、静岡から通いましたね。
カエデの卒業ワンマンで、カエデから言われました。
「次のリーダーのマユのことお願いね」
それでTIFを干して、厚木の炎天下の野外ライブに行きましたけど、自分、熱中症になって救急搬送されちゃいました。
その内にカカシの予言通り、メンバーがどんどんやめちゃって、ついにマユ一人になっちゃったんです。なので、マユは妹分のグループSMILESに入ることになって、そこでミオタンに出会いました。正直一目惚れでした。結局SMILESもしばらくして解散しちゃいましたが、高梨さんが独立して、新しいグループを作る、ミオタンがそのグループのリーダーになるというので、くっついてきたらまたカカシと再会しました。
ミオタンはデビューからポンコツとかポン子って呼ばれてました。確かに歌はかなり下手というか、音痴の部類に入ります。SMILESの時TIFのトークステージで『きみわずらい』を歌って『見るもの全てが』ズッコケて、それを『君のせいだ』と人のせいにする『みおわずらい事件』を起こしました。
ダンスもフォーメーションチェンジの時に、他の子の進路をふさぐので、『マリオカートのバナナ』と言われています。グラビアをやるほどのスタイルじゃないし、トークもボケを炸裂させてばかりです。
でも、彼女は確固たる自分というものを持っています。他人に勝った負けたという概念をもっていないんです。昨日よりできた、昨日の自分に勝った、人から見たら嫌なことも「新しい経験ができた」と喜べる、そんな素敵な子なんです。そこが彼女の魅力だと思います。
この前、仙台に遠征したじゃないですか。
あの日、実は彼女が代表して出場しているアプリイベントの最終日だったんです。1位の子のグループは、横浜開港記念パレードの先導と、野外ステージに出られるイベントでした。
ライブの第1部が終わって、カカシが仕事で東京に帰ったから、一人で喫煙所でタバコを吸っていたんです。たまたまそこに、その時点でイベントの2位だった子とマネージャーとオタクたちがいて、「23時半にラストスパートをかけよう。絶対逆転するぞ」って言っていたんです。その時点での1位はもちろんミオタンでした。
それで慌ててコンビニで課金したんですけど、間違えて帰りの新幹線代まで使っちゃって。
『間違えて帰りの新幹線代使っちゃった。どうしよう。ヤバい。詰んだ。東京に帰れない』ってツイートしたんです。ニジドリメンバーがそれを読んだらしくて、リナチーに
「大丈夫?ココDが車で来てるから頼んであげようか?」って。鈍行なら帰れそうだから断りましたけどね。
ライブが終わって仙台駅前のネカフェに入って、まず
『拡散希望、2位の子が23時半にスパートをかける情報入手。こちらもそのタイミングで全投入します。ご協力お願いします』
結果は……もちろんミオタンの勝利ですよ。ネカフェでガッツポーズして叫んだら、店員さんに怒られました。
パレードと野外ライブはゴールデンウィーク。100万人来場するそうなので、今から楽しみです。
ちなみに百人一首で好きな札は「わびぬればです」、もちろん「みを」です。もしくは「よのなかは」、こっちだと「あまの」です。

【アオイ】
「アーーーーーーーーーーーーーーーー」
ふう。超ロングトーンって聞いてたけど、さすがにこれは。1回目から3回目までは8拍なんだけど、ラストは倍の16拍。
そして、いよいよ初披露の日が来た。場所は目黒ロック館。今日はロックアイドルの4マンに呼ばれているから、ちょうどいい。あたしたちのロックを見せてやる。

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