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夢を追うおばあちゃんたちー「マルタのやさしい刺繍」鑑賞
「マルタのやさしい刺繍」鑑賞。2008年、日本では上映になっているんでしょうか。スイスで爆発的に話題になった作品のようです。
あらすじ・・・
スイスの小さな村、トループ村に住む80歳のマルタは、最愛の夫に先立たれ生きる気力をなくし、意気消沈しながら毎日をただ何となく過ごしていた。
そんなある日、彼女は忘れかけていた若かりし頃の夢、“自分でデザインして刺繍をした、ランジェリー・ショップをオープンさせること”を思い出す。
しかし保守的な村では、マルタの夢はただ周りから冷笑され軽蔑されるだけ。それでもマルタは友人3人とともに夢を現実のものとするために動き出す。
http://www.alcine-terran.com/maruta/ より
生きる希望を失った80歳のおばあちゃんが思い出した、夢。それは、自分の刺繍をほどこしたランジェリーショップを開くことだった!
2008年当時は、妊娠と出産でほとんどのメディアに触れずお腹の子としゃべって過ごしていたので、こんな映画があったことをリアルタイムでは全く知りませんでした。こちらのキャッチコピーに惹かれて、ついツタヤで借りてしまって、よかったと思います。
縫い残した未来が、
輝きはじめる。
いいなあ。とっても好き。
キャッチコピー以上に、この映画の中核をなすベテラン女優たちの演技が、これが本当に素敵で、すばらしかったです。
保守的な村のちょっと頑固で悪戯っぽい、いやそれでいて自分をしっかり持ってる「おばあちゃん」たちを見事に演じきっていて、見事に引き込まれました。
一方で、この物語のおもしろさは、おばあちゃんがランジェリーショップを開店することよりも、村で起こるいろんな「反応」や「衝突」を露骨に描いていることだと思いました。
おばあちゃんがランジェリーショップ、という組み合わせに、男性たちは、声を荒げ、自分たちのただしさを主張する。
伝統文化という名のもと、女性が肌をあらわにするような性的なアピールはあってはならないと弾弓する。
けれども、保守的な村だって、伝統だけで成り立っているわけではないんですよね。
ランジェリー、インターネット、不倫・・・
めまぐるしくおこる保守らしからぬ事柄が、物語のなかにいろいろと混ぜ込んであって、「おお」という驚きが絶えまなく、見終わったあと、
こんな時代が、あったんだな…………
と遠い目をしている自分もいました。
製作は2006年。15年ほど前の映画にある、男性たちのセリフ、内容に、意味のなさを感じてしまうなんて。時間の流れ、社会の成長の速さを感じます。
下着が「村の秩序をみだす」「情けない」
おばあちゃんが好きなことやって「恥を知れ」
これらの反発が、この映画のおもしろさを引き立てつつ、それが、一周回っておもしろさにもなっています。
誰もが身につけている下着に「いやらしい!」と言わせてしまうような、社会の、全体の、まだ認識されていない無知さ。
ながらく、何を信じて生きてきたんだろうな私たち、と、取り乱す男性たちのセリフの無意味さに、ちょっとクスッとわらってしまいました。
何かが大きくかわるときって、
自分のなかの価値観や大切にしたいと思っていたものが、ひっくりかえるときでもありますね。
「それ、本当に必要?」って問うてくるような。
きっと変化って、そういう痛みがともなうもの。で、あなたはどうする?って、おばあちゃんたちの奮闘が、ようしゃなく男性たちを問い詰めていく物語は爽快でしたが、
私にはどちらかというと、男性たちの悶え、痛みを描いている作品にも思え、
がんばれ男たち!とエールを送りたくなるような鑑賞後でした。
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