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休職終了宣言 -その後の顛末2-

総務部との面談を終えたわたしは所属部署面談につづき、産業医面談を受け、その翌日から業務をスタートさせる、という段取りでコトをすすめていた。復帰までもう間もない。
なんとなくこの何にも所属しない気楽さに対する惜別の念と、早くもう一度何にも所属しない不安から解放されたい、といういりまじった感情につつまれた。
でもまあこの辺が潮どきだ。

所属部署面談

新しく所属する部署の仕事の内容は、休職前に同本部内にいて週報にも目を通していたこともありなんとなくやることはわかっていた。
逐一連絡をとりあっている後輩のIちゃんがいるのでメンバーの雰囲気も聞いているし、復帰したら現在Iちゃんがひとりで担当しているお仕事をサポートすることになっている。

Iちゃんはわたしと一緒に働けるのが嬉しいと言ってくれている。
彼女と初めてあったときは「気が合いそうにないな」と思っていたのに、まさかこんな関係になるとは・・・

人生ってほんとどう転ぶかわかったもんじゃない。

所属部署面談は請け負う仕事内容の説明と合意が目的だ。しかしわたしはすでに後輩に情報を得ていたので、わたしが従事する仕事は詳細を聞かずとも特別ストレスがかかるような内容でもないし、直属の上司も気がきくタイプでわたしの気にさわるような言動をしない穏やかなタイプとお見受けした。

復帰をめざす場合、環境が許すなら上長の話より信頼できる実務担当者の話を聞くのも良い手だ。上長のふんわりした説明の過不足もわかるし、復帰したあとに「話がちがーう」という状態を避けることができる。

所属メンバーについても上長は立場上メンバーについては良いコトしか言えないだろう。
普段から「ヨイコづら」しないIちゃんは「たまこさんは多分気にしないけどわたしはこう感じる」と注釈をつけてから、バイヤスがかからない程度に彼らに関する情報を奇譚なく話してくれる。

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産業医面談

わたしは会社に情報がツーツーになるのが嫌(会社の保健センターまで通院するのもイヤ)で、会社指定外の心療内科に月イチで通っている。よって産業医と顔合わせするのはこれが初めてだ。

面談は11月中に終わらせる予定だったが、あいにく先生の都合で2週間ほどのびた。しかも、もともと対面での面談だったのにオンライン面談を指定してきた。直接あって話をしたかったけれど「まあ世が世なのでしかたないかな」程度に思っていた。

面談の時間となった。
時間は30分。予想より短い。まあひととおりの質疑応答のあと合意形成して終わりなんだろう。

オンライン会議室に入ると画面上には総務と上長、そして短髪・トレーニングウェア姿のスポーツジムのインストラクターがいた。
あれ?
スポーツジムの運営とかしている健康管理局のひとかな?
でもなんで、と
いぶかしげに思っていたら、インスタラクターは見た目どおり大きな声で挨拶をし、面談をはじめます、といってきた。そのインストラクターがまさかの産業医だった。

先生「なんで復帰しようと思ったのですか」
たま「十分お休みをいただいたし、休むのもちょっと飽きたので」
先生「活力がでてきたんですね。普段どんな生活してますか」
たま「睡眠もちゃんととれてるし運動もしてます。朝も決まった時間に起きてご飯もちゃんと食べてるのでまあまあ規則正しく生活してます」
先生「復職にあたって不安なことはありますか」
たま「強いていうなら満員電車には乗りたくないです」

といった質疑応答が続いた。
時間も時間なので、まあこの辺で面談もおわり、明日からいよいよ復帰だろう。

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インストラクターからの提案

ところがどっこい、インスタラクターは藪から棒に元気よく言い放った。

「明日から復帰、ということでたまこさんが復帰意欲満々なところ、出鼻をくじくようなこといって申し訳ないのですが、復帰の前に3ヶ月間リワークに通うことをお勧めします

「は?」

わたしは思いもよらない結末にすっかり動転してしまった。

え、まさかの復帰リジェクト?わたしの復帰計画はおじゃんですか?

noteのおかげでリワークという単語はちらほら聞いていたけど、内容はわかっていなかった。

リワーク(Return to work)とは、休職などで一時期仕事場から離れていたひとが仕事場へ復帰するにあたり、通勤練習やチーム作業をとおして社会生活に馴染むリハビリをする制度だ(※たまこ解釈)。運営母体によってはコミュニケーションにおける自身の心理的変化について自己分析するワークをおこなうところもあるようだ。

自信満々のイケメンインストラクターは、
「精神科の先生は治すところまでしか考えていないからリワークの話はでなかったと思うけど、産業医はその後会社できちんと働けるかをみます。
データではっきりしているんですが、1年後の仕事継続率はリワークに通ったひとで約80%、通わなかったひとの継続率は約50%。たまこさんがどっちの50%になるかわかりません。
この場では言いにくいでしょうが、もう退職とか転職する気だとか、あるいは『わたしは大丈夫です』って自信もっていうなら復帰可のサインを今ここでします。ただ8000人みてきた僕としては1年以上休んだひとにはリワークを強くお勧めしますね

って、おーい。
目の前にいる患者がどっちの50%になるか判断するのが先生のお仕事なんじゃないの?
メンタルサポートの先生でこんなデータドリブンな先生がいるとは。これも平成教育のたまものか。データで判断するならAIで十分だろー。

と思わず心のなかでどついてしまった。

そんなわたしをよそに、インストラクターは
「じゃあぼく次あるんで、ここで失礼します。まあよく考えてみてください。じゃ!」
と画面から颯爽と消えていった。

残された総務担当、上長、そしてわたしの3人はただただ呆然と彼が画面から消えるのを眺めていた。

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なるほど。
産業医面談の目的は「対象者が会社から与えられた業務を継続して遂行する力があるかどうかを産業医が判断し、会社に報告する」ことだったのか。対象者であるわたしが主役の面談じゃなかったのだ。(※たまこ解釈)。
ま、確かにリワークに通った経歴があれば診断せずともその力があるということを客観的に立証できるわけだから先生からしたらコトは簡単だ。

リワーク。
一体何をするところなの?本当にわたしに必要なのか。

拒絶したい気持ちもあるが一応プロのご意見だ。まずはいったんリワークって何をするところなのか調べてみることにした。

もしかしたら本当にわたしに必要なプロセスなのかもしれないし(たしかにスケジュールにしばられない生活がだれてきているのは事実だし)、プロの意見を調べもせずに真っ向から無視することもなかろう。

ということでオンライン面談が終わると同時に、わたしは先生が教えてくれた公的機関と民間機関の2つのリワーク説明会の予約をとった。

※写真と本文はいっさい関係ありません。
昔訪れたキューバの一部(前のnoteにも使ったかもしれない)。初日に財布をなくしたけれどその分忘れられない最高の旅になった。ラテンの考えすぎない(ようにみえる)生き方が最高に好き、というかあこがれる。

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