見出し画像

スタートアップ労務の手続きをする際に知っておいて欲しい基本のまとめ

「保険業界をアップデートする」というミッションを掲げ、InsurTech領域でB2B SaaSを展開するスタートアップの株式会社hokanで、バックオフィスを担当しているSBOともこです。

8月にhokanで社内向けの労務勉強会を行うことにしました。
せっかくなので外部の方にも社内説明会を視聴できるというスタイルをとることにし、話す概要をnoteにもまとめました。noteは2本立て。
今回は基本の1本目。2本目はより経理向けです。両方ともとても基本的なことですが、これからスタートアップを起業する方や、SBOになる方には多少でも参考にしていただけるんじゃないかなと思います。

説明は厚生労働省や年金事務所などのホームページを参照しています。私のコメントは抜粋のため厳密ではないのでご了承ください。


なぜ労務勉強会をするのか

この労務勉強会は社内向けです。きっかけは、経理畑の方が入社してくれたこと。経理としては、労務で算出する給与や社会保険料の仕訳、納付する税金額などが必要になります。さらに今後の支出の予測をする際にも、割増賃金や社会保険料の計算方法を知っているとより正確に近い値を算出することができます。

労務の手続きはルール通りにすればさほど難しいことではありませんが、ルールはわかっているけどそもそもの仕組み理解をすっ飛ばしてしまっているという方も少なくないと思います。

今回はあくまで、労務の手続きをする際に知っておいてほしいことについてをまとめました。

画像6


◆健保・厚生年金

 ◇基本的な話

▷健康保険
入社したら健康保険証を受け取るので一番なじみがある健康保険。傷病や疾病、出産手当金などの給付が主な役割です。
スタートアップはまず「協会けんぽ」に加入します。もともと政府管掌健康保険だった日本最大の保険者で、主に中小企業が加入します。その後色々な要件を満たすことで、IT健保などの組合健保へ移管することができます。


▷厚生年金
厚生年金は会社員が将来受給する公的年金の仕組みです。会社員の場合は、国民年金の上乗せとして積み立てることができます。


▷それぞれの加入要件
会社としては、健保・厚生年金ともに事業所で常時5人になったら加入しなければなりません。

対象は役員や正社員以外にも、短時間労働者でも対象になる要件があります。令和4年10月からはその要件も変わります。

画像2

参考)令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

(ちょっと小ネタ)
前職を退職して起業・転職したのにスタートアップに健保の仕組みがない!なんていう時や、退職したけど次の転職先は未定という場合に活用したいのが「任意継続被保険者」という仕組み。
国民健康保険に切り替えずとも、退職しても前職の健保を最大2年間継続できる仕組みです。

 

 ◇手続きの注意点

資格取得した日から5日以内に手続きをします。
保険料の算出は基本給のほか、役付手当/通勤手当/残業手当等も含まれます。最近はマネーフォワード クラウド社会保険smartHRを利用すると手続きの数字を間違うということは少なくなったかと思います。

スクリーンショット 2021-07-31 15.20.57

資格取得手続きの後は標準報酬の決定通知書が届きます。年金事務所は決定通知書に記載の額を標準報酬として認識しています。保険料の算出の元になる大切な数字になるので、自社の給与計算ツールに登録している標準報酬月額とあっているか必ず確かめて下さい。

万一間違いに気づいた場合には遡及して訂正も可能なので速やかに年金事務所に連絡をしましょう。


◆雇用保険

 ◇基本的な話

雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給します。育児休業給付金も雇用保険から支給されます。

 1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある方は加入対象になります。


 ◇手続きの注意点

入社した日の翌月10日までに手続きをします。

「雇用」保険なので役員や業務委託は対象外です。例外としてインターンやアルバイトの学生の方は加入の要件に該当しません。実際加入はしていないのに給与明細で加入のフラグを立ててしまい保険料だけ控除してしまっていたということも起こりやすい間違いです。

スクリーンショット 2021-08-01 10.01.13

▷資格取得届の項目について

3.取得区分
過去加入していたことがある場合、1年以内であれば過去の雇用保険番号を引き継げるので「再取得」となります。手続きに雇用保険番号が必要です。

10.賃金
毎月定まって支払われる固定額の各種手当や通勤手当も含めた金額です。日給月給制の場合も月給を選択します。

15.所定労働時間
所定労働時間は法定労働時間内で会社が定める時間です。hokanは法定と同じ40時間です。パートナー契約(パートタイマーや有期契約)の場合はその方の所定労働時間を記入します。

参考)週40時間労働制


◆労務の法定三帳簿

労働基準法では、労働者の賃金や労働時間、休暇等の主な労働条件について、労働者を雇用したら法定帳簿を整え保存するよう義務付けられています。それが主に以下の3つです。

-労働者名簿
-賃金台帳
-出勤簿等

勤怠打刻ツールを入れて、給与明細ツールを入れてそれぞれを運用していると大抵クリアできます。それぞれ退職や最終出勤日から3年の保存義務があるため、ツール入れ替え時などには注意が必要です。

賃金台帳は、雇用保険の失業給付や育児・介護休業給付の手続きや、その他何かしら社会保険や雇用保険で過去に不備があった場合に、その方の過去の就労実績の証明になります。給与明細から連動して作成されるのが一般ですが、正しく数字が入っているか確認しておきましょう。


◆雇用契約書と労働条件通知書

意外と見過ごしがちなのが労働条件通知書です。雇用契約書は労基法で定めはありませんが、労働条件通知書は交付が義務付けられている書面です。
採用を決定する際に「労働条件通知書」として必要項目を明記し交付をしましょう。

画像4

パートタイマーや有期契約書の場合には上記に加えて
昇給の有無/退職手当の有無/賞与の有無/相談窓口を記さなければなりません。


◆就業規則

就業規則は常時雇用が10名になったら労働基準監督署に届け出なければなりません。変更があった場合も届け出ます。

就業規則と雇用契約では雇用契約の方が優先されますが、雇用契約の内容は就業規則を下回ることはできません。

雇用形態によって就業規則を変えたい場合にはそれぞれの雇用形態の就業規則を定める必要があります。定めていない場合は、全員が正社員就業規則に基づくことになります。

 参考)就業規則を作成しましょう

原則、就業規則の不利益変更は認められませんので、開業当初は法定通りの就業規則を作成しておき運用でカバーしていくのが良いかと思います。


◆労使協定

法律に基づいた運用をしていても、忘れがちなのが労使協定です。
労使協定は事業主が使用者と締結することで、労働基準法等で定められた所定の事項について、法定義務の免除や免罰の効果を発生させることができます。
労使協定にはたくさん種類がありますが、スタートアップでもよく使いそうなものを挙げました。

-時間外労働・休日労働(所轄労働基準監督署長への届出が効力発生要件)
-専門業務型裁量労働制
-フレックスタイム制(清算期間が1ヶ月を超えない場合は届出不要)
-事業場外労働のみなし労働時間制
-1ヶ月単位の変形労働時間制(就業規則に定めた場合には届出は不要)
-休憩の一斉付与の例外
-割増賃金に代えて代替休暇を取得する場合
-年次有給休暇の時間単位付与
-年次有給休暇の計画的付与
-賃金から法定控除以外のものを控除する場合

各フォーマットは、厚生労働省のホームページにあります。


2本目のnoteはこちらです!

最後に

改めてですが、今回の勉強会は、hokanの経理向けに行います。
でもせっかくなのでSBO勉強会グループの方もオンラインでご参加いただけるようにしました。SBO勉強会グループじゃない人もTwitterでコメントいただければリンクをお送りさせていただきたいなと思います。

でも専門性は保証できないのでご容赦ください!!

画像6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?